楽しい未来のために

1年半前、ただチームで一番背が高いというだけで、
一人先輩の中にレギュラーとして入れてもらっていて
人より少し経験を積んだと言うだけでチームのエースとなった殿。

エースとは名ばかりで、チーム内では一番上手いかもしれないが
他チームのエースと比べると雲泥の差。
早く上手くなりたい、自分がチームを引っ張って行かなきゃ
そんな気持ちとは裏腹に、顧問は練習に来ない、土日は部活が休み
誰も教えてくれる人は居ない、そんな八方ふさがりの殿に
一筋の光が見えてきたのは、他中学（K中学）の夜練習への参加だった。

10人程度の子供たちに、バリバリのコーチが3人。
とても恵まれた環境だ。

この夜練に参加していなければ殿はこれほど上達しなかったし
バレーで高校に行きたいということも無かっただろうと
昨日も殿と話した。

K中のコーチや保護者はこの武者修行の申し出を
快く受け入れてくれた。
よその中学校に意を決して練習に来るんなんて根性がある。
K中の子たちにも自分たちがいかに恵まれた環境にいるのかに気がついて
このくらいのやる気を持ってくれたらいいのにと言って下さったが
異例のこの事態をなかなか受け入れることができなかったのはK中の子供たち。

不満をもろに態度に表し、拒否してるのがはたから見ても
よくわかった。一緒にコート内で教えてもらっていた殿は
その何倍もそれを肌で感じていただろう。

そりゃあそうだ。県大会予選の同地区なのだから
なぜ敵中学のエースに教えなきゃいけないんだ。
上手くなったら自分たちが県大会にいけなくなるかもしれないのに…
そう思うのは当然のことだ。

K中の子供たちは、コーチや保護者に不満を言って
受け入れてもいいという子と絶対に受け入れたくない子がでて
チームがバラバラになりそうになり話し合いが行われたりした。
よそのチームをかき乱すことになり本当に申し訳ない事をしたと
今でも思ってる。
そしてK中の子供たち、保護者、コーチには感謝の言葉を
いくら述べても言い表せないくらい感謝している。

今では、お手本というような立場でK中の1･2年生の指導を
コーチと一緒にしながら、殿も技術の向上のために練習参加させて
もらっている。

殿の中学卒業と同時にこのK中での練習も来週で卒業となる。
自分の中学の部活が終わってからのK中の夜練参加。
殿の体力的にもきつかったと思うがフルタイムで仕事をしている
私も1年半よく送迎したと思う。
（遠方の為、練習中に一旦家に帰る時間も無いので約2時間半の練習を
ずっと見学し夜練の日は、帰宅が10時になる）
でもホッとするどころか、K中のお母さんたちとも会えなくなるのか
と思うとすごく寂しい。

昨夜、このK中のコーチの一人が現役選手として所属する
大人のクラブチームの練習へのお誘いがありました。
県代表として全国大会に出場するような強いチームです。
殿が高校でバレーをするうえにも必ず役に立つでしょう。

教えてくれる人がいなかった中学部活を考えたら
教えてくれるという人は、なんともありがたい存在で
望んでもなかなか出合えないもの。

二つ返事で行きたかったのですが、昨日は殿が家庭教師の日で
泣く泣くお断りしました。
行けるときだけでも来たらいいよと言ってもらい。
次行ける時は是非参加させてもらいたいと思っています。

というのも、大人の男性のバレーのクラブチームって
なかなか無くて、探していたのです。
これから殿は、高校→大学を希望してますが大学に行きたい
一番の理由は、大学（少しでも長く）でもバレーをしたいから。

附属高校とはいえ成績面でもしかしたら大学進学は厳しいかもしれない。
バレーをする受け皿があれば、大好きな調理の道へ進む選択肢も
広がるかもしれない、先の事は分からないけど
今の殿にとってバレーなしの生活は考えられない。
バレーがあるから他の事も頑張れる。
ずっとバレーをしたいという望みが叶うかもしれない。

そう考えるとこのお誘いは殿にとってとても幸せな事です。
誰が見ても分かるくらいバレーが大好きな殿をみて
コーチが声をかけて下さったのだと思います。

殿の未来への新しい扉がまた一つ開いたと感じました。
殿はいつも厳しい現状に立たされても
想像もしない誰かが手を差し伸べてくれるというよいうな事が
起こります。きっとそういう「人」に恵まれた星の元に
生れたのだと思います。

殿に関わる全ての方に感謝の気持ちでいっぱいです。