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カテゴリ:父
父は、体が大きくて、逞しく、元気で勇気のある頼もしい男だった。
母は非常に働き者だったが、基本的には体が弱かった。 父は生前、自分もいつかは死ぬであろうなどと、 考えたこともなかったであろう元気な頃、大病を患った後、 呆けてしまった。 とうとう自然な排尿機能が不全になって入院し、 1年後に亡くなった。 母は看病をしながら、戯れに父に聞いた。 「貴方と私はどちらが早く死ぬかしら」 それまで、妻より自分が先に死ぬかもしれないなどと 思ったことも無かったであろう父は、非常に驚いた目をして 母をまじまじと見たと言う。 そして、おもむろに 「人の生き死には、神様にまかせましょう」と静かに言った。 呆けているのに、素敵な言葉を贈ってくれたと言って 母は驚き、また、喜んで、私に話すのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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