|
カテゴリ:60代
夫が他の街で倒れ入院したことがあった。
暗澹たる思いで、 入院の用意を持ち、夫の入院先に向かった時のこと。 私は、気が動転していたから、車をやめて、 久しぶりに電車に乗った。 私は、すごく田舎に住んでいるので、電車の中は、 がらがらの空きである。 そのガランとした車内に、 若い父と、その娘たちは、乗ってきた。 父は聾者だった。 小学校3年生くらいのお姉ちゃんと父親は 手話でにこにこしながら話しをしている。 時々下の5才くらいの女の子もははは…と笑う。 あ、小さいのに、手話が、分かるんだな~と思い、 家族の姿を、ちらちらっと、見ていた。 しばらくして、今度は、そのちいちゃな妹のほうも手話で話し始める。 お~~!みんな手話が、出来るんだな~と感心する。 車掌さんが回って来た。 お姉ちゃんが、車掌さんの言葉を、手話でお父さんに通訳する。 すばらしい。 それから仲良く、ずっと3人は、手話で話しつづけ、 時々、声を挙げて笑った。 とうとう1時間ほど、彼等の降りる駅に到着するまで、 親子は楽しそうに話し続けていたのだった。 私は、すごく心が温かくなった。 「ああ、これが、本当の親子だなぁ~」と心から感動した。 今時の家族で、これほど仲良く話す親子がいるだろうか? 大抵、子供が親に何か言うときは、すねたような物言いをするし、 父親は、ぼそりと、短いセンテンスで言葉を出すし、母親などは、 最初からきんきん怒った声でものを言うのに出くわす。 その日も、 ミスドでコーヒーを飲んでいたとき、 2組の親子連れが入って来たが、 「何?!忘れた?!」と言うやいなや そのすらりとした若き母は、息子の頭をゴン!と したたかに叩いた。 そんな、哀しい人間ばかりのこのご時世に、 その聾者という父を持つ家族は、 聾者だからこその温かな結束ではなかったかと思えるやさしさ。 (お父さん、聾者でよかったねぇ!)と、つい思わずにはおれませんでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[60代] カテゴリの最新記事
|