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カテゴリ:本
柴田よしき「小袖日記」 またもやsamiadoさんのブログがきっかけで読みました。 現代の世のOLが、雷に打たれて平安の世(正確には、パラレルワールド的平安時代)にタイムスリップしてしまい、紫式部のアシスタントとして「源氏物語」執筆のネタ探しに奔走するという連作集。 「華麗な平安絵巻」というイメージのお姫様生活は、実は、臭くて暗くて寒くて不自由で……ついでにオカメばかりで……と、現代の視点から見た古典世界がおかしいです。 何しろ、当時は、みんなろくに風呂には入れないし、行灯すらない時代だし、密閉性の低い木造建築で床はほとんど板だし(畳は当時まだ座布団みたいに部分敷き)、お姫様は室内で普通に歩いちゃダメで膝立ちで歩くらしいし(これは知らなかった)、それに、絶世の美女ったってオカメ顔なわけで、……。 同じように、フィクションである「源氏物語」も現代の視点で捉えられます。 「平安京・噂の真相」みたいなワイドショー的趣です。 おかげで、とっつきにくい古典世界がぐっと近しいものになります。 しかし、ただの歴史SFコメディーではありません。 それぞれの話が、事実(小説内でのミステリー仕立ての事件)から物語(「源氏物語」)へと昇華するという形で描かれていて、その過程で、当時の女性の地位の低さや人生の悲哀さが強く浮き彫りになります。 つまり華々しい光源氏ではなく、彼に翻弄される女性の側から見た「源氏物語」というテーマが見えてくるわけです。 それでも、作者(紫式部であり、柴田よしきである)の不幸な女性たちに対する共感と気遣いがあって、それが、ほんの少しだけ彼女たちの手助けとなり、現実そのものを変えることができなくても、読んでいる方もいくらかほっとさせらる結末になります。 時には、男たちの出し抜くこともあり、それもそれで小気味いいです。 元ネタには「夕顔」「末摘花」「葵」「明石」「若紫」、という有名どころのエピソードが使われていて、知らなくてもわかるようには描かれてはいます。 でも、現代語訳ででも押さえておくと、より楽しいかもしれません。 しかし、このペースで2月分の読書記録を書いていくと、まったく終わりそうもないような……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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