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2009.08.28
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テーマ:徒然日記(23461)
カテゴリ:音楽

井上陽水の特集が教育テレビで4夜連続で放送されている。

昨日は3夜目だったのだが面白い放送だった。

場面場面で多くのアーティストが陽水を語るシーンが入るのだが、

小田和正がリスペクトを込めた表現での「彼は何処への到達をも望

んでいない」という言葉を使った。そして陽水自身が「白黒がはっ

きりつかないグレーの領域での表現」について語り、それを「いい

かげん」という言葉にした。

私が陽水に抱いていた「素敵だが解かんない!」イメージを掴む切っ

掛けになる予感を感じると共に、前回の日記に書き、最近考える事

の多くなったポストモダン的流れとしての人間の恣意性に思いが及

んだ。

 

中学の頃にギターを手にした。下手なビートルズバンドを組んでみ

たり、拓郎を弾き語りしたりして、在りがちに「ミュージシャンに

なれるかも」的なボケをカマシテいたのだが中学3年の時に彼女か

ら借りた「氷の世界」にぶっ飛んだ!。

かぶとむしは壊れてしまった!!

陽水的としか表現できない詩世界と曲に、あの声が相まって、その

情緒的という言葉も当て嵌まらず、文学的というでもなく、だから

と言って奇を衒う愚かさを微塵も感じさせる事無く脳髄に届く彼の

美意識の様なものの前に私は恐れ入り、恥じ入った。以降、ギター

を弾く事は稀になったし、歌はカラオケでがなる程度のものだ。そ

れ以来、活動休止中も含めて陽水はずっと聞いているのだが、

「素敵だが解かんない」状態のまま現在に至っていた。彼の音楽性、

芸術性を解かった気になる事自体が勘違いなのだと感じていたし、

彼自身も解からないんじゃないかとも思っていた。しかし、そこに

本人の意図とは無関係の恣意性の存在を想像出来る様になったの

は最近の事だ。そして「天才」という使い古された野暮ったい、言

われた本人も喜びそうも無い言葉を冠すべきはこういう状態の人間

なのだなと思った。

「意図せぬ事の可能性」「言葉を選ばぬ事での表現の可能性」

「解からぬ事をひっそりと留め置く事の可能性」・・・

論うとキリがないが、そういった聞く手側を翻弄し弄ぶ?感性は彼

の柔軟な「認識力」の成せる技なのだろうと考える。

 

陽水の存在は、近代以降の思想的空回りに似た、音楽的な「メッセー

ジ性の稚拙性と無力性」を感じ、目の当たりにした芸術家の一つの

在り様を示している様に思う。そしてその在り様を陽水自身は否定

せず、また意図的に留まってもいない。

まさしく小田和正が言う様に「何処への到達」も望まぬ、好い加減

な、恣意性に漂う怪物だ。

 

しかし、新しい何が感じ捉えられたとしても、天才の気紛れに弄ば

れる喜びを知ってしまった私はこれからも有難く詩曲を拝聴し続け

るのだろう。

他にも存在する「素敵だが解からない」ものに想いを馳せながら・・・。






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最終更新日  2009.08.28 14:07:27
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