[読書・映画・ドラマ　感想]の記事一覧

age35

最近、貧血っぽくて、ちょっと気持ち、休み休み・・・。そのくせ、少し元気だと調子に乗って１時間サイクリングしたりして０か１００か、みたいなエネルギーの使い方してたわ。朝、子どもにお弁当を持たせて、幼稚園バスを見送り、バスママ友とおしゃべりし、帰宅して家事をしたりお茶したりしてまた決まった時間にはチビ介を迎えに行き・・・・そんな、毎日毎日毎日、ひたすら同じことの繰り返しなのに、なんともいえず、幸せだなぁと思う。貧血で辛い時は、自分を元気付けるためにモスとかに行ってしまう。不経済だけど、外でコーヒーを飲んで生き返る。ダー介は「それがいい、それでいいよ」と言ってくれる。ありがたい・・・。ダー介は、徹夜続きだし、本当に激務。２４日の日曜日はダー介の誕生日だったけれど、夕方から仕事に行き、帰ってきたのは翌日の月曜すら終わってしまうような真夜中・・・でも、火曜も水曜も毎日真夜中帰宅。あまりに気の毒なので、ダー介の好きなウィスキーを購入。（安いやつだけど。笑）私はお酒には詳しくないから、考えてみたら、ダー介の好きなお酒すらよくわからないでいる。少しダー介のために勉強しようとダー介が好きな「Barレモンハート」というマンガを読んでいる。↓お酒のウンチクいっぱいのマンガ。で、心がほっこり温まる感じ。で、このマンガを読むと異様に酒屋に行きたくなり（笑）３日連続、ウィスキー、日本酒、ウィスキ、と買ってしまった。どれも安いんだけど。安いなりに選んでみた・・・。でも一気に買うと出費ではあるよね。自分が好きなワインは買わなかった。エライ！（←褒めさせてね。）３日連続、酒瓶を持って帰宅するとなんかとんでもなく中毒な主婦みたいだよね～。でも、最近思うのは、５０歳、６０歳になった時、夫婦がお互いにオジサンオバサンになった時、二人で飲みに行ったり晩酌したりする夫婦でいたいなーと思う。なんて思うのは・・・・。今週、再放送の「age35」が最終回だった。紫門ふみ原作のドラマ！リアルタイムでやっていた頃から大好きで、再放送も何度となく見てきたけれど。自分が３０歳になり、家族を持ってから見ると又違う。前から好きなドラマではあったけれど、今回が一番ハマった。メモをとろうと思うくらいのセリフがたくさんあった。最終回は泣いてしまった。家族、愛、何を大事にして、どう生きるか・・・。自らも、考えてしまった。妻、夫、愛人、子ども・・・いろんな立場から色んなことを考えて。最終的には「愛したい相手」、「愛さずにはいられない相手」、「愛さないといけない相手」「愛してはいけない相手」・・・・・誰を愛するか？じゃないんだろうね。「愛する」なんだよね。精一杯ごまかしなく愛していけばよいのかな、と思った。ごまかそうとするからややこしくなるんだよね。ごまかそうとすると「こたえてちょーだい！」の再現ドラマみたくなる（笑）。これ、不倫擁護じゃないし、別に、age65の義父を許容したとかそういうわけじゃなくてね。まぁ、義父に関しては、許すとか許さないとかそういう次元じゃないし。世の中には、ただただ受け入れなければならない現実もあるというのもよくわかった。で、余談だけど。ドラマの中で、夫以外の男性（椎名桔平）と抱き合うところを夫（中井貴一）に見られて中井貴一が「いつからだ？」と妻（田中美佐子）に聞いた時の田中美佐子のセリフ。あれは、どかーんだったわ。「たぶん、生まれる前から。」すごい・・・・。それ、夫に言っちゃいますかっ！！！あの瞬間は飲んでいたコーヒーを噴出しそうになりました・・・・。でも、あぁ言われたらもう「ハイそうですか」だなぁとも思った。そして、もし、ダー介にいつかそういう人が現れて、あのシチュエーションになり、「たぶん、生まれる前から」と言われたら。その時は、もうダー介をひきとめようとは思わないだろうなぁと思った。ちなみに。「1年前から」と言われたら、「ふざけるな！」と二人ともぶっ飛ばすだろうけど。「3年前から」って言われたら、オンナの方とっつかまえて「どういうこと？」と尋問。「10年前から」って言われたら慰謝料計算始める。