楽しい未来のために

せっかく市の大会を準優勝で上の大会に
勝ち進んだというのに１プレーもいいところを
見る事が出来ずに大敗してしまいました。

敗因は、実力の差とかいう以前の問題。
１週間前の練習試合でチームが崩壊してしまい。
それを立て直す事ができないぎくしゃくしたまま
今回の試合に望む事になったからです。

エースのN。チーム１バレーが上手。自分の同じレベルに
みんなが追いつけないのがイラつくらしく、
自分の失敗も人のせい
（俺がいいアックを打てないのはセッターのトスが下手とか）
そして人が失敗すれば、試合中であっても責め立てる。

他の２年生は、怖くていいなり、言われるなり。
さすがに１年の殿には、ないみたいだ。

で、１週間前の練習試合中、失敗した一人の子を
怒鳴ってせめて泣かした。らしい・・・
（私はその日見に行ってたけどお昼ごはんの調達に出ていてその場を見ていない）

私が戻ってきたときには、みんな失敗を恐れ
次は自分がやられるんじゃないかとびくびくしていて
試合にならなかった。

顧問にしこたま怒られふてくされてお昼ごはんに突入。
反省したのか一人いち早く食べ終わり練習に体育館に行った。
私もまじって楽しくお昼ごはんを食べて食後に林檎なんぞ
ほおばってまどろんでいると

尋常じゃないNが凄い勢いで一人の子の前に立った。
（どうやら食べ終わったら一緒に練習しようと約束していたらしい）
酷いいい方で責めて勢いおさまらず向かって行ったのでヤバいと思い
私が間に入り、Nにかなり強く注意した。

Nは、顔色が変わりその場から居なくなった。

昼ごはんの片づけをして体育館に戻るとNが
行方不明になっており、キャプテンが慌てふためいていた。
探しに行こうとしていたが、私は探さなくていい。
もう昼からの試合が始まるから準備をしなさい
最悪、５人で試合にでる覚悟を決めなさいと言った。
顧問も同じ事を言ったようだ。

あっ、この日休みの子が多くて６人しか来てなかったの。
一人でも怪我したりしたらどうしようって言ってた状態。

午後の試合開始まであと10分くらいだったろうか。
私は体育館を出て必死にNを探した。
絶対に私が来てくれるのを、私が探しだしてくれるのを
待ってると思ったから。

小学校からの長い付き合いで小さい時からNを知ってる。
両親が忙しく、またお母さんがあまり子供に目を向けていないために
学童でもトラブル続きで何度も何度も問題が起こった。
Nは学年は１つ違うけど唯一殿に心許し
また、私を慕ってくれていた。母親に甘えられない分
私に甘えていたのだと思う。

何度も「私は、Nが好きやけ言うんよ。」と言って
しかり、でもNをかばってきた。Nの味方でいた。

Nにとっては、私は自分の気持ちをわかってくれる唯一の大人だったのだろう。
その私から頭ごなしにガツンと言われた事はかなり応えたのだろう。

でも、急を要した。いまにもチームメイトに殴りかかりそうだったから。
手を出したらお終い。気の弱い他のメンバーは、
今後一緒にプレーはできなくなると思ったから。

そして、居なくなったNをどうしても試合開始までに探しだして
チームに戻さないと、今度はNがもう戻れなくなってしまう。
今のNの唯一の居場所が無くなってしまう。

私なら何処に行く？Nならどこで待ってる？
見つけて欲しいから絶対に見つかる所にいるはず。
時間がない、話す時間もいる。

走って走って、探した。みつからない。
もう一度見落としたところはないか？考えた。
ない。
思いつくとこは全て探した。

ふと最初探したところにもう一度行ってみようと
思い行ってみた。そしたら居た。
焦るあまりに物陰にいたの見えなかったのだ。

直ぐに顧問に必ず試合開始までに
連れて帰るからと連絡した。

Nはひざを抱えて泣いていた。
あんたは、エースなんやろ？みんなを５人で試合に出さすつもりね？
あんたは、みんなの所にもう戻れんでいいとおもっとるんね？

その問いにNは、うつむいたまま顔を横に振った。
そして手を取り戻るよと言うと立ち上がった。

みんなに謝りなさいと言ったが謝る事もできなかった。
それなのにみんなは、誰一人責めることもせずに
Nを何事もなかったかのように受け入れてくれた。

その後の試合は、Nは努めて明るく頑張り
そうすることでみんなに報いようとしていた。

次の日、私は学校に用事があった。
Nに会いたい
冷静になったNともう一度ちゃんと話しておかないと
いけないと思った。

車から降りようとしたら「おばちゃ～ん」とNが手を振りながら
走って私のところに来た。

私が止めなければ自分は殴ってしまっていた。
自分は試合中も（あれでも）精いっぱい我慢していて
先生にも怒られて反省してご飯は早く食べて練習しようと
思っていたのにのに約束してた子が遅くて頭にきてた。
私に怒られて気もちの糸がプツンと
切れてしまったこと。
私がもし探しに来なければ、あのまま帰れなかった事。
等等話してくれた。

気持ちはわかるけど、それは全部Nの我儘。
自分の事しか考えていない。みんなの気持ちを考えなさい。
誰も責めずに迎え入れた事に感謝して
大会には挑みなさい。
ごめんねって言えないなら、
エースとしての役目をきちんと果たす事で自分の気持ちを表しなさい。

Nは反省していて私の言葉も素直に聞き入れた。
この日にNと話さなければ修学旅行に行ってしまい
次に会うのは試合当日となってしまうので
こうやって話せてよかったと思った。

大会の日、修学旅行の次の日とあって
4日も練習できないで不調＆疲れていた2年生。
特にセッターのボールが乱れ全くまともなトスが上がらなかった。

Nは、エースとしての役目を果たそうとしていたのに
トスが上がらない。
イライラいて不機嫌になり、失敗した人を責め出し
チームはまた乱れ
なす術もなく試合が終わった。
こんな試合をするために休みなく頑張ってきたわけじゃない。
嫌な思いをするためにバレーをしてるのではない。

ちゃんと腹を割って話すべきだ。
自分たちはどんなチームになりたいか。
そのためにどうすればいいか。

殿が言った。
あんなのバレーじゃない。
面白くなかった。
きつい練習頑張ってもあんな試合なら意味がない。と。

その通り、きっとみんなそう思ってる。
一人ひとりが努力して上手くなっても意味がない。

Nは、どうするのだろう。
キャプテンはどうするのだろう。
みんなはどうするのだろう。
顧問はどうするのだろう。

今の状態でする練習は何も意味もない。
このチームがまとまる日はいつか来るのだろうか。
こういう争いごとを嫌う殿は
なんとかしたいと思っている。
ただ先輩間のことはなかなか口が出せないのが現状。

楽しい部活だった。
引退するときにそう感じる事が出来るように
なって欲しいと思う。