カテゴリ:よもやま
今回は「経済小説」とされるジャンルの本が二冊です。キホン世の中のことを知るには文芸・社会のカテゴリの本を読むのが常道ですが、意外とフィクション(小説)の方が実相をうまく描写していることも往々にしてあるので、よさそうな本は常に集めてあるのです。
『マグマ』/真山仁著(角川文庫) こちらは「地熱発電」をテーマに「国際エネルギー戦争」を描いた小説ですが、「国際」という観点でのツッコミは結局それほど深掘りされてない印象ですね。しかし原子力発電の影で政府・官僚・学界や環境マフィアの圧力で日陰に追いやられている地熱発電の現実を赤裸々に描写してるのは見事です。そして、読むひとは必ず今後の原発に代わるエネルギー源として地熱発電に大きな夢を抱くことでしょう。 重いテーマのようですが、地熱発電の仕組みや課題などわかりやすく説明されてて、また登場人物がそれぞれ実に魅力的で、骨太の人間ドラマとしても十分以上に楽しめるものです。 ネタバレかも知れませんが、テーマのイメージとは裏腹にクライマックスは下記『下町ロケット』にも匹敵するスカッと爽やかな結末となっており、上質なエンタメ作品に仕上がってます。 それにしても、日本は世界第三位の地熱資源国であるというのに、自分も含めて地熱発電というものに今まで知識も関心もなかったことには猛省するしかないですね。この作品が書かれたのはなんとフクシマ以前のこと。こちらタイ北部でもかなり以前から地熱研究が盛んらしいのでこれを機会に詳しく調べてみようと思いますが、もし今の段階でも日本の地熱発電に関する議論が進んでなかったとしたら、われわれの未来は暗いモンがあるなあ・・・ 『下町ロケット』/池井戸潤著(小学館文庫) 一年以上前に買ってた本ながら、あまりに人気作で絶賛の嵐なのでアマノジャクのワタシは敬遠しとったのです(苦笑)。ほんなら何で買ったんや?と自問するとアホらしくなってきたんで、意地を張るのをヤメて読んでみましたとさ。 う~ん、さすがに売れっ子作家、よく出来てますなあ! 会社員時代にメーカーから零細企業に渡り歩いてたワタシには、特許をめぐる理不尽な紛争・メインバンクとの融資をめぐる暗闘・研究開発とエンジニアリングの葛藤・身を削るような品質への訴求など、立場やスケールの違いこそあれ自分にも関わりのあったことばかりで、読みながらつい胃が痛くなるような錯覚を覚えました(汗)。いや~、ほんとよく取材されててリアリティ満々ですわ。 結局鮮やかなハッピーエンドでスカッと爽やかな結末で終わるところはこの作家のいいところでもあり悪いところでもありますが、まあ問題を解決できずに莫大な赤字抱えて再三のリストラを経て倒産しましたなんて(ワタシが経験したような)現実じゃあ小説にもドラマにもならんでしょうから、そこは「ファンタジー」として夢を見させてもらったことに感謝!! 真似して信念を貫いても小説のように成功するほど世の中は甘くないですが、たとえ失敗してもこういう生き様の方が後悔しなくていいかね!と思わせてくれる良作でありました。 続編の文庫化も楽しみに待ちましょう。 にほんブログ村 人気ブログランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年12月19日 00時05分23秒
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