ちなみに、「ここ数ヶ月」とか言われたら、鼻で笑って「私が居るのにこれから覚悟をきめてお二人はお付き合いする勇気があるかしら？」と軽く脅す（笑）。で、「生まれる前から」に戻るけど。そこまで愛する人が居るのなら、それは戸籍とか家族だからとかなんの拘束力もなく、そして、もう誰のせいでもないのだろうなーと思った。浮気じゃなくてそこまで好きならね。これ、浮気していいよって日記じゃないですよ、ダー介へ（笑）。一番思ったのは。どんなに今マイホームパパで、今幸せで、今自分を愛してくれていても夫婦には何が起こるかわからない。相手も自分も愛せる人でありたいと思った。しっかり「自分」を磨いて自分に誇りを持って生きないとなぁと思った。その誇りのよりどころは家族だけじゃなくて、自分から生まれる自分の誇り、を持てるように生きようと思った。どんな35歳になっているかな。美味しいお酒を飲んでいますように！

「ポプラの秋」を読んで。（長文）

湯元香樹実さんの「ポプラの秋」を読んだ。この本を読んだのは二度目。２０代半ばに、友達が贈ってくれた本。で、すごく感動したのに、私はすぐ内容を忘れるのですっかり話の筋を忘れていた。実は、最近全く活字が頭に入らなかった。活字が、というのは違うかな・・・。必要な活字、資料、実用的なものを読むのは苦じゃないのだが気持ちを入れて読むような書物に向かえなかったというか・・・向かっても、すぐ閉じてしまうような。私のこれまでの人生で一番本を読まなかった時期が、ここ数ヶ月だと思う。「ポプラの秋」を読んだのは、ひょんなきっかけ。義母が「なにか本を貸して」というので、自分が落ち込んでいた時に救われた本という印象があったので「ポプラの秋」を本棚から取った。でも、裏表紙のあらすじを見ると「夫を失った母と娘が・・・」とあるので、慌てて引っ込めた。なんか、あの時の義母に渡すのは気が引けて。で、本棚から出して、そのまま無造作にしまっていたのを私が読んだ。ストーリーをすっかり忘れていた。そして、読み進めていくうちに、運命的にすら思えた。数ヶ月ぶりに、すーーーーっと文章が頭じゃなく心に入っていく感じ。ストーリーは、父親を事故で失った７歳の主人公の少女が、母とあるアパートで暮らし、そこでの大家さんと住人とのふれあいの日々を２８歳になった主人公が思い出していく・・という流れ。と、書くとすごくまったりしたストーリーだけど。大家さん（おばあさん）が主人公に「死んだ父親へ手紙を書いたら自分が死んだ時に届けてあげる」と持ちかけるのだ。そこで、少女は死んだ父親へ手紙を書き・・・・。物語は、２８歳の主人公がそのおばあさんのお葬式に向かうところから始まる。何度も言うが、私はすっかりストーリーを忘れていて、ラストも忘れていた。そして、今回読み終えたときに、ボロボロと涙がこぼれた。数ヶ月、つっかえていた思いが、なんとなく、ふんわりと浮いたような。１０月に義父が家出をし、義父の愛人の出産があり、義母と私はぶつかり、言い争いもし・・・そんな中、１２月に大事な友人が他界した。その１２月４日から、私は義父も義母もどうでもよくなり、（どうでも良いけれど腹はたつことが多い・・・）今自分がドーンと地の底に行かないように、とにかく明るく前向きに“ママ”をやろうと思っていた。そして、そうできたのはダー介やチビ介のおかげだと思っている。でも、「ポプラの秋」で主人公が言っていたけれど、「神様が蓋をし忘れたマンホールにうっかり落ちて大事な人が消えてしまう」ような不安がつきまとっていた。つきまとっていたというのは違うかな。よくわからない。自覚症状はあまりないのだけれど、この物語を読んで「私も蓋のないマンホールを恐れていたよ」とわかったというか。この本を読んで、別に、「不安解消！」ってわけではないし、「亡くなったＳさんはお空で見守ってくれてるのね」とは思えないしましてや「風になった」とは全然思えないのは今も同じ。私はどこかで見守ってくれる、神様みたいになったＳさんを求めてなくてお酒を一緒に飲んだり、ドライブしたり、几帳面な文字でお手紙をくれる生身の、血の通ったＳさんに会いたい。その気持ちは今も同じ。