想い出は心の宝石箱に。。。

　（　グーテン・モルゲン～！！　）

　（　グリュッス・ゴッド～！！　）

　 ウイーンでは、同じ​ドイツ語圏​でも、朝の挨拶は違うようです。

　（　おまえ、昨日到着したはずだろうが・・・いままで、何してたんねん！！　）

　　皇子の着任の挨拶を受けて、所長が烈火のごとく怒り狂いました。


      

 　
　なるほど彼女の言ってた通り、背のちっこい、まるで​猿​みたいなチンケな男。
　​

　上司にごまをすり、ここまでの地位までなんとかよじ登ってきた、典型的な

　サラリーマンの顔が、そこにありました。

　オーストリアには主たる産業がなく、駐在事務所の役割はウイーンに入ってくる

　客先および国際会議に出席する、弊社取引先の社長含めた役員の​接待​なのです。

　市内には、国際原子力機関・石油輸出機構・欧州安全保障協力機構など、

　​国際機関本部​が集積しています。

　特に、​オペック会議​の頃は石油元売り各社の​重鎮達​が、ウイーン詣でを

　しますので、その接待には特に気を使っているようでした。


       

　

   事務所長は鉄鋼本部出身で、もともと鉄鋼ビジネスとは新日鉄・川鉄・住金など

　から、​​商社枠をもらうために客先の接待​​が重要な仕事で、そのような

　裏技・小技にたけた男が、ウイーン事務所長として任じられたのでしょう。


　正義漢が強く、歯に衣をきせぬ物言いをする皇子とは、所詮​水と油​、初対面

　からして既に火花を散らすこととなりました。



   

      

   それでは、ちょっくら　ウイーンの歴史を勉強してみましょうかね。

　13世紀に​ハップスブルク家の支配下​におかれたウイーンは、その後の

　婚姻政策の成功によって、16世紀に入るとボヘミヤやハンガリーを初めとする

　多くの王国を相続し、一大帝国の位置を築き上げました。

　しかし、第一次大戦ドイツ・オーストリア側の敗戦によって、チェコ・

　ハンガリー・ユーゴ・ポーランドなどが独立し、ハップスブルク帝国は崩壊。

　1945年第二次大戦で、ドイツナチスが負けると、ウイーンは米・英・仏・ソの

　四カ国共同統治下におかれました。



　
 　　　　　

 　当時の雰囲気をよく表している映画が、＜　​第三の男​　＞。

   ウィーンの酒場で人々に親しまれた、ツィターのメロディ（アントン・カラス
　
　によるテーマ曲）をBGMに、物語の幕が開きます。


　​光と影​を効果的に用いた映像美、戦争の影を背負った人々の姿を巧みに描いた

　プロットで高く評価され、不朽の名作の一つとして映画史にその名を刻みました。

　1955年に主権国家として独立し、​永世中立国​として現在に至っている

　わけです。



      
　

 　旧共産圏近隣諸国（　ポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア、ブルガリア、

　ユーゴスラビア、アルバニア　）に、駐在事務所を持っている弊社として、
　
　ウイーン事務所は彼らへの​生活物資や金銭の兵站基地​でもあったの

　でした。

　（　悠愛、お前の初仕事だぎゃ。　）

　として、子猿所長からいい渡された任務が、ブルガリア・ソフイア事務所への、

​　現金100万ドルと生活物資の搬入。​

　この任務についた駐在員は、ソ連の秘密警察​ＫＧＢ​によって、既に何人も

　消されていると子猿所長は、嬉しそうに話したのでした。

 　昨晩夜を共にしたフロラインの情報によると、どうも子猿所長はＫＧＢから

　キック・バックを、もらっているらしいとのこと。


　

 　朝靄に包まれたウイーンの街に、＜　ミッション・インポシブル　＞の

　　テーマ曲が、流れます。皇子は​ＢＭＷ　735ｉに乗り込むと、目的地

　　ソフィアへと向かいました。


　　あ～、われらが皇子危うし・・・はたして、皇子の運命やいかに？？？？

　　おせんにキャラメルは、いらんかねえ～～・・・・・



　　　　　　＝＝つづく＝＝　　　　

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