想い出は心の宝石箱に。。。

　​地方の​高速道路​は、首都圏とは異なり昼間でも、交通量は多くは​ありません。

　ましてや夜間など、路線トラックが時々、私を追い抜いていくぐらいでした。

　片腕で必死こいて、高速道路を運転している、奇妙奇天烈な恰好をいま思い

　出すと、自分ながら笑ってしまいます。 パトカーに出会えば、高級車を盗んで

　逃走する、南米の＜浮浪者＞だとして、 絶対に追跡されるに違いありません。

 

  夜中の２時過ぎ、社宅のマンションにやっと着きました。

　よかったあ～～、誰にもこの格好、見られなくて。東京のおくさまに、皇子の

　非常事態を、ともかく連絡しなければ。

​　え～～～、会社のPHSも、個人用の携帯電話も、​水没​で共につかえない

   のです。社宅に固定電話は、ありません・・・・
　

　まあ～、いいっか・・・明日の朝に電話すれば。


  しくしくと訪れる痛みに耐えながら、その夜はまんじりともせず、あけたのでした。

 ​​  左手一本で車を運転し、行きつけの病院に行き、まず公衆電話で会社と

　​​自宅へ、連絡をいれました。

 （　そうなんですか。これまで無断遅刻のない悠愛さんのこと、これは社宅で

　　絶対に​死んでると、朝からみんなが大騒ぎ。あの、スケベな​悠愛さん、

　　腹上死もありうべし​なんて。

　　あははは・・・・生きててよかった悠愛さん、開いててよかったセブン

　　イレブン。​救助隊が死体確認に、いま社宅へと出発したところ​ですよ。

　　それでは、病院の方へ行くように指示しますので・・・　）

   病院では、また同じ様にレントゲン撮影をし、その後の担当医との会話。

　（　いわきで、応急措置をしたんですね。でも、この方法って、脱臼の

　　　処置方法としては、​​古いんだよね。　）

　（　古いって？？　）

　（　現代の治療方法は、腕を体から離した状態、外施位での​​固定、すなわち

　　　矯正器具を抱きながら、右腕を前に出したままで、吊るのよ。　）

　と、いってウレタン製の​三角の矯正器具​を、つけてくれました。

​（　でも、この器具は保険効かないから、代金は業者に​直接払って

　　くださいな。　）

 （　あの～～、おいくらですか？　）

 （　一万円ぐらいかな？　）

  （　えっ～～～～～～。　）

　ダイソーなら、100円で売っているような、なんの変哲もない三角のウレタンが。

（　あの～～、私、可哀そうな単身赴任生活者なのですよ。日々生活することだけ

　　精一杯。先生、そこをなんとか・・・）

 （　あっ、そうなの。この矯正器具を使用するか、しないかは、患者さんの

　　自由ですから。ただし、使用しないと、肩またすぐ外れるからね。　）

   (   え～～～～・・・  )

    (   あなたは、宝くじ買いますか？  )

     (   ジャンボだけは、買っていますよ。 )

​     (   それと同じですよ。よく外れる・・ギャハハ・・・ )  ​

 
   あの痛さは、二度と経験したくないので、やむなくこの​＜矯正＞器具を、

​​   <  強制 ＞的に泣く泣く買わされたのでした。

​

 　医者と矯正器具メーカとの癒着、患者の足元を見た火事場泥棒的商売。



 

　     　　　　＝＝つづく＝＝　　　　​​

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