でも、矛盾していて、私はデスクに飾ってあるＳさんとの写真を見ては「今日はチビ介の入園式だよ。チビ介を守ってね」とか「チビ介中耳炎になっちゃったよー。」とか神様扱いしているから、やっぱり私は勝手だと思う。神様扱いしているくせに、風や空にいる相手みたいにしているくせに「手のひらを太陽に」を歌うと、悔しいような思いになる。Ｓさんだって、手のひらを太陽にすかしたいだろうって。だけど、「ポプラの秋」を読んだ時は、すーっと心に入ったのは。死に決着をつけなくて良いと思えたからかもしれない。別に生きる希望が描かれているわけでも、死を美しく描いているわけでもなくて、ただ、残された人間は“届けたい思い”を持っている、それでいいんだって。持って生きつづければいいんだって。生きつづければいいし、生きないといけない。うーむ。こう書いていると「ポプラの秋」を読んで、すごく前進した気もしないな。でも、急にたくさん本を読みたくなっているし、やっぱり、前進している気もする。偶然で読んだのか必然で読んだのか、わからない、そんな感じの読書だった。さいごに、Ｓさんが私にくれた手紙のレターセットに印刷されていた詩を書いておきたい。詩が印刷されているタイプのレターセット。だから作者もよくわからないのだけれど、・・・・。Ｓさんが亡くなる３年くらい前にくれた手紙。チビ介出産のお祝いの手紙なのに。「運命は時に残酷な足跡を残す・・・たくさんの笑顔の中に隠された深い傷跡がせつないほど心に響いてくる・・・私は信じていようと思う。いつかきっと痛みさえも愛の強さに変わるということを・・・“笑顔を忘れない”私たちが持っている一番素敵な愛の力なのかもしれないね」（「Travellers in dreams」というレターセットより引用）当時は、なんでこのレターセットなんだろう？って思った。自分が情けないけれど、「Ｓさん、煮詰まっているなぁ」くらいにしか思えなかった。今はこの詩が、いつも私を励ましてくれたＳさんが、亡くなってもなお私が笑顔で頑張れるように残してくれたように思える。でも、なんで、あの３年前にこのレターセットだったんだろう。結果的にはこの詩が私を励ましたけれど、当時のＳさんはそのつもりじゃなかったよね？３年前はＳさんは自分の死を意識してなかったと思う。この詩の「痛み、傷跡」はＳさんの病気の治療の傷跡でそれでも笑顔で生きようとしているＳさんの意思表示だと思う。あの頃から、Ｓさんが自分が亡くなることを考えていたとは思えないし思いたくない。でも、わからない。思いたくないのは私のエゴかな。わからない。あの時も死の予感と戦っていた？それは辛い。けど、今は、この詩はまぎれもなく、「笑顔で生きなさい」というＳさんのメッセージ。笑顔で生きようと思う。そして、私も、手紙を書こうかな。そうそう、前進、といえるかどうかわからないけど。「ポプラの木」を読んでから、ちょっと、のんびりぐうたらする時間を持てるようになった。それって、「蓋のないマンホール」におびえなくなった証で進歩と言えないかな？なんて、お掃除も片付けもさぼるようになったこの頃の自分への言い訳かな？（笑）でも、のんびり時間をくれてありがとう。「ポプラの木」とＳさん！

「流れる星は生きている」

楽天のお友達のぴぴんがさんが紹介されていた本、藤原ていさんの「流れる星は生きている」を読んだ。昨日家に届き、家事の合間に一気に読み、読み終わったのは今朝の４時半。この本は、藤原ていさん（作家新田次郎氏の妻、藤原正彦氏の母親）が、戦後満州から三人の子を連れて、日本に引き揚げるまでの手記。それはそれは過酷な状況で、いつ死ぬかわからない、いつ子どもたちが死ぬかもしれない、そういう毎日であった。そして、夫はシベリアに抑留され、生死すらわからない状況。この本を読んでいると、まず感じたことが、何一つ美化されていない本当に事実を、事実のままに、藤原ていさんが感じた感想もありのままに描かれている、ということ。そこが、一番私の胸に響いたかもしれない。「そうだろうな」と。事実として、ぐっと胸に突き刺さった。