秋月春風 ブログ版

　金曜日、ちょっとばかり強引に休暇を取った。
　rocoさんのサロンで『レイキ交流会』があったので、それに参加したくて。
電車にコトコト揺られて向かう途中も、少し仕事の事が気になったが、来週その分バリバリ働けば良い…と自分に言い聞かせる。
　多分、この夏私にとって、最初で最後の休暇になる筈だから。
　もちろんこの後も休暇の予定はあるが、保育園行事参加の為と、夫実家に帰省するため……である。だから、一日で良いから自分独りで平日に好き勝手する日が、どうしても欲しかったのだった。

　久し振りの「ひだまり」は、相変わらず居心地が良くて、着いて早々根が生えそうな気分。
　講習会は、私の他には親子で参加のもうお一方のみで、非常にこじんまりと、そのぶんじっくりと過ごさせてもらった。
　家族とrocoさん以外の方には初めてとなる他者レイキに、始めはとても緊張した。レイキ前に行う一連の動作があるのだが、それすらすっかり忘れていた私は、本当にきちんと送れるか自信が無くて。
　ぎこちなくも、とりあえず私はパイプ、私はパイプ…と心の中で唱えながら、相手の方の希望が叶えられますように…と願いながら手を当てていく。次第に気持ちも落ち着いてきて、最後は大分静かでどっしりとした気持ちで送れたように思う。
　レイキ中に感じた事をお互いにシェアしあって、今度は私が受け手に。
　手を頭部に置かれた直後から、じんわりした暖かい波動が全身を包むような感覚があって…それがあんまり気持ちよくて、どうも途中完全に寝転けていたらしい……。
　終了後、私は風呂上がりのような気分だったが、レイキ中の事はほとんど記憶に無く、相手の方にシェアしてさしあげることが少なくて申し訳なく思ったのだった。
　その後のランチ会では、私の愚痴大会のようになってしまい……もうちょっと、建設的な話題を提供できればよかったなぁ……と、帰路反省することしきりであった。

　
　ひだまりを後にしてからは、まずは駅前のニキティキへ。目当てはナッテラさんの新作ビスク……で、確かにそれはあったのだが、案の定レジ裏のガラスケースの中だった。
　と、遠い……。
　必死に目を凝らしていたら、当然だが店員さんに声をかけられてしまった。ナッテラさんの人形が好きだと話したら、入荷したばかりだというケテ・クルーゼ社製のビニールドールを出してきてくれた。
　ケテ社から出るのは知っていたが、私の検索の仕方がまずいのか画像を探すことが出来ずにいたので、いきなり本物ちゃん達に至近距離でお目にかかれたことは、本当に嬉しかった。
　どの子も、とても可愛らしい。お顔の傾向としては、かつてのホワイトバルーン社から出ていたものに近かった。
　どの子も売約済みということで、逆に安心して（笑）心ゆくまで眺めさせていただいて、お店を後にした。いつの日か、娘と一緒に、娘のためのお人形を選ぶ日が来たら嬉しいなぁ……。
　
　その後、銀座で途中下車。目指すはもちろん、エンジェルドールズである。
　店内に踏み込むと、偶然「岡馬　勲」さんと言う方の個展初日であった。
　個展を開かれるのは初めてらしいが、人形作家としてはかなり実績のある方のようだ。オリジナルのビスクドールを、何度も何度も焼きを入れて作られる方らしく、必然的に寡作となり、個展を開くのに数年の準備期間が必要で、これまで機会がなかった……ということらしい。
　作品は、どの子もとても可愛らしく、特に日本人をモデルに作られたお人形達は、子供の愛らしさ、可憐さが余すところ無く表現されており、しかも凛として静かにそこに在る雰囲気が、私にとっては非常に直球ど真ん中であった。
　特に、一体の赤ちゃん人形に取り憑かれたようになってしまい、しばらくその子の前に座り込んで眺めていた。
　何分もそのままだったので流石に気になったのか、初日と言うことで会場にいらした作者様が、お声をかけてくださった。
　はにゃ～んとした感じの、柔らかい空気を纏った気さくな方だった。
「今日は僕が居ますから、お手にとっていただいて良いですよ」
と言って下さったが、とんでもないと首をぶんぶん振って辞退。万が一にも落として割れたら、弁償どころの話ではない。
　どの子もとても美しく可愛いと思う、特にこの赤ちゃんが今日の展示の中では一番好きだ……とお話しし、でも今は購入する為の資金はとても用意できない、見ているだけで申し訳ない……そう伝えると、
「その感想を直接聞けただけでも、個展を開いた甲斐がありましたよ」
と笑ってくださった。
　その子のオーナーになれないことは、本当に哀しくて……誰か他のお客さんに抱かれて連れて行かれてしまう図を想像しただけで、目頭が熱くなってしまうほど心惹かれた……が、無い袖はどうしたって振りようが無い。
　岡馬さんと、店長さんにお礼とお詫びを言って、思いっきり後ろ髪引かれながら店を出た。
　
　帰りの電車の中でも、昨日寝付くまでも、何度もその人形のお顔を思い出し、定期預金を切り崩そうか、ローンを組もうか……等と色々悩んだのだが……今朝目覚めてからも、もう一度よく考えて、やはり今回は縁が無かったのだと諦めることにした。
　世界でたった一体しかない、お人形。
　出逢ってしまったその時を逃したら、まず次の機会は訪れない。
　それでも……今は、そういう時期ではない。
　とても、とても哀しいけれど。
　

　でも、この夏最初で最後の休暇…と意気込んで出かけたその先で、素晴らしいお人形に出逢えたこと、ましてやその作者様と会話する機会が持てたことは、本当に幸せな偶然だったと思う。
　少しずつで良いから、お金を貯めよう。
　いつかまた、今日のような出逢いがあったときに、今度こそためらいなくお迎えすることができるように……。




　……さて。
　レイキで心身リフレッシュして、目の保養もたっぷりしたところで、月曜からはバリバリ働こう。
　とりあえずは、月末〆切の書類作成に全力を尽くすぞーっ！