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カテゴリ:長嶋 有
失業中で小説家志望の息子。妻はよその男と恋愛中。 三度目の結婚生活も危うそうな、写真家の父親。 そんな二人が軽井沢の山荘で過ごす、とりとめのない夏の終わりの思い…。 (Amazonより) 全体的に流れるゆるゆるムードがなんともいえない魅力の作品。 表題作の『ジャージの二人』と、その1年後の話『ジャージの三人』の 2編が収録されています。 『軽井沢の山荘』というと、なんとなくおしゃれなイメージがあるけど、 この作品にでてくる山荘はそんなイメージとはかけ離れていて。 トイレは汲み取り式、お風呂は五右衛門風呂、布団はいつもジメッとしていて 家のあちこちをカマドウマだのアシナガグモだのが我が物顔で歩き回る始末。 山荘には祖母がため込んでいた古着がたくさんある。その中には色々な小学校の ジャージ(新品。でもダサダサ)があって、父と息子はそれを着ることにする。 父は紺色、息子はあずき色。父が言う「ドリフのコントみたい」・・・確かに!(笑) 3度目の結婚生活を送っている父と、1度目の妻の子である息子。 長いこと離れて暮らしていたとは思えない絶妙な空気感がかなり笑えます。 例えば、買出しのメモを作る際に 「なんかこう、甘いものが」(父) 「アルフォートがまだあるよ」(息子) 「あれもいいけど、こう」 「餡のものだな」 「いや、チョコでいいんだけど」 「コアラのマーチ的なものだ」 「それってどんなのだっけ」 「コアラ状のビスケットにチョコが入っている」 「そういうんじゃなくて、もうとこう、パフパフとした」 「じゃあ、ジャイアントカプリコ的な」 「ジャイアント・・・どんなのだっけ」 「ソフトクリームのコーンみたいなのの上に空気を練り込んだチョコ状のものが」 「それでいいや」 という感じ。しかもこの会話だけで1ページくらい使っちゃってるし・・・(笑) 父親は3度目の結婚生活が今一つうまくいっていないし、息子は失業中で小説家を 目指しているものの執筆はまったくといっていいほど進まず、自分以外の男に恋を している事を隠そうともしない妻に対する複雑な思いを抱えている。 それなのに、ずーっとゆるゆるムード。始めから終わりまで。 だからなおさら、物悲しいというか、なんだかちょっと切ない。 そんな不思議な感じの作品です。 ネットで本の画像を拾っていて知ったんですが、この作品映画化されるとか。 この独特のムード、映像化されるとどうなるんだろう・・・? 興味深々です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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