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2007年09月25日
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カテゴリ:J.S.バッハ
 ここは、とある学生寮の最上階。

 小高い丘の上に建つ、古びた学生寮の一室。

 クラシック・マニアの学生が、

 学校へも行かずに

 毎日毎日大音量でクラシックを聞いている。

 噂では、ロビーにいると

 向かいの女子棟に音が反射して、

 ステレオ効果で聴けるという。

 特にブルックナーなんて、圧巻らしい。

 こないだは学生オケの年配のコントラバス奏者がやってきて、

 「今のはウィーン・フィル?よい低音だね」

 と感心していたし、

 「あのドイツっぽい7番はだれですか?」

 と質問したマニアな1年生もいた。 

 でも、この学生寮でクラシックがわかるのはその二人を入れても

 たったの5人だけ。

 隣の部屋の後輩などは、

 釣りが趣味で音楽などまったく興味がない。

 でも、たとえ音で壁が震え音波でコップの水が震えたとしても

 文句ひとつ言わない。

 先輩にいちゃもんつけるなんて、この学生寮ではもってのほかだ。

 ところで、その「孤独な大音量クラシック学生」は、ある夏、

 J・S・バッハの無伴奏チェロ組曲に出会った。

 もちろん中古屋さんだ。

 奏者はアントニオ・メネセス。(当時カザルス盤は入手困難なシロモノだった。)

 毎朝、第1番のプレリュードから

 第6番のジークまで、あきもせず聴いた。

 そのあと決まって、裏山へひとりでトレーニングに出かけた。

 彼は体育会系なのだ。

 夏休みなので、学校へは行かなくてよいが、

 そんなことは学校が始まってからも事情は一緒だった。


 そんなわけで、僕はアントニオ・メネセスの「プレリュード」を聴くと、

 小高い丘の学生寮の最上階へトリップする。

 汚い学生寮だ。

 クーラーもない。

 でも、朝は気持ちのよい風が吹く。

 そう、そのころは、タバコも吸っていた。

 ショート・ホープだったか、マルボロだったか、ピースだったか、

 とにかく自虐的にきついタバコを好んでいた。

 金がなかったので、食事は100円の業務用レトルトカレーが定番。

 料理をしようにも、学生寮の台所はおそろしく汚かった。

 あんなところで鍋を作って(僕らはよくコンパのたびにありとあらゆる鍋を作った)

 よく食中毒が発生しなかったものだ。

 「みんな免疫ができるんだよ」

 と2留の先輩は嘯いていたが、あながちうそではなかっただろう。

 「こんなところに息子を住まわせるわけにはいきません!」

 と出ていった親子も毎年最低3組はいた。

 そのころの友達、そのころの悩み、そのころのエネルギー。

 今となっては思い出という名に属するものだけれども。

 というわけで、僕はアントニオ・メネセスの「プレリュード」を聴くと、

 汚い学生寮の1室にトリップする。

 それは今となっては古臭いスタイルなのかもしれないけど、

 のびやかで、まっすぐで、正直で、

 思い切りがよくて、すれてなくて、なにかをなさんとする意欲に満ち溢れていて…

 赤面するほどに若々しすぎるのは、

 この録音のもともとの性格なのか、それもと僕がこの録音に過去の自分を投影するからなのか。

 でも僕はこの録音によって、いつでもあの青春の一室に戻ることができる。

 僕にとっては、タイム・マシンのような、貴重な存在なのだ。





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Last updated  2007年09月25日 23時10分26秒
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