日本的経営がもたらした個人の依存体質
日本的経営のルーツは日本人の生き方、人生観にある。その人生観は神道、仏教、儒教などのミックスされたものであると同時に藩や組や商家や会社という組織の中で、実践されるなかで熟成されてきた。日本人は和の精神を重んじ、「損して得取れ」という格言に見られるように長期的、積分値を取る。矛盾対立を内包しながらも全体として同じベクトルにすることで総和値を取る。争うことが生産性の足を引っ張ることを良く分かっていて内外とも争いを避ける傾向があり、成熟した大人の考え方とも言える。この考え方はすでに聖徳太子の時代からあった。太子はすさまじい権力争いを体験したものとして「和をもって貴しとなす」とした。近代にその影響を及ぼしたのは家康が創始した徳川幕府の政策。彼は幼い頃から戦いに明け暮れ争うことの無駄や悲惨さを身に染みて感じ、政権を取ってから世の中をどのようにして安定させるかを一番に考え、それを様式化し制度として具現化した。それによると政治は武士が行い、農民や町民はその立場立場で働きをまっとうする努力が求められた。徳川幕府のやり方は徹底的で、この考えを守るためにはキリスト教や科学技術の便利さまでも否定した。その政策は成功を収め江戸時代三百年の平和と繁栄がもたらされた。一方、お上の言うことさえ聞いていれば、何かあっても政府(企業)の責任で自分は守られるはずだという貴方任せの考え方もはびこり自立心が失われてしまったとも言えるのではないか。