裸足で過酷な山や川を子どもを連れて歩き、足が化膿してボロボロになりながら、死にもの狂いで３８度線を越え、やっと引き揚げ船に乗れた時の描写。「私には別に涙を流すような感情は湧き出てこなかった。静かに右足につけていた牛の草鞋と左足にくくりつけてある草履を解いてぽんぽんと海へ放りこんでやった」なんと正直な思いだろう、描写だろう、そして、それこそ本当に本当のあの状況下の藤原さんを物語っていると思った。この手記の中では、共に過ごした同じ日本人のことなどもありのまま描かれている。協力より裏切り、思いやりよりも恨みねたみ、そういったことが描かれているのも事実。これを読んだ時、私は祖母を思い出した。そして、祖父。私の祖父はシベリアで捕虜になり、シベリアの地で亡くなった。私の父親は自分の父親と会ったことがない。父が祖母のお腹に居る時に、祖父は亡くなった。祖母は３人の子どもを必死で育てた。そして、今も生きている。祖母はよく戦争の話をする。その話は、主にうらみごと。意地悪されたことや、苦労話ばかり。だから、私の母はそんな姑（私の祖母）の話を嫌う。私の父は、見たこととのない父親をどう思っているのか、想像も出来ないが自分の母親の戦争の話が大嫌いなようだ。私はおばあちゃんっ子だったので、小学生の頃は素直に祖母の話を聞いていたし、学校の先生に頼まれて、祖母の話をテープに録音して、戦争体験の話として小学校でクラスで聞いたこともあった。祖母はあの東京大空襲の時に東京に居たのだ。まだ一歳にもならない私の父をおぶって、戦火を逃げた話は何度も聞いた。父は三男で、兄二人が居るが、兄二人は疎開できたが、父はまだ乳飲み子だったので母親から離れず、一緒に東京に残っていたのだ。だから、父は戦火の中祖母におんぶされていたのだ。もちろん、父には戦争の記憶はないけれど。考えてみてれば、戦争は遠い話ではないのだ。でも、私はこの幸せな飽食日本で、戦争が遠い昔のような顔をして生きている。この本を読みながら、私は、今の自分の恵まれた環境や甘えを恥じながら、それ以上に「このとき、おじいちゃんはどうしてた？おじいちゃんは・・・」と頭の中でずっと祖父や祖母が離れなかった。本当はぴぴんがさんの紹介がこの本を紹介しているのを読み、「最近、私ったらぐうたらだし、チビ介ともケンカしたりしちゃうしここいらで自分の母親としての生き方を見直そう」と思って読んだ。しかし、読み始めたら、もはやそれは「どう生きるか」とかという思い以上に何かもっと自分が忘れていた自分の責任の重さを感じた。生きていることの責任、そして、何か焦りのようなもの。祖母の戦争の話が始まるたびに、うんざりした顔をしていた自分。「だめだめ、おばあちゃんが生きている今、ちゃんと聞かないと」そんな焦り。２年位前に祖母の家に行った時、祖母がある手紙を見せてくれた。それは、シベリアで祖父と共に過ごし、祖父の最期を知っているという人が祖母に宛ててくれた手紙だった。手紙と言うより手記だった。その時のことこまかな状況、普段の祖父がどんなであったか、祖父の様子やらを几帳面な字で書いてくださっていた。しかし、それを渡された時、目の前に父が居て、父が少しいらだった顔をしていたので、思わず、私は軽く読んでしまった。まるで、熟読することが父に申し訳ないみたいに。とても几帳面な字で、地図まであり、そして、あまりにも細かい描写ですぐに読みきれないというのもあった。今はそれをしっかり読みたい。そして、祖父がどんな状況で、どう過ごしていたのか、きちんと可能な限り知りたいと思った。知る責任がある気がしたのだ。その手紙を下さった人は、どんな気持ちでそれを書いたのだろうか？おそらく、生きて還った人間として、周囲から課せられるでもないのに自身で「伝える責任」を重く感じたのではないだろうか？祖父や、祖父と共に過ごした人、祖母や、祖母のような立場の人間の人たちの思いと全く違う思いで戦後を生きている私たちがいる。同じ日本に生まれ、同じ「戦後という今」を生きていて、現在同じ空気を吸っているのにこの大きな隔たり。平行線のように、違うラインで生きているような。