舞台立ち稽古場面
衛兵の役に指導が入り、そのさい有栖川からこの場面の解釈をしてみろと無茶ブリされる大雅。だが有栖川は無茶ブリのつもりでも、しっかり台本を読み込み資料を漁って解釈してきた大雅は、滔々と自分の論を述べ始める。
ここ!地味ですけどお気づきになられました?(←誰に聞いてるのか自分)
解釈を説明する部分、かなーりの長セリフです。けれども大雅は淀みなく喋り続けます。場面が目に浮かぶような非常に上手な説明です。聞き取りやすく、ぎこちない滑舌でもありません。つまり、松潤は見事にこの長セリフをものにしてるんです、大雅として。
ともすれば、大雅が売れない役者でしかもカツゼツのことを指摘される役で、松潤さんもどちらかといえばぎこちない台詞回しになることもなきにしもあらずで、だから大雅=松潤さんと思われがちですが、実は違う。
大雅は素の時は、もちろん言葉を噛んだりしないし、普通に喋ってるんですよ。
そしてここの解釈の深さがなかなか見事でね。
実はこの説明する大雅の声音や、はっきりした聞き取りやすい発語なのに淀みない流れをもった台詞回しが大好きで。最終話の地味に大好きな場面ナンバー2なのです。
大雅、晴れて役ゲット。
いつの間にか役者仲間と友達になってて、大雅に役がついたことを仲間が喜んでくれます。どこでも大雅はこうした良い人間関係をつなぐ。そういう人物なんですねえ。
ここで、おいでおいでってする市村さんが好き!
君にしかできない従者を演じることだ。
小手先の芝居上手くなってきたけどでもそこにばっかりとらわれないでほしい。一番大事なのは自分にしかできない役を演じること、作り上げること。
事務所
みんな大喜び。あくまで前向きな大雅が可愛いです。
「しかし大雅さんの今までの傾向ですと、そのたった一つの台詞を」「噛むな」「噛むね」「そ、噛みますな、きっと!」という畳みかけコンボが最高でした。
こういう軽妙なやりとり大森さんは上手です。
おまじないを教えるからと言って大雅にデートの約束をとりつける桜。
夜、海辺でデート
第一声「どうかした」と尋ねる大雅。
ここも大好きな場面です。ベスト3。てっきりおまじないにつられたと思いきや、そうじゃなかったってことですね。桜の様子がおかしい。だから自分もいっぱいいっぱいだけど、話くらいは聞いてあげられるんじゃないか、という大雅。
この優しさがたまんねーんです。桜も、だから大雅先輩が大好きなんですよね。
そして桜と一緒にいるときの大雅はとても男していて頼りがいを感じさせるので、非常に魅力的です。
でもやっぱり自分に嘘をつかない大雅。桜のことも可愛いと思っているけど、自分は詩織さんが好きだときちんと告げます。
桜失恋。すぐさまイラブーを呼びつけて、彼の前で号泣。彼女を守ろうと手を広げるイラブーが可愛かった。彼もすっかり愛すべきキャラになりましたね!
疲れて帰ってきた大雅が見つけた一通の手紙――それは詩織からのもの。
大雅さんへ。
お元気ですか。お芝居のお稽古、がんばってますか。
あれから、全然連絡もしないでごめんなさい。
大雅さんが家族になりたいって言ってくれたこと、
すごく驚いたけど、本当は、少し嬉しかった。
初めてあなたに出会ったころ、私はあなたが眩しかった。
ううん、正確にいえば、あなたの育ってきた環境が眩しかった。
素晴らしいお父様に愛されて、すくすく育って。
あたしはそういう環境を、おとうさんという大事なものを
海に見せてあげることができなかったから。
だから思わず、良く知りもしないあなたを殴ってしまったりもした。
なんて贅沢なんだろ、なんて甘えた男なんだろうって。
でも、事務所で働きだして、大雅さんが不器用なりに努力してるんだってことが
よくわかった。大雅さんの育ちの良さや、優しさも分かってきた。
それに、ある時から、大雅さん変わったよね。いつ頃からかな。
大雅さんは、コンプレックスもプライドも全部捨てて、必死に夢を追い始めた。
私は、そんな大雅さんの努力する姿をずーっと見てきました。
だから今は、もっと自信を持ってもいいと思う。
楠航太郎さんも、きっと今頃そう思ってるんじゃないかな。
そうだ。そういえばあの日、大雅さんが航太郎さんのお墓で泣いていたあの日、
雨上がりの空に虹が掛かっていたのよ。綺麗な虹が。
あなたはきっと、いつかお父さんに負けない俳優さんになれる。
舞台、がんばってください。
あなたのファンより。
北村詩織。
この背後に映されるのはほとんど大雅の舞台稽古シーンなのでそちらに釘づけになって、手紙の内容がはっきりとは入ってこない。
入ってきたのは最初の<大雅さんが家族になりたいって言ってくれたこと、すごく驚いたけど、本当は、少し嬉しかった。>の部分だけで、またどひゃ~っと驚いたのでした。
おいおい詩織、大雅の真剣で真面目な気持ちが「少し」嬉しかっただけなのかい!って。
もう、ことごとく詩織さんはこちらの神経を逆なでしてくれる人でして。
やっぱりこの人、大雅と結婚する気はなかったってことかいな。と思ってたんですが、改めて見直してみて・・・・・・・やっぱりそうだったんだよね…。
好意的に解釈するとですよ、自分なんかに大雅を縛り付けたりできないから、大雅のことは好きだけど結婚なんて高望みしちゃいけないと自分を律していた、ということでいいですかね。
