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カテゴリ:アンソロジー
北海道・小樽を舞台に繰り広げられる猟奇殺人。 新聞社に恐怖のビデオ・テープを送りつけた 稀代の怪人の名は“堕天使”!! この怪人は一挙に男女十数名を惨殺し、 ウエディングドレスを着せた死体を日本各地にばら撤いた。 しかもバラバラにした死体を縫合針で繋ぎ合せて…。 必死の捜査を嘲笑うかのように、“堕天使”は密室殺人を敢行し、 さらに空中に雲散霧消するなどその妖術を披露する。 警察を手玉に取る怪人“堕天使”の正体とは―。 現代を代表する11人のミステリー作家による、 前代未聞のリレー本格推理小説。 (「BOOK」データベースより) 第1章『悪魔の犯罪』 二階堂黎人 第2章『天使の婚礼』 柴田よしき 第3章『堕天使の来歴』 北森鴻 第4章『黙示録の獣』 篠田真由美 第5章『堕天使、空を飛ぶ』 村瀬継弥 第6章『棺の花嫁』 歌野晶午 第7章『殺戮の聯環』 西沢保彦 第8章『アージニャー・チャクラの戦慄』 小森健太朗 第9章『“堕天使”の最期』 谺健二 第10章『探偵、登場!』 愛川晶 第11章『堕天使昇天―森江春策の推理』 芦辺拓 かなり豪華なメンバーが勢ぞろい! ・・・って言っても、私は、二階堂さん、柴田さん、北森さん、 篠田さん、歌野さん、西澤さんしか知らなかったんですけど(笑) 数名の作家さんの短編を集めたアンソロジーはよくあるけど 各自が一章分の原稿を書いて、次々にバトンタッチならぬ 「原稿タッチ」をしていき、長編に仕上げる「リレー小説」って プロの作家さんでは、あまりないんじゃないでしょうか。 かなり楽しい企画。こういうの大好きです♪ このリレー小説、書く際に一応「ルール」を決めていたそうです。 芦辺さん&二階堂さんの前説から抜粋した「ルール」は以下の通り。 『全体での打ち合わせは一切行わず、各執筆者は前回までの 原稿をそのまま引き継いで書くこと。むろん、謎の真相や 伏線についての質問も禁止。だからといって、あとあとを 考えない無責任なストーリー展開は許されません。 必ず自分なりの【今後の展開】もしくは【予想解決篇】を 想定して、後日に備えて書きとめておくこと』 二階堂さんがまず第1章で、かなりインパクトのある事件を ぶち上げ、読者の目を釘付けにしたうえで、後々に物語を 膨らますための材料となるような設定、伏線やキャラクター などを用意し、二番手の柴田さんに引き継いだ訳ですが、 それ以降はもうなんだか大変なことに・・・(笑) 手堅く大筋の設定を崩さないよう努める人、 新たな設定やキャラクターを出して流れを変えちゃう人、 変わった流れを軌道修正しようとする人、 「後の人、どうすりゃいいっちゅうねん!」ってくらいに 設定を怪しい方向にもっていっちゃう人・・・。 などなど、まさに十人十色で、物語は迷走していきます。 もうほんと、あっちへ行ったりこっちへ行ったり。 「これ収拾つくの?」って心配しつつも、かなり笑えました。 第10章の終わりに愛川さんが【読者への挑戦】ってことで 「解決に必要な条件はすべて提示しました。読者の皆様は 今後の展開を予想し終えてから、解決篇へお進みください」 って書いてるんだけど、全然わからんっちゅうの!(笑) 案の定、最終章は、「マジっすか~?!」のオンパレード。 かなりトンデモ話になっちゃったような気がするけど、 他にはどうしようもなかったんだろうなーと。 よくもまあ、みんなが撒き散らしたものを拾い集めて 収拾をつけたもんだと、感心しきりです。 ほんと、芦部さんはお気の毒でした・・・(笑) 最後に、【『堕天使殺人事件』―私はこう予想した】という タイトルで、「自分が書き終わった後の展開はどうなるのか」 について、11人の作家さんたちそれぞれが予想した内容が 掲載されてるんですが、これがすごく興味深いんですよ。 「へえ。こういうつもりで書いてたんだー」っていうのが わかって、さらに楽しめました。 でも、みんな予想はずれまくりでしたけど(笑) ちなみに、西澤さんの予想には大笑いでした。 ほんと、色々な意味で楽しい作品でした。 「筋道が通ってない推理小説は許さん!」っていう人には お勧めできませんが、推理小説の好みのストライクゾーンが 広めの方には、ぜひ読んでみていただきたい作品です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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