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カテゴリ:父
両親の金婚式には、母は大名旅行を思いついた。
父のアルツハイマーの症状が少し出始めたころだ。 父の頭が、正常の頭脳だったら、絶対に起きないことを 母は夢想した。 ★ 新婚だった頃、一旗あげようと朝鮮(韓国)に渡ったが、 その家に、もう一度、行って確かめたい。 ★ 今はもう人手にわたっていたが、自分の育った家を見に行く。 そして、疎遠になっていた両家の親戚に会って、 心を通わせたい。 甥の協力を得て、両親は子供達夫婦と一緒に、みんなで帰郷した。 そして、マイクロバスをチャーターして、 母のこころの赴くままに、あちこち長い旅をした。 韓国では、自分たちの家のあった場所を父は探した、 少しアルツハイマーの症状が出ていたにも関わらず、 そこでは父の頭は冴え渡り、 戦前の大きな建物をみつけ、それを目印にして割り出し、 地面をとんっと叩いて 「ここだ!ここに我が家があった。」と、はっきり示した。 晩年になって、母は、折りに触れては、 「子供のころ出来た○○線に乗って、コトコトコトコト、 我が家に帰りたい」と、夢のように何度もつぶやいていた。 最近、母の命日と私の67才の誕生日のお祝いをした。 ひっそりと夫婦で杯を傾けながら、 「私の願いは、いつか、お母さんのかわりに、○○線に乗って 母の郷里に行ってみることなの」と、言おうとしたら、 涙が喉にひっかかって、声が出なくなった。 ちょっと間をおいて やっと、こころを静めて、言った。 いつも、電車が嫌いで、どこに行くにも 車をぶち飛ばして行きたがる夫のこと 何言ってるんだい?と、歯牙にもかけないだろうと思いきや 「あ、涙が出るじゃないか=」と言いながら、 目をこすったのを見て 私はうれしかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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