|
カテゴリ:日常
仕事終わりに、祖母と従姉妹に買い物に行きたいので連れて行ってほしいとせがまれる。聞けば従姉妹は今夏に着る浴衣が欲しいので祖母に見立ててもらうのだとか。
和装の類は嫌いではないので、興味をそそられて祖母の馴染みの店について(というか、連れて)行く。 私は浴衣を着る機会など皆無なのでどうせ自分が自分の為に選ぶことなどないと、店の人と一緒に目につく生地を取り上げて従姉妹の浴衣の候補を拾い上げていく役に徹していたのだが、いくつか見ていくうちにどうしてもひとつだけ目を惹くものがあってその場で着付けてみてもらった。 白い生地に茶鼠の細い縦の線がいくつか引いてあり、やや大ぶりの金魚草の花が紅赤や臙脂の濃淡をつけて描いてある。やはり自分で選んだ表は躑躅色と牡丹色・裏は菖蒲色の帯と併せると絶品で、そのまま鏡の前で舞妓さんのように腰を落としてしなを作って踊ったりして遊んでいたのだが、試着したところを見せると祖母の方が惚れ込んでしまい「孫娘には全員、喪服・留袖・訪問着・浴衣を拵えて揃えたのにくうきにはまだ浴衣を買っていない」と浴衣も帯も、どさくさ紛れに私が併せた巾着もすべて買い上げてしまった。 従姉妹も勿論自分の気に入った浴衣を買ったのだが、私のものは生地の織りも糸も特殊で従姉妹のものの倍以上の値段だという。ちょっと眩暈がした。 祖母と従姉妹は「まるでくうきに誂えた様だ」と褒めてくれるが、さて。 相変わらず私には浴衣を着て出る用事がない。 しかし私は何故に祖母が孫娘たちに着物の類を揃える事に執着するのか知っているので、いつか意地でも理由を作って祖母に浴衣を着付けてもらうのだと思う。そして持てる気力を振り絞ってさも嬉しそうに笑って魅せて、はしゃいで出掛けて行くのだ。 祖母は私のその笑顔と背中を胸に、いつか逝くのだから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年06月21日 20時00分44秒
コメント(0) | コメントを書く
[日常] カテゴリの最新記事
|
|