温泉ロケの続き
ずいぶん自然にふるまうことができるようになった大雅。フリップを持って、温泉の紹介も上手にできました。夕飯の場面では、本当に素か?と思える顔を見せます。プロデューサーにも褒められました。ロケの荷物運びを手伝うなど、誠心誠意仕事に取り組む大雅の姿が描かれます。
このロケの中で大雅は目覚ましい変化を見せるのです。これはこれからの<大雅の仕事での成長>を暗示する一つの象徴的なエピソードと言えるでしょう。
その成長の原動力は詩織。手助けしたのは楠家の家族。母真知子も兄大貴も、実にいい先生でした。
事務所
社長は銀行に行くといって出て行き、そこに大雅が走り込んできます。詩織が帰る前に一目会いたかったようです。
6話の山場とも言える場面ですね。
走り込んできた大雅を見て詩織は一瞬どきっとした表情を浮かべます。
「ああ、よかったまだいた」詩織の姿を見つけて安堵の息をつく大雅。
「お疲れ様です。今日はもう、戻らないのかと」戸惑いを隠しながら平静を装う詩織
そんな詩織をじっと見つめる大雅。
大雅はこのところ良く詩織をじ――っと見つめます。ぼーっとしてると言ってもいいですが、恋する青年特有の振る舞いです。眼差しも、恋してる青年のそれです。
「あ、いや…ずっと考えてて。次に会ったら何を話そうかなあって。なるべく普通に、さりげなく普通の話をしようと思ってて。なのに、いざ会うと何話していいかわかんないや」
分かんないから自分の今の心境を長々と語っちゃう大雅です。詩織は黙って聞いています。何言ってんですかあなたは?って感じかな。大雅が語り終えるとちょっと笑って。
「変なの」
そこで大雅はお土産のことを思い出します。
「ああ、そうだ。これ、お土産」
差し出された小さな紙袋を受け取る詩織。ややためらっているような空気を読んで、大雅が慌てて説明します。
「別に特別じゃないよ。青木さん達とか、桜の分も買ってきたから」
聞いて詩織も普通にリアクション。 「ありがと」
袋の中から出て来たのはピンクの石のキーホルダー。幸運のお守り二つ。
「小さい方は海の。お守りだって。幸せになれる」
一つを取り上げ目の上にかざして「綺麗」と呟く詩織。そして、にっこりと笑う。
その詩織をじっと見つめて、そして詩織の笑顔を受けて笑みを浮かべる大雅。
「北村さんが笑ってくれると、ほっとする。俺、北村さんのこと諦めようと思ったけど、できなかった。もちろん、付き合いたいとは思ってないけど、でも――そばにいたい。できるだけ、あなたを支えたい。どうやったらもっと楽になるかな。俺が――俺の存在が、少しでも北村さんを楽にできるなら、少しでも幸せにできるなら、俺、全然利用してくれて構わないよ」
大雅の優しい口調。優しい言葉を耳にしながらずっとうつむいて苦しさと切なさの入り混じった表情を見せる詩織。その切なさの色はどんどん濃さを増し。意を決して何かを言おうとしたのか不意に顔をあげ、大雅を見つめます。
詩織の視線の先にあった大雅は――心から詩織の幸せを願い詩織を思っている、本当に優しい眼差しを詩織に向けていました。
その視線にぶつかって、思わず目を逸らす詩織。
「ま、っていっても、俺ができることなんて少ししかないけど」同じく照れたように視線を逸らした大雅が呟きます。
大雅が視線を逸らしたのを合図にしたように、詩織は目を下に向けたまま、はっきりと大雅に言葉を投げつけるのです。
「大雅さんがいなくなること――かな」
お土産のお守りをテーブルに置く詩織。冷たい置き方です。
「大雅さんがいなくなれば」ここまでは視線を合わせられず「あたしきっと楽になる」ここで初めて大雅を見上げます。
そう言われた大雅は、しばらく絶句して詩織をみつめ、やがて横を向いて「そっか」とため息交じりにつぶやきます。その大雅の嘆息に覆いかぶせるように、詩織が言い募るのです。
「だって大雅さんのせいよ」
この言い方がまんま少女。駄々をこねる少女そのものです。
もう詩織の心のガードは崩壊寸前まで来ていて、そうやって攻撃的に相手を追いやることでしか自分を支えていられないのでしょう。ここの詩織の理屈はむちゃくちゃです。
「今までだって、二人で――海と二人で十分楽しく暮らしてたのに。なのに、大雅さんが勝手にどんどんどんどん入り込んできて。家の中にも、心の中にも、プールの中にもどんどんどんどん入りこんできて、もう嫌なの、もうやめてほしいのよ」
ここでね。普通なら「心の中にどんどん入り込んでくる」でピン来るもんです。
視聴者はすぐにピンと来ているはず。でも大雅は鈍感な天然ちゃんなので、額面通り言葉を受け取ります。頭でっかちの弊害です。
「いや、ごめん、ちょっと言ってる意味がわかんない」「だからそんなふうに話しかけるのはもうやめて」
詩織にしてみれば、大雅の声すら辛いのでしょう。大雅の声は自分の心の中に入ってくるから。これ以上かき回されたくない。そういう思いがほとばしった言葉です。
「ずっと忘れたくても忘れられなかったのよ。」と詩織。忘れたくても「忘れられなかった」無意識のうちに過去形にしてます。
「事故だなんて、あまりに急でびっくりして。死んだなんて全然信じられなくて。遺骨もなくて、こんな、こんな小さい洋服の切れ端しか帰ってこなくて、だから、毎日毎日明日になればあの人がただいまって帰ってくるんじゃないかって。大好きで、ずっと忘れれなくて。それなのに――」それなのに、忘れかけることがある。大雅に出会ってから。という間だとワタクシ勝手に解釈しております、ここ。「それなのにそんな簡単に私だけ楽になれるわけないじゃない」つまり大雅が楽にしてくれる存在だってことですよね。やっぱり無意識に詩織はそう感じ取ってるんですよね。大雅の手をとって、楽になっちゃいけないって意識の表れ――だとこれまた勝手にこじつけ解釈。
そしてその場を離れようと踵を返した瞬間、トロフィーに当たってしまうのです。
青木社長が毎日せっせと磨いていた「宝物」のトロフィーが、ぱっかり二つに割れてしまいました。
そこへタイミング悪く(良く?)青木社長とシゲちゃんが戻ってきます!
つーことでこれからラスト。