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2005年12月10日
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カテゴリ:ヤン・シベリウス
 最近,Neuschwansteinさんとシベリウス合戦をやっております。
 
 今日はカラヤンのシベリウス管弦楽曲集のCDについて。

(1)『フィンランディア』

 この交響詩,だれも一度は聞いたことはあるはずです。
 少なくとも,メロディくらいは知っているはず。
 そんなポピュラーな作品だけど,このカラヤン盤ほどシーリアスでスケールの大きい演奏は空前にして絶後でしょう。
 合唱を付けているけど単なるオーケストラ・ピースとして演奏したオーマンディ盤とは,まったく別の曲のように聞こえます。
 「鶏を割くに牛刀を用う」的やりすぎの感はありますが,ここまでやられては白旗を挙げるしかありません。
 でもこの「大袈裟すぎる」カラヤンの演奏は,ある意味この楽曲の本質を突いていると言えるかもしれません。
 もともとこの曲は,ソ連の圧政に反抗するフィンランド人たちの魂の叫びの代弁者であったのですから。
 戦後から長きにわたり,常に「ベルリンの壁」という政治的緊張感と対峙していたこの世界最高のオーケストラにとって,この曲が背負っいたものは他人事ではなかったのでしょう。
 カラヤン&ベルリン・フィルは,ほかにもショスタコーヴィチの第10交響曲や,バルトークの「管弦楽のための協奏曲」などにも,政治的緊張感を感じさせる名演を残しています。
 掛け値なしにカッコいい曲の最高にカッコいい演奏です。

(2)『トゥオネラの白鳥』

 これも有名な曲です。
 儚いため息をつくような白鳥の鳴き声。
 美しい旋律と息の長い構成。
 ただひたすらに,静かに,遠く,深く。

(3)『悲しきワルツ』 

 10年程前,ロバート・デ・ニーロ扮する映画「フランケンシュタイン」がありましたが,その中で,フランケンシュタイン博士(同名の人造人間を生み出した科学者)が,その死んだ恋人をフランケンシュタインにして(つまり人造人間として蘇らせてややこしいですね。。)その生まれたての(蘇りたての)恋人とワルツを踊るシーンがありましたが,そんな哀しい情景を想起させる曲です。
 原曲のストーリーは,死を間近に迎えた少女が,幻の中で得体の知れぬ「誰か」と死ぬまで踊りつづける,(シューベルトの「死と乙女」に近いイメージですね)というものですが,

 クライマックスでにわかに急速にテンポが上がる。
 少女は必死に踊りつづける。
 でもやがて彼女は力尽きる。
 青ざめたその顔と,その細い四肢を,男にあずけるように倒れこむ。
 それを抱く男の手にはべっとりと赤い血が付いている。

 
 僕にはこのように聴こえます。
 
(4)『タピオラ』

 単純にして雄大。
 どもまでも続く男性的な静寂。
 そこはだれも触れてはいけない場所。
 神聖な場所。
 それがこの『タピオラ』。
 それは耳で見る風景のようなもの。
 晩年の作品で,俗なところは微塵も残っていなので,ちょっとハマッて聞かないと,この世界には入っていけないかもしれません。


 さてところで,

 このCDは,ある特殊な「構成」を持っています。

 「フィンランディア」
 「トゥオネラの白鳥」
 「悲しきワルツ」
 「タピオラ」

 この単体の作品群を4曲並べて聞くと,まるでシンフォニーのように聴こえます。
 すなわち,

 「フィンランディア」~第1楽章 アレグロ
 「トゥオネラの白鳥」~第2楽章 緩徐楽章のアダージョ
 「悲しきワルツ」~第3楽章 (スケルツオ代わりの)3拍子のワルツ
 「タピオラ」~第4楽章 フィナーレ


 という構成。

 おそらく録音の芸術家・カラヤンの意図だと思います。
 個を全として捉え,全を個をして捉える。
 全にして一,一にして全。
 全ては数珠のように連なり,DNAのように繋がっている。

 芸術家・カラヤンは他にも粋なカップリングをいくつかやっているのですが,最近の「バラ売り」ないしは「抱き合わせ販売」により彼の意図が無視されつつあるのは嘆かわしいことです。
 
 





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Last updated  2005年12月11日 01時37分15秒
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