カテゴリ:よもやま
先月からなぜか取り組んでいる「流行りもの」「人気作」「話題作」の読書キャンペーンの第三弾!
2004年に史上初の大藪春彦賞・吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞の三冠受賞した作品ということと、日本政府の無責任な南米移民政策に対する被害者の復讐劇ってテーマが、時代も立場も地域も違いますが、海外移住民として何か感じることがあるだろうと、読んでみることにしました。 『ワイルド・ソウル』(上)/垣根涼介著(新潮文庫) 『ワイルド・ソウル』(下)/垣根涼介著(新潮文庫) いやあ~、こりゃ凄いわ・・・ おススメってレベルじゃないね。四の五の言ってないで読めやっ!!てカンジですね。 著者の取材力・構想力・文章力、あらゆる点で感服しましたっっ!! 日本国政府のキャンペーンによりブラジル移住を果たしたひとびとが、想像を絶する貧困と絶望に直面することになりますが、それが国が戦後食糧難を回避するための「棄民政策」であったというのが物語の根幹にあります。 そして国に対する被害者一家の二世の復讐劇ってことですが、この小説は上下刊を一週間足らずで一気に読みきってしまいました。 南米移住政策については前提知識がなかったんですが、それが「棄民政策」だったのか単なる「政府の無能による失敗」だったのかは他の文献も当たらないと何とも言えないですが、国民が壮絶な苦難の中にあっても外務官僚は自己の保身と出世を優先し、臭いものにフタをするかのように自国民の生命が損なわれていくことに何の痛痒も感じないということは、現在にも共通することと言えます。 自分がもし異国で何らかのトラブルに巻き込まれても、例によって「自己責任」という捏造概念をメディア経由で拡散して、見捨てられるんだろうな・・・ そういうキナくさい話は別にしても、ブラジル移民家族の生き残りが苦難の末に立身を果たすまでの部分だけでも、骨太のヒューマンドラマとして非常に価値があるストーリーになっています。 そのあとの二世による復讐劇は、スリリングな展開のみならず登場人物が脇役に至るまで魅力的で、よくこんだけ作りこんだな~と感心するばかりです。ニュース番組制作の裏側なんかも克明に描写されてますんで、ウンチクを知りたい向きにもおススメです。 これはドラマ化・映画化されてないんかな、と調べてみましたが、ハナシはあったようですが構想段階で立ち消えになったのかな? スケールといいテーマの微妙さも含めて、この小説の世界観をそのまま映像にできたら凄いことだと思いますが・・・ いやあ、今まで小説はやや軽視していてノンフィクションばかりに傾倒してたんですが、フィクションならではの描写で主観的に近いイメージで事実を把握できるってのは小説の醍醐味ですね。 にほんブログ村 人気ブログランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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