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カテゴリ:辻村深月
優しく触れようとしても壊してしまう、大人になりきれない 子どもたちは、暗い恋の闇路へと迷い込んでしまった…。 同じ大学に通う仲間、浅葱と狐塚、月子と恭司。 彼らを取り巻く一方通行の片想いの歯車は、思わぬ連続殺人事件と 絡まり、悲しくも残酷な方向へと狂い始める。 掛け違えた恋のボタンと、絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、 どんな結末が待っているのか。 (上巻「BOOK」データベースより) もう、一人の夜には帰りたくない―。 残虐非道な事件に潜む、孤独な殺人鬼と彼を操る共犯者の存在。 罪の意識に苛まれながらも、二人の間で繰り返される恐ろしい 殺人という名の遊びは、一体いつまで続くのか!? そして傷つけずには愛せない、歪で悲しい恋の行方の結末とは…。 辛い過去を孕んだ事件の真相は少しずつ解き明かされ、 漆黒の闇を照らしていく。 (下巻「BOOK」データベースより) この作品は、読み進めるのが本当にきつかったです・・・。 辻村さん作品ではいつものこと、という感じですが 時間軸が過去と現在を行ったり来たりします。 殺人者の過去の記憶。 双子の兄弟の弟にだけに向かう母親の激しい虐待。 弟を守るため、自らが身代わりとなり虐待を受ける兄。 その母親が殺され、双子の弟が預けられた児童福祉施設の 子供達による残酷ないじめと性的虐待。 『殺人ゲーム』の発端となったのは、双子の兄弟の悲しい愛情。 過去に因縁があり強く恨んでいた人、なんの関係もない人、 存在を疎んじていた人、良好な関係を築いていたはずの人。 多くの人たちが『ゲーム』という名の元に次々と殺されていく。 目を覆いたくなるような無残な描写もかなりあって 読んでいて自分がすごく消耗していくのがわかるんだけど あまりにも哀しい殺人者と、それぞれに何かを抱えている 登場人物たちが、一体どこへ向かっていくのか、 それが気になって目が離すことができませんでした。 辻村さん作品ならではの『ミスリード』がいくつも 仕掛けられていて、見事にそれに乗せられていたせいで、 終盤、作中の殺人者と同じように激しく狼狽してしまいました。 あまりにも単純な誤解が悲劇に繋がってしまいます。 キャラクターの性格を深く描くことにかなりの力を注いでいる 辻村さんは、陽と陰のどちらの部分も、一切手を抜かない。 それらを現すための長いエピソードをふんだんに盛り込む。 彼女の作品がすべて長編なのは、そこに理由がある気がします。 そうして描かれるキャラクターたちは、時には微笑ましく 時には痛々しく、読んでいて感情移入せずにはいられない。 たとえ、それが次々と人を殺していく殺人犯だとしても。 哀しい殺人者は、どうにもならないところまで来てしまった。 間違いなく破滅的なラストになってしまうだろう。 これまで読んだ辻村さんの作品は、すべて救いのある 終わり方だったけれど、今回ばかりは無理に違いない。 自分の中でそんな覚悟ができあがっていました。 でも、待ちうけていたのは、どうしたらこんな方向に導く ことができるのかと思うくらい、まったく予想外のラスト。 本当は許されない、あってはならない終わり方だと思うんだけど 穏やかで優しさに満ち溢れたラストにすごく救われました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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