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カテゴリ:本
名もなき毒 どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。 それが生きることだ。 財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。 そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。 (「BOOK」データベースより) 「誰か」の続編です。 「誰か」は、事件が解決してもひっかかりの残る作品でした。 実際の殺人者よりも、もっと怖い、どの人の中にも(もちろん私の中にも)ありうる悪意をつきつけられたからです。 今作は、さらにグレードアップ。 いろんな「毒」の形が描かれます。 連続毒殺事件を扱いながら、怖いのは、実際の毒そのものよりも人々の心を蝕む「毒」。 主人公をはじめ、たぶんみんながみんな、大なり小なり毒に心が蝕まれています。 メインの殺人事件が霞んでしまうくらいの、やりきれなさが残ります。 その中でも、理屈でも常識でも理解できないトラブルメーカーの女性が登場します。 毒に蝕まれすぎて、毒そのものになってしまったような人物です。 (具体的な彼女の行動は、本書をお読みください。くらくらします) 「常に自分が被害者で常に他者によって自分が傷つけられている」とか、「何事もうまくいかないのは自分ではなく常に他人のせいだ」という考え方をする人は、きっと彼女のような人間になりうるはず。 人は、自分の中の毒をきちんと自覚すべきなのかもしれません。 (もちろん、私自身も反省させていただきます) しかし、実際に彼女のような人物にうっかり遭遇したら、どう対処したらいいんでしょうね。 「どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。」ったって言われても困るんだが…… 主人公・杉村さんの今後も気になるところ。 善人である彼は、善人ゆえにすぐに自分で何でも抱え込んでしまう。 奥さんを愛しながらも、奥さんとも確実に分かり合えていない。 葛藤を飲み込んで、奥さんに微笑んでいる。 二人のあいだの微妙な壁(具体的には経済的価値観のものすごい相違)が、これからどうなっていくのやら……。 シリーズとしてこの先も続いていくのでしょう。 読後感を考えると読みたくない気がするけど、でもきっと読んでしまうと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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