もちろん、そこが本当の意味で、合流することは難しいのだとは思うけれど、それを当たり前に思って平行線の幅を広いままにしていたらいつか、とりかえしのつかない後悔と過ちを人間は繰り返してしまうのかもしれない。自分たちの知らない戦争、日本、戦後、を知ろう、理解しようとする責任はあるのだと思った。余談になるが。私の祖母は辰年生まれ。私の父は申年生まれ。私は辰年生まれ（祖母と６０歳違い）、私の息子（チビ介）は申年生まれ（私の父と６０歳違い）。祖母が父を産んだのは私がチビ介が産んだのと同じ年齢。あー、そうか、と思った。私がチビ介を連れてダー介と一緒に祖母を訪れるたびに祖母が泣く。もともと戦争の話はよくする祖母だったけれど、チビ介とダー介を連れて行くようになってから、それまでとまた違う話をするのだ。「時代が時代なら、私とおとーさんも・・・」と言って泣いた。私とダー介を自分と自分の夫に重ねていたのだろう。そして、キレイな服を着て、真新しいオモチャをいつも持っているチビ介と私の父の子ども時代を重ねていたのだろう。祖母はダー介を見るたびに、「イイ男だねー、おじいちゃんもイイ男だったんだよ」と言う。（それまで、チビ介を連れて行くまでは特にダー介をイイ男とか言わなかったし、ダー介と自分の夫を重ねることもなかった。）私とダー介とチビ介の、平和で幸せそうな姿はあと６０年後に生まれていれば、そのまま自分たちの姿だったと、思わずにはいられなかったのだろう。それは私にも言えること。６０年前に生まれていれば、私が乳飲み子のチビ介を背負って戦火を逃げていたのだ。これまた余談で、偶然なのだけれど。私とダー介が新婚時代に住んでいたのは東京の大田区。なんのゆかりもないのだけれど、当時の職場に通いやすい沿線という理由で新婚の新居を決めた。しかし、戦時中祖母が住んでいたのも大田区だった。何か、縁と言うか、戦争が遠くない、自分とつながっている現実の歴史と感じる。祖父の仏壇の遺影は、軍服を着ている若い青年。若くても、ずっと「おじいちゃん」と声をかけて手を合わせていた。今もそうだけれど、ここ数年「あ」と思った。遺影のおじいちゃんがダー介と同い年、ついには私より年下になってしまったのだ。この若い青年が、３人の子どもを生み、遠いシベリアの地で子どもの顔を見ないまま亡くなったのだ。おじいちゃん、だけれど、遺影を見ていると私の同世代のすぐ隣の人のようにも思える。何かを伝えたいはずの、私の祖先、ルーツ。そんなことを、本を読んで、ぐるぐる考えていた。＊一番上の写真は昨年夏、祖母を訪れた時のチビ介と祖母。

「博士の愛した数式」の思い出

今日から映画「博士の愛した数式」公開。この作品は、原作を読み、思い入れがある作品。原作はチビ介がお腹でだいぶ大きくなった冬に読んだ。小川洋子さんの本は好きだし、何よりも、表紙の男の子の絵に惹かれた。だからハードカバーを買った。表紙の男の子を、お腹の中のチビ介に重ねた。その頃、お腹の中の子どもは男の子とわかった直後だったから。ストーリーは事故で記憶障害を持った老数学博士と博士の家の家政婦として雇われた女性とその息子のお話。博士は事故に遭ってから、８０分の記憶しか持たない。８０分のビデオテープに録画するような記憶の仕組みで、８０分たつと記憶の蓄積が出来ず、８０分前の記憶がなくなる。つまり、毎日初対面、８０分毎に初対面になる。この作品では博士と少年（その頭の形が√に似ているので、博士にはルートと呼ばれている）の言葉のやりとりがとても温かい。博士は偏屈な性格でもあるけれど、子どもに対しては無条件に優しい。ルートには深い、深い、愛情を注ぐ。ルートも、そんな博士の愛情にこたえるかのように子どもなりに必死に博士を慈しむ。博士の記憶の仕組みを理解した上で、博士の心を傷つけないようにするルートのそんな優しさ、博士とルートを見守るルートの母親のやりとりが温かかった。すごく良い作品で、ダー介に「読んでね」と渡した。私は当時マタニティー記録をつけていて、「あなたがおなかにいたときに読んだ本」という項目にすでにいくつか記録をしていて、もう書く項目がなかったので他の１冊を修正液で消してまで「博士の愛した数式」を記録した。