でもどう考えても「少し」はいらないですよね。
大雅さんが家族になりたいと言ってくれたこと、本当は嬉しかった。
これですっきりするやん。あの場面で酷い言葉投げつけたことも、本心じゃなかったのよって言い訳になるし。(こっちもそれで溜飲が下がる)
大雅を喜ばせることにもなるし。
でも詩織にしてみたら、大雅に好意を寄せてもらうことを手放しに喜ぶのは気が引けたんでしょうね。そういうことにしておきます。
手紙冒頭のバックに映る大雅の名前入りハムレットのポスターを眺める詩織さんの目が非常に嬉しそうです。愛しいものを想う目です。端々にこうして竹内詩織は大雅への愛情をほとばしらせてくれるんですが、それを片っ端から吹っ飛ばして行く大森脚本。
疲れます。
大雅の舞台
みんなで用意をして、万障繰り合わせて舞台に駆けつけます。
本格的な舞台を思わせる、十分重厚な舞台になりました。放映一週間前に最終回の台本があがったそうで、舞台美術のスタッフなんててんやわんやで大変だったそう。それでもこれだけ素晴らしいものを仕上げて。美術や映像スタッフは優秀ですよね、フジテレビ。
市村さん素晴らしいわ。冒頭ひと台詞だけでそこをハムレット舞台にしてしまう。空気を変える力を持ってる。これが本物の演技力ですよね。うっとりします。
そして舞台左手後方にひっそりと立っている群衆の一人、楠大雅くん。
オペラグラスで覗く海が見つけ、ついで詩織が舞台を探し大雅の姿を見つけ出します。
その時の詩織の顔。
どこ?どこ?ってすごく必死に探してるの。そして見つけた瞬間の、ちょっと気恥ずかしそうな、それでいて嬉しそうな顔。好きな人を見つけた時の顔って、あんな感じだよね。
舞台裏でおまじないをする大雅。
北村さんといいかけて、やっぱり。と名前を呟く。詩織、詩織――詩織。
目を上げた時の大雅の顔が。目が。
落ち着いて、そして集中している。そんな表情です。いい顔をしています。
そして階段をゆっくりと登って行く。
舞台を照らすライトを浴びて、逆光になる彼の背中のシルエットをカメラは追います、バックに流れる舞台のクローディアスの台詞。
ここはダイナミックな画面の構築に成功している。高揚感のある場面に仕上がっていて、ものすごく好きです。ここも大好きな場面のベスト3に入ります。
澤田さんの真骨頂だと思うよ。ほんといい。
そしていよいよ舞台!衛兵の登場です!
申し上げます。国王、すぐにもこの場をお立ち退きください。
レアティーズが暴徒を率い、押し寄せてきます。
暴徒は彼を王と呼び、手を打ち声を上げ、レアティーズを国王にと喚き立てております。
まるで、彼らの空に突然に、七色の虹がかかり、新しい世界が始まるかのように。
従者らしい台詞回しです。重くなることなく、やや軽めに。
初舞台の緊張そのままに少し息が荒く。
けれどもスポットライトを浴びる彼の姿はその一瞬だけ場を支配します。
ここも演出はお見事で、ただの端役にすぎない彼にスポットを見事に当て、浮かび上がらせました。
台詞を無事に成功させ、その後も従者として舞台の上で生きる大雅を見つめる詩織。
その表情は誇らしげです。
愛する男性の立派な仕事ぶりを、誇らしげに見つめる女性の表情です。
舞台は成功に終わり、幕。
カーテンコールで自分を応援してくれる人々の顔を見つけ出す大雅。
詩織の顔を見て、ありがとう、と口を動かす。
それに気付いた詩織の心を衝かれたような顔。
そして――大雅は見つけます。
客席の一番後方で、自分を見守ってくれていた人を。
父、航太郎の姿。
幻と分かっているけれど、でも確かに大雅には見えているでしょう。そして、航太郎さんも、確かにそこにいて見守ってくれていた――。そう思います。
1話で感動した航太郎と大雅の親子の場面。それを思い出したら涙がこみ上げてきて。
感動が止まりませんでした。
唇を震わせて、達成感と父への想いと喜びと。大雅の表情がまたたまらなくて、泣けました。
ここが全編通して一番好きな場面です。ダントツナンバー1です。
舞台がはねて。
誰もいなくなった客席を見渡す大雅。
そこにやってくる詩織親子。
9話以来初めて二人が言葉を交わします。
感動、っていうより「ありえないだろ!」と言わせていただきたい。
恋愛物と思わなければありですけどね。恋愛物だとしたらあり得ません。
ということで、ここでワタクシ的にこのドラマは親子の情愛ものだということで落ち着きました。華を添えたのが詩織との恋愛だった、と。
しかし、大雅の詩織への真心は何ら変わらず、詩織も北村家の報告によって彼の気持ちは分かってるわけですから恥ずかしがりつつ受け止めます。
詩織のどこに大雅が感謝してるのか今もってワタクシには分かりませんが、まあ、詩織が頷いてるのは大雅の感謝してるという言葉に対してではなく、「好きだ、これからもずっと」という言葉に対してなのだろう、と言うことにしておきましょう。
それでもね。
最後海の手をとって階段を上がる大雅と、そのあとをちょこちょこついていく詩織の姿は、ほほえましい家族そのもので。見ていて自然とほほ笑んでしまう自分がいるのです。
このドラマの不思議なところですよねえ。何なんでしょうねえ。
こうして騙されて幸せになってしまうのだ。
ラストエピローグ。余分ですがお約束。余韻を残すためには不可欠な飾りです。
入りきらなかったので次のエントリーに。