月夜に夢を　　

４４歳。税理士の卵だけど次期二代目。
あと残すところ一科目だそうだ。某有名私立大卒。
姑は数年前に他界。資産ありあり　玉の輿。

いい男性を紹介したいと打診されたのが半年ほど前のこと。
そのときは　詳細も聞かず
もう決まったひとがいるからと　丁重にお断りした。

それがまあ　久しぶりにお会いしたと思ったら
「月夜夢さんのお友達で誰か結婚したいひといない？」
とどうやらまだ探している様子。

「税理士がいいって言うから　知り合いのバツイチの女性を紹介しようとしたら
こぶつきは駄目だっておやじさんが（つまり父親の税理士先生）言うんだよね」


・・・ん？そういえば　あたし　自分がこぶつきだって言ってなかったな。
半年前の会話を反芻してみる。

「月夜夢さんってご結婚されてるの？」
「かつて　していたこともありましたねえ」
「おいくつなの？」
「今年でもう35になります」

そうだ。聞かれて無いもん、言ってない。
でも別に嘘ついているわけじゃないしねえ。問題ないよねえ。

質問にも出ないということは　母親のオーラを出していないということか。
ぬかみそくさくないということだと　喜ぶべきか。
それともここは　こぶつきの何が悪いと　憤慨すべきか。


とりあえず　あたしもこぶつきなんだと　自己（事後？）申告してみる。
驚いた顔をして　しどろもどろになりつつ
それでももらってくれるひとがいてよかったねえ　ぐらいなことをのたまう。

こぶつきもこぶつき　障害児つきなんですよ、と笑って言ってやったら
このひとは　どんな反応になるのだろう　と考えながらも
なんだかそれを口にするのは　もったいない気がして　やめた。


あたしはあたしの　こぶを　愛してる。