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カテゴリ:父
認知症になっても、
プライドだけはなかなか忘れない。 ロータリークラブのメイキングの日は、必ず、自分から、 母に用意をさせて、背広をきちんと着込み、出かける。 途中で必ず父の家に寄って、車に同乗させてくれる友人がいた。 父が呆けてきても、その習慣は、変わらなかった。 しかし、友人の性質から言って、 きっと、一緒に行きたくはなかったと思う。嫌だっただろう。 認知症の父は、そそうをする可能性が大きく そして、可能性は、度々行使された。 後ろ指をさされて、 笑われ者になるかも知れない可能性が大きく、 そして、その可能性は、度々起き、うわさは 私の耳にも哀しく届いた。 母は、父が行きたいところには、すべてひとりで送り出した。 決して、行くなとは言わなかったし、行けないようにも、し向けなかった。 それが、母の静かなプライドだった。 その為に浴びる恥辱は敢えて拾った。 ある日、 父はメイキングの日を忘れ、母に何も用意を命じなかった。 母は急いで、友人に電話をして、お誘いをお断りした。 友人は、 決して、それ以上すすめたりされなかった。 決して、もう、迎えに来てはくれなかった。 友人は、とても、とても、ほっとされたに違いないと、 母は、面白そうに、しかし無念そうに語った。 母は、ロータリークラブのバッチについていたダイアモンドを 自分の小指用の指輪に加工して、生涯大切にしていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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