月夜に夢を　　

歯肉が腫れるという副作用を持つてんかん薬を何年も飲み続けている娘に
笑うと白い歯がこぼれるなんてことは一生無いのだと思っていた。
盛り上がった歯茎の先っぽにかろうじて見える白い歯。

それが歯茎を切除して歯を覗かせることが出来るときいて
職場の理解を得、昨年半年ぐらい通院してなんとかすべての歯を表出させた。
電動メスで歯肉を切り取っていくのだが　口の中は当然血だらけになる。
痛いと訴えることも出来ない娘だけに　
ネットでくくりつけられ　
唯一動かせる足をもぞもぞしながら治療する姿は不憫ではあったが
ようやくお目見えした歯はそれは立派で　今まで埋もれていたのが惜しいぐらいだった。

おかげで気になっていた口臭も無くなったし
笑うと見えるのは歯茎ではなく　ちゃんと前歯だし（これは大いに違う）
咀嚼にも発音にも大いなる好影響を与えるだろうと希望がもてた。

だがしかし喜びも束の間　面会のたびに　どんどん以前の状態へと戻っていく歯茎。
磨きにくい奥歯から順々にまた埋もれてきている。

今日予後を診せるために歯科を受診したところ
やはり歯磨きの不足を指摘された。

どうしよう。施設にはこれまでだって特別にお願いしているのだ。
忙しい人手不足の中を　きっと　無理をしてやっていてくれているのだろうと思う。
これ以上　「これでは駄目だからもっと丁寧に時間をかけてやってくれ」などと
頼めるものか。反感をくらうだけではないか。

そこで　道具に頼ることにした。
簡単に手間無く（実際は歯と歯茎の境目に一本一本あてていくのでそんなにお手軽でもない）
技術にさほど関係なく効果が期待できる方法として（電動歯ブラシより歯肉にいいそうだ）
超音波歯ブラシを使ってもらってみることにする。

エステとか美顔器では馴染みある超音波　歯ブラシにもあったのねえ。
結構いいお値段するけど　即決買い。
なんとか　これ以上すすまないことを祈るばかりだ。


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