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カテゴリ:おべんきょう
たまには真面目なお話を。
アメリカ、カナダからの、健康保険制度の根底を揺るがすまったく対照的なニュースを読んだのだ。 皆さんは日本が国民皆保険制度(Universal Health Care System)を採用していることはご存知だろう。 平たく言えば、ごくごく一部の人を除く全ての国民が健康保険証を持っている、すなわち実際にかかった医療費の1~3割の負担で済むということである。 差額ベッド代とか入院中のテレビカード代とかはおいておいてね(笑)。 多少の違いこそあれ、この制度は先進国のほとんど全てで採用されている。 一方、私がヘルスケアマネジメントを学んだ国、アメリカは私的保険制度(Private Insurance System)を採用している。 すなわち、健康保険証を持てるのは高~い保険料を保険会社に払った人のみであり、逆に言えば健康保険の高い保険料を払えない人達に世界一高いアメリカの医療費の10割負担なんてできるわけがない。 貧困者層への公的保険制度(Medicaid)、老人と障害者のための公的保険制度(Medicare)があることはあるのだが、それでも人口の約2割を占める4500万人を越える人々が無保険者なのである。 アメリカの健康保険会社(HMO)の幹部の講演を聞いた時には思い切って「なぜアメリカでは国民皆保険が実現しないのですか?」と質問したこともあった。(留学中に書いた過去の日記を参照) う~む、私的保険制度に基づいて利益を上げる企業のお偉いさんに聞くなんて、今思えば聞く対象が間違っていたかもしれない(苦笑)。 さて、問題の記事の一発目はアメリカにおける最大級の医療情報NGOであるKaiser Family Foundationが発行する2006年1月11日付のDaily Health Policy Report(日刊医療政策レポート)から。 その名も 「Former Oregon Governor Pushes Universal Health Care System Proposal」 オレゴンの前州知事が、アメリカにおける国民皆保険制度を提案しているというのだ。 彼のプランはまず州で住民の皆保険を法制化し、そして国会に働きかけてそれを全国に広めていくというものである。 財源はこれまでMedicaid、Medicareで使われていた公的資金と国民が年末調整で受け取るはずの税金の返還金をあてることを想定しているようだ。 自分のためだったお金が公的資金として健康保険の財源に使われることをアメリカ国民は納得するのだろうか。 いずれにしても、過去にアメリカにおける国民皆保険の推進阻害要因として言われた「政治」がその推進役になるかもしれないというわけである。 事実上推進できるのはそれしかないと思うが・・・。 この動き、どこまで州の住民、ひいてはアメリカ国民の支持を得られるのかわからないが、その動向を見守っていきたい。 一方、同じDaily Health Policy Reportの2006年2月22日付の記事がこれである。 「New York Times Examines Proposed Privatization in Canadian National Health Care System」 つまり、国民皆保険制度のカナダにおいて民営化が提案されたというのだ。 事の発端はカナダのケベック州で私的保険を禁止した法律をカナダ最高裁が違憲と判断したことに始まる。 最低限の医療行為は公的保険でまかない、プラスアルファで私的保険も活用することはかまわないという判断のようである。 混合診療の問題も出てくるが、これって日本でも同じような状況ではないか? 損害保険会社や生命保険会社によるがん保険や入院補償保険は市場に広く浸透している。 ただ、診療行為そのものに保険がかかっているわけではないところがミソである。 私的保険制度(Private Insurance System)のアメリカがみせる国民皆保険制度確立へのベクトル。 国民皆保険制度(Universal Insurance System)のカナダ(日本も?)がみせる私的保険制度併存へのベクトル。 国の財政と我々の納得を考えたとき、その答えは両者が向かっているちょうど中間にあるのかもしれない。 そんなことを考えさせられた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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