カテゴリ:よもやま
ここ数年、ワタシが読む本といえばノンフィクションか時事モノばっかで、「小説」をほぼ無視してたのですが、周囲の複数の方が絶賛していたもので、頑張って読んでみました。
『海賊とよばれた男』 百田尚樹著/講談社刊 いやあ、これは驚きました! 「小説」+「ベストセラー」というNGワードでこの本をやり過ごしていたら大変な損失でした。 小説といっても、本書は実在の人物「出光佐三(出光興産の創業者)」がモデルで、ほぼ史実に沿って描かれているので、実質はノンフィクションの「伝記」とみなしてよさそうです。 念を入れて、出光佐三を実名のまま取り上げた本も副読本として参照しました。 『出光佐三語録 士魂商才の経営者』 木本正次著/PHP文庫 門司の小さな石油商からスタートして満州、台湾へと事業を拡大しながら、太平洋戦争で全ての事業と海外資産を失い、残ったのは借金のみ。そのとき佐三(小説では国岡鐵造)既に60歳。 そういう状況でもひとりの店員を解雇することなく、国内石油業界・政府・海外石油メジャーを敵に回しながら、日本人による民族会社としての信念を貫き通し、出光興産(小説では国岡商店)を国内外のどこからも干渉も手出しもできない強力な会社に導き、95歳で亡くなるまでの人生を描いています。 本書からは現代日本人が学ぶべき色んなことが盛り込まれています。 『人間尊重』 『士魂商才』 『黄金の奴隷たるなかれ』 いろいろ細かく書きたいのはヤマヤマですが、ワタシのぐだぐだ駄文で誤解を与えるより、とにかく本作を読んで考えていただきたいと思います。 同じようなことを口先だけでいう経営者は恐らくみなさんの周囲にもいらっしゃると思いますが、これを過激なまでに頑なに実践し、還暦の齢にして全てを失いながらも絶望せず猛進し、幾度も四面楚歌の窮状を打ち破りながら奇跡を起こした人物が実在したことは、これからの日本にとっても大変な幸運だったと思います。 今までこれほどの人物がクローズアップされなかった理由は何となく推測できますが、本作が書籍として大ヒットし、今後映画化や派生書籍の刊行などが進めば、出光佐三が生涯を賭けて体現してきた理念が多くの日本人に受け継がれていくことを期待できそうです。 単に出光佐三の立志伝というだけでなく、現代史を「石油」という切り口で俯瞰できるという意味でも本書は絶好の書と思います。 日本はなぜ戦争に突入したのか? なぜ敗戦したのか? 戦後にアメリカは中東に何をしてきたのか? 出光佐三の創業時には海のものとも山のものともつかなかった「石油」が、急速に世界の覇権を左右する物資となり、その結果日本は敗れました。 時代は変わって国家間の争いは「兵器による戦闘」から「経済戦争」に移行しただけで、緊張状態にあることは変わりありません。 当時と変わらないのは、日本は「エネルギー」という戦略物資を完全に国外に依存していること。さらには「食糧」すらも自給できなくなっている現状は、いつ日本が海外諸国から「命綱」を絶たれて再び「敗戦」の日を迎えても不思議ではありません。(まさか今どきアメリカ様が守ってくれるから大丈夫などと言ってるお花畑民はいないとは思いますが・・・) 敗戦の日に佐三は「日本人がいるかぎり、この国は必ずや再び立ち上がる」と予言し、「日本人の誇りと自信を失わないこと」と唱え続けて、日本の奇跡的な復興を自ら具現しました。 しかし、次にやってくる「敗戦の日」に当時と同じような「誇りと自信を失わない日本人」がどれほどいるのでしょうか? 暗澹たる気持ちになっている場合ではありませんね。 まずは自分自身が「士魂ある日本人」になるよう、前に進むのみです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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