ペニーオークション(2)
ペニーオークションの仕組みは、まず第一に、個人情報を登録して、入札するためのアイテムを、『コイン』という形態で購入することから始まる。 このコインは、1枚がなぜか75円(程度)に設定されている。この『75円(程度)』がほぼ共通であることが、疑問ではある。 兎に角、最初にコインを入手しなければ、オークションへの入札資格が得られない。コイン(ペニー)は、定額で販売されていることもあるが、これもオークションで落札できるサイトもある。 このペニーを落札するためには、コインを必要としない。落札金額を銀行口座から支払うことで、入手できる。 このコインを利用して、欲しい商品を狙って、入札するわけである。入札者によっては、落札できるまで、入札を繰り返す。 その結果、落札できたとしよう(良心的なサイトの場合=後述)。だがこの落札までに、何回の入札が必要になったのだろうか?わかりやすく、100回の入札で落札できたと仮定しよう。その時の商品の落札金額を、1000円と仮定する。 もしも30000円が市場価格の商品ならば、そのオークションサイトの公式表示は、『3.3%で落札』となる。 だがここでは、入札時に消費された『コンの代金』が、スッポリと抜け落ちている。ここでコインの代金を加味すれば、100回×75円=7,500円を追加して、8,500円で落札できたことになる。 これでも、市場価格の25%で落札できたことになるのだから、破格の安値で落札できるオークションということになる。ここで忘れてはならないのは、『落札できるのは一人だけ』という現実である。 これは当然のことだが、たとえば20人の入札者が、落札を競っていたならば、一人の入札が50回として、1,000回の入札が、落札できなかった人たちによって、行われていたことになる(大まかな例えだが)。 1,000回の入札ということは、出品者(サイト運営者)には、1,000回×75円=75,000円で、商品販売とは無縁の、濡れ手で粟の『手数料』が手に入るのである。 これに『落札者』の8,500円を加えれば、市場価格が30,000円の商品が、83,500円で売れたことになる。 つまり、正規に商品を販売しても、53,500円が、完全な利益になるのだ。 これらのサイトの『商品送料』は、500円程度であることが多い。これも、カラクリの実態を知れば、当然の価格である。 上記のように、正規に商品を販売しても、オークション主催者の『儲け』は非常に莫大な金額になる。 ここでさらに問題になるのは、正規に落札できない仕組みが、入札者には探りようがない形式で、取り入れられていることである。オークションサイト運営者の『仲間』が、高額で入札していても、コインを際限なく使用していても、それを一般の入札者が、知ることはできない。 これは、何を物語っているのか? 入札者が『サイト運営者の仲間』である場合は、コインをいくら注ぎ込もうが、その『仲間』に実害は生じない。コインは、運営者が発行する『架空の貨幣』なのだから、その運営者にとっては、際限なく発行しても、『仲間が消費する分』については、全く『無料発行』と同じなのである。 正直な一般入札者は、この『巨大なお金持ち』と、落札を競うのである。うまく落札できるか否かは、サイト運営者の『良識』だけにかかっている。場合によっては、運用者の『気分次第』で、安く落札できることもあるし、市場価格を超えてしまうこともある。 一般入札者も、一旦コインを注ぎ込んでしまうと、途中で中断できなくなる。たとえ30回分でも、2,250円を使っているのである。自分が入札した金額よりも、50円しか違わない金額で、落札されてしまうかも知れない。 そうなると、2,250円は、捨てたと同じことになる。この心理が入札者に共通していれば、無駄な入札が、かなり際限なく続けられることになる。 入札者が多いほど、合計の入札回数は増えて、出品者(サイト運営者)の儲けは大きくなる。 そしてまた共通することは、このオークションでは、落札者の入札回数や、数回分までの入札者情報は明示されるが、それ以外、それ以前の情報は、公開されないことである。 詳細情報にも、オークション参加者の総数や、各個人が何回の入札をしたのか、といった情報は、一切公開されない。 これでは、商品が本当はいくらで競り落とされたのか、結果による金額しか、知ることができない。入札時に、検討資料として、入札記録を見ることさえできない。 このシステムは、運営者(=出品者)が知られたくない情報を、意図的に隠しているのである。 場合によっては、納税時の税務上必要な情報さえも、記録に残さないことで、都合が良いように操作されている可能性がある。もしも操作されていれば、いずれは税務調査で問題にされるだろうが、問題が発覚した時には、運営者はサイトを閉じて、姿を眩ませていることだろう。 そして、運営者が姿を消した時に、そのサイトに登録してコインを所持している『参加者』たちは、使えなくなった『コイン』を大切に握りしめていることになる。 使えなくなったコインの引き取り手は、存在しない。保有するコインの金額が多いほど、被害は大きいし、サイトの参加者(登録者)が多いほど、総額としての被害金額は大きくなる。 さて、正規に運営されていても、射幸心を煽って、運営者の儲けばかりが大きくなるシステムのオークションだが、これが『不正運用』されているサイトだったら、どうなるだろうか? 