間違い電話
留守番電話の録音に 親戚か誰かの用件を 長々と話していたおじさんがいた その向こうで あきれたように 電話を切ることを促す おばさんの声が入っていた 行く宛を失った伝言は 間違いであると教えることもできず その出来事だけが 鮮明に残っていた 家人が取った受話器が 私へとまわってきた 「はよ××とかわって!」 苛ついた老婆がの声が 耳に当てる前の受話器から聞こえる 「もしもし?」 「あのな、今度の日曜(にっちょう)やねんけどな」 「あのぉどちらにおかけですか?」 「え?××ちゃうのん?」 「○○ですけど・・・」 ちっとも悪いとは思っていない声で 「間違ごうたわ」と 電話は切れた 少しムッとしながらも ふと もう何十年も前の間違い電話を思い出し 電話を切るように促していたおばさんが 年をとったんじゃないかと思うと 次回の間違い電話が ちょっと楽しみになってきた。