想い出は心の宝石箱に。。。

​　実は、皇子が仙台在勤時​３Ｍ​からこの事業を東北で展開するので、その

　パートナーを​探して欲しいとの依頼がありました。スコッチプリントとは、

　屋内外用のバナー、ウインドサイン、店内ＰＯＰ、シャッター、車両ラッピング

　など、​広告機能を果たす​フィルムの事。一番わかりやすいのが、バスや電車の

　​ラッピング​。

　弊社のお取引先にあたったところ、彼しか事業協力者に手をあげるところは、

　ありませんでした。というのは、東北ではまだ未知の分野であった事と、

　フィルムをプリント・加工する機器の購入に、莫大な資金が必要な事でした。


　​社長にこの新規事業を薦めただけに、立ち上げに苦労している同社に、皇子

　自身​責任を痛感していたことも、同社への再就職の理由の一つでもあったのです。

​　当社のこれまでの販売戦略は、本業からして​内装材​（壁紙）としての用途。

　しかし、本商品の特性を考えると、​広告分野​に進出しないと勝算はありません。

　その為に​本分野のプロを中途採用​しない限り、内外装工事業の社員にはとても

　手の負えない事業、であることがわかりました。

​　また、県内には３Ｍが自分で選定した事業協力者がいて、当社よりいち早く

　その​道のプロを採用の上、広告分野に進出している事が判明。​福島交通​の

　バスの​ラッピングもすでにそこが、受注していたのでした。
​

　広告分野への進出は、​広告代理店との関係​が重要であり、いわきのぼ代理店へ

　アプローチ。しかしこの業界も​、電通・博報堂​などの大手が牛耳っていて、

　地元の代理店は、その下での下請けや孫請けなわけです。

　また受注価格がどんどん削られる中、スコッチ・プリントでは高い素材となり、

　通常のインク・ジェットで十分との結論に、いつもなってしまいました。

　皇子なりに2年近くこの事業展開を画策しました。しかしこれは​都市型の

​​　ビジネスモデルであり、都市部と比較し広告宣伝分野のマーケットが小さい

　福島で、後発の当社が追いかけても採算をとるのは難しいとの結論に達し

　ました。

　社長にその旨進言し、​本事業からの撤退​を決意させたのでした。

　新規事業を手掛けるにあたって、​​​​3年​やって期間損益で黒字にならない事業は、

　撤退すべしという、前会社での暗黙のルールがありましたので・・・​​​

　事業を見切るというのも、経営の重要な決断であって、損失が膨れ上がらない

　うちに、手をひくということです。しかし、当社のごとき中小企業にとって、

　莫大な設備投資をしただけに、このような結果となったのは、断腸の思いでした。

　未洗手分野の新規事業に進出するのであれば、​必ずその道のプロを中途採用​し、

　ビジネス浮揚までの期間をなるべく短くすることが王道であることを、社長も

　この案件から学んだのではないでしょうか？

    しかし依頼された、本事業の再建が出来なかったことから、責任を取る意味で

　​辞表​を提出しました。社長から慰留工作を受けましたが、失敗すれば腹を

　切るのが悠愛皇子の生きざまと、頑なに固辞していたところ、会長からお呼び

　出しがありました。

　悠愛さんの尽力にもかかわらず、新規事業を立ち上げられなかった、弊社の

　力不足を心から詫びるとのお言葉。そして、本件は別として当社に新しい風を、

　是非吹かせて欲しいと、会長直々から慰留のお言葉を戴きました。


　当社にお世話になったのも、これも一つの縁として、それでは​後2年だけ​と

　いうことで、​お引き受けした次第。但し、責任をとる意味でも、契約年俸

　​半額に減俸​を自ら申し出て、了承いただきました。


 ​　　　　　　　　＝＝つづく＝＝　　　　​​

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