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カテゴリ:父
父は静養に入って、
毎日、ひとりで散歩をするのが日課になった。 どんなに認知症が進んでも、必ず家に帰って来た。 本能的に元に戻る能力が身についていたのか、 戦時中、外国の戦地に於いて戦闘部隊が、 未知の山や、谷や、岩場や川を歩き続ける様な実戦で得た 能力なのかは分からない。 ある日、 家の前にあった広場で、 盆踊り大会が開かれたことがあった。 父は その日の夕方、家を出てから、なかなか帰ってこなかった。 母は訝しみ、近所の人にお願いして10人ほどで探したところ ちょっとした見知らぬ竹藪の中を歩いている父を発見してくれた。 どんどん鳴る太鼓や、 櫓のぼんぼりや、 大勢の人出に驚いた父は 脳の中が混乱したのか、帰る道を喪失してしまったのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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