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カテゴリ:本
山田正紀「マヂック・オペラ」 二・二六事件前夜、乃木坂界隈に起きた連続殺人事件。 昭和史を探偵小説の形で描く「ミステリ・オペラ」に続く3部作の2作目。 二・二六事件の背景がくわしく描かれていて、漠然とか知らなかった事件そのものや、陸軍内のねじれの構造とか、楽しく勉強できました。 シリーズとしては、歴史の裏側に暗躍する「悪」の存在と、それを阻止しようとする側の対立がさらに明確になっていて、前作よりはわかりやすく読みやすい印象でした。 しかし、めでたいお正月に読むにはあまりふさわしい小説ではないです。 井上夢人「クリスマスの4人」 クリスマスに誤って人を殺してしまった大学生4人のその後。 なんだかシュール感漂うミステリーと思いきや……。 恩田陸「『恐怖の報酬』日記」 極度の飛行機嫌いの著者によるイギリス・アイルランド紀行(ブラスα)。 飛行機に乗るまでの葛藤が事細かに書かれていて、なんだかこちらまで飛行機恐怖症がうつりそうです。 あらゆる恐怖症って、たぶん想像力(っていうか妄想力)豊かゆえに起こるものだとは思っていました。 なかなか起こりえないような最悪の状況まで想像してしまうから怖いわけですから。 だけど、彼女の場合、あれだけの広いジャンルの小説が書けるだけあって、人並みはずれてすばらしい妄想力を発揮してます。 それだけで十分にいくつも小説のネタになりそうです。 多作の小説家の才能の片鱗を見た気がします。 それはそうと、彼女はほんとにビール好き。 いつでもどこでもビールを飲んでます。 そういえば、小説でもビール飲んでるシーンが多いし。 花村萬月「錏娥哢〔タ〕」 これは先日感想をかきました。 キャムロン・ライト「エミリーへの手紙」 早くに妻に死なれ、実の息子と娘と心を通わすことができないまま死んだ老人。 彼は、孫娘エミリーに自作の詩集を遺します。 エミリーや家族たちは、詩集の中に暗号がちりばめられていることに気づきます。 それは、祖父が死の直前まで没頭していた「仕事」を解く鍵となるのですが……。 序盤は、宝探しのような謎解きでひっぱられながら、孤独なまま死んだ老人の真情に触れるにつれ、感動的な家族小説に変わっていきます。 最初は軽い読み物風だと思っていたけど、不覚にも終盤は涙流しっぱなしでした。 矢作俊彦「ららら科學の子」 1960年代、学生運動の最中殺人未遂に問われ、罪を逃れて文化大革命下の中国に逃れた「彼」。 電気も通らない農村に下放されていた「彼」が30年ぶりに東京に戻ってくる。 すっかり様変わりした東京で「彼」は何を見るのか……。 30年後の世界は、「鉄腕アトム」で夢見たすばらしき未来ではない。 技術の進化に戸惑いながらも、それに翻弄されっぱなしになることはない「彼」は決して滑稽な「浦島太郎」ではありません。 むしろ、時代の先端にいるであろう彼らを迎え入れた人々の方が、よっぽど閉塞感にあえいでいるようで、皮肉に感じます。 三谷幸喜「冷や汗の向こう側」 朝日新聞に連載中のエッセイの第4巻。 読み続けていくことで、彼独特なキャラクターにひどく馴染んできます。 続きはまた後日。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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