不正運用されている場合には、参加者がいくら頑張っても、『宣伝効果』がある場合にだけ、『ランダムに』落札できることがあるだけで、このタイミングに出会うラッキーがなければ、参加コイン(1回75円)は巻き上げられるが、落札は絶対にできない。 前述したように、サイト運営者が、自分のコインを使って、自分の仲間の入札者(=サクラ)によって、際限なく入札金額をつり上げていくから、一般入札者は、落札はできない。 つまり、魅力的な商品を掲載することで、できるだけ多くの入札者を集めて、入札時のコイン枚数を増やさせれば、出品者だけが『コイン代金』を、儲けることができる。 出品者サイド(もちろん、当事者ではない)が落札した商品は?もちろん、架空の『購入手続き』をして、架空の『商品発送』をして、架空の『受け取り』をすればいいのだ。 すべてが架空の中で行われるから、運用者側で金銭の動きは生じない。金銭的な損害は、全く発生しないのである。一般入札者に販売したコインの消費額だけが、苦もなく入手できるという仕組みである。 このように、出品者(運営者)側が不正に儲けようと思えば、参加者には内情を知られることなく、容易に儲けられるシステムが、ペニーオークションなのである。 運営者サイドの入札者の中には、参加登録者もいれば、架空の参加者を作って、機械的(ロボット)に入札させる場合もある。 入札期限の締め切り数秒前になると、自動的に入札が行われて、金額が上昇していっていつまでも結果が出ないという仕組みも、ロボットを利用して、射幸心を煽る運営方法に他ならない。 そしてさらにこのオークションの(運用者にとって)便利なことは、在庫を抱える必要がないということである。普通のオークションならば、希望金額以下で落札されることも多いし、その場合でも、落札が決定すれば、手続き完了と同時に、速やかに商品を発送しなければならない。 そのためには、出品する商品は、基本的に在庫品である必要がある。在庫がなければ、落札後に商品を入手することになり、場合によっては入手できない事態が起きたり、落札金額を大きく上回る金額で入手しなければならなくなり、安定した運営ができなくなる。 ところが『ペニーオークション』では、在庫を必要としない。このカラクリは、『通販の利用』にある。つまり、現実に『通販』で販売されている商品を、出品するのだから、在庫切れの心配は、ほとんど不要なのだ。 この『通販』は、Amazon.comが利用され右ことが多いようだ。ここで、前述の送料のカラクリが生きてくる。Amazonの利用者は、多くが送料を500円で済ませられる。 一般のオークションでは、商品のサイズや重量に応じて、また発送地と受け取り地の距離によって、送料が変動する。ところがAmazonでは、送料が一定していることが多いようだ。 このシステムには『射幸心を煽る』ということ以外に、『落札できなかった人の大きな犠牲』の上に成り立っている。といった『基本的な正義』は、この際横に置いておくとしよう。 参加する以上は、そのようなことは承知の上で、ギャンブル性の強さを楽しむのだ、というのならば、それはそれで、『法の規制」が無い現状では、やむを得まい。 しかし、一般入札者が落札できているのかどうかさえ不明な、『明朗性に欠ける』形態は、非常に警戒すべきだし、場合によっては、落札しても商品を入手できないこともある、多くのオークションに付き合うほど、総合すれば必ず損をする、ということを心得て、それでも面白いという、『経済的に余裕がある人』だけが参加すべきサイトである。 Amazon.comを利用できるのは、前もってコイン(ペニー)を販売できていて、その『入金済みのコイン』を利用して、入札をしている上に落札できなかった人たちの入金も確保できているから、『儲けの一部』で、商品を購入して、Amazonから落札者に直接、商品を発送してもらえばいいから。 正規に運用しても運用者に損失が出ないシステムが、ペニーオークションなのである。 このオークションの出品者は、だた唯一、オークションサイト開設者に限られている。 一般から複数の出品者があることは、現状では絶対にあり得ない。儲けが分散するようなことは、するはずがないからである。 最終結論として、ペニーオークションで大儲けするのは、出品者であるサイトの運営者だけである。 一般参加者は、広く少額ずつ、損害を被る。中には、多額の損害を被る『熱くなる人』もいるだろう。オークションに参加するために購入した『コイン』は、『返金に応じない』ことが、ルールに明記されている。『お試し』としてコインが与えられることも、サイトによってはあるようだが、この『お試しコイン』は、試用期限が限られているから、ほとんどの場合に、落札に結びつくことなく、無駄(試し)に消費されてしまう。無駄に使われたり、期限切れで消滅するコインなど、いくらたくさん発行しても、痛みがないわけである。 ペニーオークションによっては、同一運用者が、複数のサイトを開設しているケースがあるらしい。 このこと自体が、このシステムの胡散臭さ、危うさを、決定的に物語っているのではないだろうか。 この『ペニーオークションサイト』の宣伝を、livedoorのサイトでも行っている. ここに書かれている『負け組は運営者か?』なんていう記事に、騙されないように、注意をして戴きたい。livedoorのようなサイトまでが、片棒を担ぐ事態は嘆かわしいが、YAHOOや楽天が参加していないらしいのは、まだ救いである。 『いかがわしい臭い』を感じさせない、YAHOOや楽天のオークションサイトで、まともに落札することが、『損をしない秘訣』なのである。