そこには妊婦の私が「ルートみたいな少年になってほしいな」と書いていた。昨年、チビ介が１歳になってから読み返した。再読するとまた心が温かくなった。そして本にはさまれたメモを発見。私がダー介に書いたメモ。チビ介を出産して私とチビ介がまだ退院していない時にダー介はこの本を読んでいた。メモは私の字で「オムツとおっぱい、授乳室にいくね。１１時１５分。３０分ほど戻らないよ。棚にイチゴとシュークリームあるから食べていいよ！」と。ダー介がお見舞いに来てくれる日に私が病室に置手紙をしたものだ。その「星の王子様」のメモ用紙にあの頃の自分を思い出した。ママになりたての私と小さな小さな産着にくるまったチビ介・・・さて、来月にはチビ介は２歳。ルートみたいな少年に育つかな？そう思った時、気づいた。育つかな？というか、育てるかな？であるのよね。数式って難しいようだけれど博士が解説するとすごく美しい。「美しさが単純明快」と思った。それって人間の愛情にも言えるのかもしれない。８０分毎にルートを忘れるけれど、“出会う”たびに子どもは大切にしないといけない、というシンプルなルールでルートを慈しむ。それで良いのかもしれない。現代、「今の子どもって・・・」とか、暗い話題が多いし、実際とんでもないイジメもあったりするけれど、単純明快なルールを先に見失ったのは大人なのかもしれない。子どもは大切にする。子どもに深い愛情を注ぐ。子どものすぐ側にいる私たちに子どもの未来ってかかってるのだろうな。美しい数式のように、子どもに深い愛情を注ぐ＝子どもがルートみたいになる。ルートみたいっていうのは、人の気持ちを大切にできるということで。愛情も単純明快なルール。でも、数式と似てるよね。解くとすごくキレイなんだけど、一見とても難しく見える。難解な数式に見える。愛情もおんなじ。難しく見えるし、実際難しいこともたくさんある。でもね。いっぱいいっぱい愛情をそそぐ。それでいいのかもしれない。※写真は「きもっち」ＮＨＫの「きもっち」というキャラクターを見て、ダー介が昨日紙コップを買ってマジックで顔を書いて作ってくれた。上手く出来てるでしょ！「ぼく、きもっち。きょうは、チビ介くんのうちにきたんだ。え？うしろにうつってるひと？その人はチビ介くんのパパだよ」とかしゃべりそうでしょ！

「流星ワゴン」を読んで。

引越しでバタバタしていた頃、ある晩、ダー介が一言。「あき、忙しいよね、でもね、ちょっとお願いがあるんだけど」ドキっとした。何言われるの？と。ダメ出しかと思った。心当たり多すぎて。続いたダー介の言葉は「忙しいと思うけど、重松清の『流星ワゴン』読んでみて」だった。なんだー。そんなことかー。ホっとしたまま、忙しさにかまけて読まずにいた。その「流星ワゴン」を昨日読み終えた。正確には今朝５時１９分に読み終えた。時計見たら朝だった・・・「流星ワゴン」のストーリーは。主人公が人生に疲れきっているところから始まる。子どもは引きこもり家庭内暴力、自分はリストラされ、妻には離婚をせがまれ、仲の悪い実父は病気でいつ死ぬかもわからない。そんなある晩、主人公はある親子の乗る一台のワゴン車に乗せられる。親子は５年前に交通事故で亡くなっていた親子。そしてワゴンで不思議なドライブを続ける中、主人公自身の過去に連れて行かれる。その過去は自身の人生のターニングポイントとなった時点だった。しかし、その当時の自分はその時がターニングポイントとも気づいていない。そんな過去に連れて行かれ、主人公はは魂だけ“崩壊した自分たちの未来”を知る現在のまま「過去の自分」となる。未来を知りながら、最初は過去の自分と同じ行動を繰り返す主人公。しかし、ワゴンでのドライブ、ターニングポイントの過去への移動（その時点は自分では選べない）を繰り返しながら、主人公はその当時は知りえなかった自分の無神経な言動、子どもや妻の心の動き、苦しみ、葛藤や秘密を知るのだった。そして、いつしか未来を変えたいと思い始める。そして努力をする。しかし、未来の「結果」は変えることが出来ない。そんな中、主人公は、「結果」を変えられないと知りながらも過去の妻や子どもと真剣に向き合い、未来を変えようとたたかう。