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カテゴリ:すぐ上の姉
ある日、すぐ上の夏子姉さんに会うと、
顔中、擦り傷をしていた。 それが、酷い(ひどい)擦り傷で、 左の頬から目にかけて、ざ===っと、赤くすりむいて、 赤黒いかさぶたが、できていた。 真夜中まで、たった一人で仕事をして、やっと終え、 真っ暗な会社の前から、 スクーターに乗って発車したところ、 暗くて見えなかったが、綱が張ってあったらしく、 その綱にひっかかって、 スクーターと一緒に、体が、吹っ飛んだのだそうだ。 そして、 失神して、倒れていたのだが、 何分経ったか、何時間経ったか分からないが、 ふと気がついて、起きあがり、 家に帰って眠ったそうだ。 スクーターは壊れて、新車を買った。 夏子姉さんが、車の事故で、植物になる前年のことだ。 夏子姉さんが車の事故で、植物になる2ヶ月前のこと、 私の長女の赤ちゃんが生まれたのでお祝いに行くことになった。 その頃、長女は、長崎に住んでいた。 私は、母と夏子姉さんをさそって、3人で出かけた。 飛行機の搭乗チェックでは、 夏子姉さんだけが、行きも帰りも、ビーっと機械が作動して、 入念にボディチェックを受けるはめになった。 そんな嫌なことが度々あったけど、 長崎に行って、 私が初孫の赤ちゃんをだっこしたり、 長女とゆっくり過ごしている時間 母と夏子姉さんは、ふたりで、 長崎見物に出かけ、一日を楽しく観光して過ごした。 ずっと、タクシーを借り切って、ふたりで街中を遊んだ。 タクシーの運転手も、親切で、面白い人だったそうで、 あんなに楽しかったことはなかったと、 母も夏子姉さんも、ずいぶん喜び、満足していた。 思えば、母も夏子姉さんも私の長女を大切にしてくれていた。 特に、夏子姉さんは、子供がいなかったから、 いろんなドレスを買ってくれたし、いろんな本を与えていたし、 長女が腎臓を切らなくてはいけない病気になった時は、 「私の腎臓を使って移植してちょうだい」と 本気で、言って来た。 幸い、腎臓の病気は、完治したので、そんなことは、 しないで済んだが。 夏子姉さんは、植物になる前に、 しあわせなひとときのプレゼントがあって、よかった。 長女は、赤ちゃんを産んだことで、 私の母と、夏子姉さんに、 思わぬ恩返しをしたような形になった。 私は、これを書きながら、ちょっとほっとした。 ありがとう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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