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カテゴリ:陸上
適量のビールを飲みながらフルコースの昼食を取れば、夕方のレースは後半ペースが落ちず、どちらかと言えば後半型のレースができる。
ごくごく狭い範囲に限定すれば、トリビアの泉にでも使えそうな命題である。フルコースもさることながら、適量のビールとあるところがミソなのだ。 フルコースの昼食にたしなむビールなら、ぼくにとっての適量とはずばり、中ジョッキ2杯分。 最初はイタリアのリッチョーネ。2002年世界ロードマスターズ選手権の時、本命は2日後の30キロだったこともあって、その日の10キロには比較的楽な気持ちで臨んでいた。とにかく食べるもの食べるもの、何もかもおいしい。それなのに、ツアーの関係でホテルに可もなく不可もないごくごくふつうの夕食がついていて、せっかくアドリア海に面した漁港に来たのに、これでは蛇の生殺しもいいところだ。せめて昼食なりと、ここぞとばかり食べ歩かないとはるばる来た甲斐がない。 夕方レースがあることはわかっていても、獲物を目の前にしては、もはや自制心などどこかに吹き飛んでしまう。自分の好きな魚を選んで、その場で調理法を指定する。これは最高だ。アルコールだけはちょっと控えようなんて野暮なことは言いっこなしにしよう。これだけのものを前にして、ビールがなくて何の人生ぞ。 ああ、よく食べた。あとは食べたものを出発までに消化し切れるかどうかだ。 案の定、出発時間が来ても食べたものがまだ胃の中に残っているという感じがした。ただ、10年続いて故障も直り、充実した練習ができつつある時期だった。M45(45歳から49歳)の出場は開催国イタリアをはじめ世界各地から23人。みんな強そうだけれど、大丈夫。何たって、ぼくは日本人には弱いけれども、外人を相手にすると燃えるタイプなのだ。 それまでの世界大会の最高順位は16位。今日こそは10位か、あわよくば8位くらいを狙に行くぞ。号砲が鳴ったときには、胃のことなどまるで念頭になかった。 それにしても、ヨーロッパの連中は強い。イタリア、ポーランド、スペイン、ドイツ、ロシア、フランスと、1国一人ずつ先行を許しただけでも、10位などはるか彼方に消えてしまう。必死の思いで食らいついた。そのがむしゃらさに同行の「コーチ」から「もっと全身の力を楽に使ってついて行け」と檄が飛んだ。 初めて会った人なのに、「もっと腕を速く振る」や「残した足の指で地面を蹴る」など、長年お世話になったコーチのよう。最後には「あとまだ、3人抜ける」。もうこちらも目一杯。「くそ、鬼コーチめ」とは思っても、言われてみると本気になる。 それから1人は抜いた。3人は抜けなかったような気がする。あと数メートルにまで追い詰めたと思ったら、もうそこにゴールがあった。よほど充実していなければ「ええ、もうゴール」なんて思えることはない。 もしかしたら、初めて世界で一桁にまで行けたかとも思ったが、結果は10位だった。それでも悔しさはなかった。後半ほとんどペースが落ちなかった。それも前半抑えてのことではなくて、かなり無理をしてついていって、ここまで持ちこたえたのは、われながら満足だった。相手が強すぎた。とても、さわやかな気持ちになれた。 初めて出会ったこのぼくに、実のコーチのように応援してくださった北上の方には、心からお礼申し上げたい。 それともうひとつ。陰の立役者、お昼の食事とビールにも。 ←ランキングに登録しています。クリックおねがいします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年12月01日 00時26分34秒
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