はたして、ドライブが終わり、ワゴンから降りたとき主人公を待っていた人生とは・・・このストーリーでは、主人公が親としての自分の過去を振り返り、後悔し、見つめ直すと同時に、ドライブの中で自分と同い年の父親とふれあい、息子としての自分を見つめ直す。親と子、家族、人生とは？を深く考えさせられる作品だ。読み終えた時、自然と涙が流れた。途中は切なすぎて、悲しくて、悔しかった。自分の過去をどんなに悔やんでも、その時に戻ってやり直すことは出来ない。あまりにも厳しい現実だ。でも、それが現実。人生の一瞬の怖さ、を私はこの作品を読む前から考えてしまうことがある。２０歳になる直前の夏から、そんなことを考えるようになっていた。幸せすぎる今でも、あまりにチビ介が愛しくて、かわいくて、抱いていると体温が温かくて、小さな呼吸が私には重い鼓動で…そんな時、「どうかこの幸せが一瞬で消えたりしませんように」と思ってしまう。そうした自分の思いも重なり、この作品は読んでいて何度も辛くなった。ただ、この作品をダー介という自分の夫が読み、私に勧めてくれたことに救いを感じた。私たちに出来ることというのはなんだろう？私はそばに居る人間の、心の動きや、悲しみや、辛さに寄り添える人でありたいと思った。表に見えないそういうひだひだに気づける自分でありたい。そして、自分自身のそんな思いを流さずに真っ向から向き合える自分でありたいと思った。かかとの角質みたいなものかね・・・。お化粧して、笑顔で歩いている限りはたからは全然気づかれないかかとだけど、お手入れおこたるとカチンコチンに固まっている。（実はコレつい最近の私なんだけど。）カサカサして、さわると痛いくらいになっている。そんな感じ。自分の、そして家族の、心の角質もかかとの角質も、ちゃんとすべすべにしてあげたいなぁ。ラストではないが私にとって一番印象に残ったシーン。ワゴンの運転手である５年前に家族ドライブ中に交通事故で息子と一緒に亡くなった彼がこう言う。「もっと遠くまで行きたかった。健太（息子）にもっともっと遠くの景色まで見せてあげたかった」「もっともっと色んなもの見せてあげたかったなぁ・・・」と震える声でつぶやくシーン。もっと遠くの景色まで見せてあげたかった。さまざまな事故や事件で子どもを亡くした親御さんの気持ちを思う。冥福を祈る、なんて言葉ではおさまらない思い。この一言にこめられているような気がした。後悔の無い人生はきっとない。後悔を乗り越えられる強さと勇気を下さい、と神様に祈る思いである。元気に大きくなーれ、チビ介！そして今の気持ちを私が忘れませんように・・・一週間前、ＦＮＳ歌謡祭を熱く語っていた私と同一人物とは思えない日記だ（笑）写真は左から陣痛が始まり、出産前の私。お守りのぬいぐるみと共に。ぎこちないダッコをするダー介。ちいさなちいさなチビ介。病院のベッドにて。

いま会いにゆきます

昨日、念願の「いま会いにゆきます」ＤＶＤをレンタルした。本当はチビ介を寝かしつけてゆっくり見たかったのだけどチビ介、なかなか寝ない。仕方ないのでチビ介が起きたまま観た。映画に出演している男の子、ゆうじ君が「ママー」と言うたびにチビ介も「ママー」と言って私にからみつく。背中やお腹にくっつくのが可愛くて「起きててよかった～」なんて思ってしまった。しかも、物語の終盤でスヤスヤ寝始めた。グッジョーブ、チビ介！さて、映画の話。とっても良い映画だった。セリフのひとつひとつが心にしみこむ。ストーリーはだいたい知っていたので「泣くだろうなぁ」と思っていた。これはきっと、号泣して前見えません、っていう「ハチ公物語状態」かと思ったら、そんなことはなかった。涙ぐんだけれど、それより次の展開に引き込まれる感じ。ぐっときて、そして次のシーンにひきこまれ、自分のことも色々考えて…そういう映画。号泣する暇なかった。。。いい意味で。ストーリーについてはここでは話さないけれど、私がすごく心に残ったセリフをひとつ。あの頃のように少しずつあなたに慣れていきたい。もう一度あなたを好きになっていきたい。これだ！って思った。もう一度好きになれる人。