月夜に夢を　　

リンが今日ニュージーランドへ旅立った。
昨年は先方の学生をあずかったのだが　今年は娘の高校が行く番で
英語コンプレックスをずっと引きずっている彼女の祖父（つまりあたしの父）が
スポンサーに名乗りをあげ　彼女の英語力では無謀ともいえるホームステイが決まったのだ。

部活の合宿等々もあり　ほとんど準備らしい準備もろくにしていなかったようなのだが
のんびりしたもので　出発直前の昨夜　遅くまでスーツケースをひろげていた。

まあ大丈夫だろうとは思いつつも
挨拶を兼ねた自己紹介の手紙にとうとう先方から返事が来なかった　とか
不安要素はそれなりにあり
やはりいざ最寄の駅まで送って行き　電車のドアが閉まる瞬間　心配で泣きそうになる。
「風邪ひかないように」って言うのが精一杯。
こりゃ成田まで見送りに行くという親が出てくるのも　わからないでもない。

自分の未知の世界へ子供が足を踏み入れていく　その後姿を
親は　ただ見送るしかない。
いつまでも　手をひいているわけにはいかないのだ。
当然　ついて行っちゃうわけにもいかない。
そうしている限り　子は親を乗り越えることが出来ないのだから。

それでも　雫と意思の疎通が難しいあたしにとって
実際　母ひとり子ひとりの状況とほとんど同じような状況なだけに
リンは　大事な大事な宝物なわけで。
もし何かあったらと考えるだけで気が狂いそう。

そして　彼女のいない我が家は広くて　しん　としている。
今日あったあれやこれやの出来事を　誰に話そう？


ああもうほんとに　考えることと　感じることは違う。


どうかどうか　無事に帰って来ますように。
行かせてよかったと　思えますように。