うみ子ちゃんの毒吐き日記

　物を大事に扱う方ではない
　陶器類は使ったソバから割れていくので
　高価な物は箱のまま

　手入れもおっくうなので
　靴や洋服も安いものしかない

　それでも昨日とうとう妖怪になってしまった


　突然ウンともスンともいわなくなったので
　修理に出したのが５年程前
　購入してから既に１０年は過ぎているので
　御釈迦になったのだろうと
　業者はパンフを置いて帰った

　これの購入時、サイズのことなど考えてもいなかったので
　出費の悲しみを上回る
　コンパクトな新製品の置き場所にワクワクしながら
　パンフを食い入るように眺めた

　ないのだ

　パン捏ね機能付きのガスオーブンレンジ

　うちのには
　材料をセットしておけば
　予約でパン捏ねができ
　成形のいらない食パンなら焼き上がる機能がある

　この機能の付いたガスオーブンレンジは存在しないのだ

　取りあえず捏ね機能はあきらめるか
　それならばいっそ安い電気のオーブンレンジにかえようか・・・
　迷っていたら業者から電話

　
　持って帰って修理しようと電源入れたら・・・
　普通に使えます・・・
　何もしていないので修理代はいいです・・・

　家では業者の前でもウンともスンともいわなかったのに、
　である。

　良心的な業者はガソリン代はおろか
　掃除代も請求せず連れ戻ってきてくれた。


　そして昨日突然
　「ピーッィイ！！」と
　断末魔のような警報音をあげ
　全ての電気が消えた

　惜しみながらも
　消えない警報音に困りコンセントを抜くと
　間際の吐息のように
　少しづつ、その声が小さくなり息絶えた


　あれからも
　彼は頑張ってくれた
　もう、思い残すことはない

　
　夜半に暖め直そうとレンジが使えない不自由に
　明日の予定を再確認しつつ
　改めてコンセントを何気に入れると


　彼は「僕がいないと困るでしょ？」と
　クルクルとターンテーブルを動かし
　熱いお茶を用意してくれた


　そういえば
　最近あまりパンを焼いていない
　エスプレッソマシンを先週購入してから
　お茶を温め直すこともしなくなっていた


　道具や物達は
　使う人の思い入れが深ければ深いほど
　魂が入り妖怪に変わる


　癒し系ロボットに魂を入れるより先に
　
　うちのオーブンレンジは妖怪になった