私は自慢じゃぁないが、惚れっぽいので簡単に好きになれる。でも、何度でも好きになれる人はそうそういない。つきあって別れた人に関しては、もういいです、という感じ。もう好きになることはないでしょうっ！って胸はって言えちゃう。でも、結婚して夫となった人（ダー介））のことは「もう一度好きになる」が出来る。そう思う。たとえば記憶を無くしたとしても、たとえば何かが私たち夫婦をひきさいたとしても、「もう一度」好きになれる気がする。それが彼氏と夫との違いなぁなどと思ってしまった。これはあくまでも私の場合。人によっては一度付き合って別れた人がそういう人なのかもしれない…。でも、私にとってはダー介がそういう人だなぁと思った。ダー介は違うかもしれないけれどね。（いつになく弱気）でもでも、もう一つ言えることは、私は何度生まれ変わってもチビ介のママになりたいなぁ。チビ介を産みたい。育てたい。そして、私、チビ介、ダー介という家族は「絶対」だと思った。ダー介が彼女としてや妻として私をもう一度選ばないとしてもチビ介のママとしては選んでもらえる気がするな（これは自信あり）「いま会いにゆきます」、とても気に入ったので今日レンタルを返しに行った足でそのままＤＶＤ購入した。そして、また、観てしまった。なんど観てもいい！写真は昼間、レンタル屋の帰りに弁当を買う私を待つチビ介。ストーリーとのギャップがよいでしょ（笑）主婦が弁当買うな～！って感じ？ほら、チビ介の表情も厳しい感じ（笑）だって、このお店「世界一おいしいお弁当屋」って書いているんだよ。すごいよね。その大風呂敷広げる度胸が気に入った。私っぽい。おじさん、すごい気さくで良い人だったし。さて、お味は。おじさんの勇気に乾杯・・・

映画「ファミリー」

先週末、レンタルビデオ屋に行った。「いま会いにゆきます」を借りたかったけどレンタル中。たくさんあるのに全部レンタル中。そこで、ふと子どもの頃、母に観させられた「ファミリー」という映画を探した。ビデオしかなかったけどあった！先週日曜からチビ介発熱したので、昨日やっと観た。泣けた。子どもの頃母と姉と観た時も号泣した。ストーリを紹介。自分が癌であと少しの命と知った母が10人の子どもの里親を死ぬ前に自分自身で探すというストーリー。これ、実話。子どもの頃観た時は「なんて悲しい映画だろう」と思った。あまりにも悲しくて、「ね、だから家族は仲良くしなくちゃ」と言った母親に「うん、うん！」と言うしかなかった。そして20年の時が経ち、今回はまた別の感想を持った。まず、泣けたけど清々しい気持になれる映画だった。当時は母親の死と兄弟がバラバラになってしまうという悲しみでいっぱいだったけれど、今回注目したのは父親。この父親の気持を考えると痛い。このとーちゃん（←まさにとーちゃん）、情けないの。10人の子どもがいるのん飲んだくれていてアル中。おまけに痛風もち。でも妻と子どものことは心底愛している。妻が癌になり、里親を探し始めて「こどもを奪われたくない」という思いから必死に働き始める。しかし、痛風のために手が痺れて仕事でもミスして解雇。長女は父親を軽蔑し、父親に冷たくする。しかし、ラストには長女と父親、子どもと父親の心温まるシーンがある。そこが一番泣けた。この映画を私たち３人の娘に見せた母の気持ちを考えた。うちの情けないとーちゃんを大事にしろってことか？（笑）この映画の主人公の女性は長女に「家族は助け合うのよ」「パパに優しくしてね」という言葉を残す。そして、長女が妹弟に母の遺志を伝えていく。２０年前は前者の方しか私の心に残らなかったけど今回は後者が妙に胸に残った・・・・それにしても、この母親はすごい。でもわかる気がする。自分の寿命を知った時、子どものために何ができるか、を考えた母親。うん、うん。私もダー介もお昼寝するチビを間にして泣きながら映画を観た。ダー介は「ママが死んでもパパはがんばるよぉチビ介のことはパパが育てるよぉ」と言っていた。はいはい。この映画、オススメです。私も将来娘が出来たらみせようかな～。写真は長電話するチビ介。意味不明な言葉だけどずーーーっとしゃべってた。誰に似たのかおしゃべりだ・・・・