テーマ:徒然日記(23461)
カテゴリ:科学
小学生の時に学校図書で借りて初めて読んだSF小説は、人間が考えた速さで飛べる「思考力ロケット」に乗って子供達が異星へ行く冒険SF小説だった。この話の結末は、子供達が冒険を終えて地球へ帰って来た時、出発した時から殆ど地球時間が経過していなかったというもので、巻末の解説に子供でも解る様に一般相対性原理の時間と空間の話が優しく説明されていた。
本の内容より、この巻末の解説にワクワクしたのを良く覚えている。 それを切っ掛けに少年は科学者を目指して・・・という訳には能力の関係^^;もあって行かなかったが、理解出来る範囲で読んだ科学関係の本はこれまでに結構な数になると思う。 私の様な数値的理解を伴わないサイエンスファンを「ポピュラーサイエンスファン」というらしく、結構マジョリティーな存在らしい。確かに別段理系の人間で無くとも科学分野の情報に興味のある人間は周りにも多く、特に宇宙やブラックホールに関する話題などでは結構盛り上がったりする。 書店にもポピュラーサイエンスファンをターゲットにした本・雑誌が選び切れぬ程に並んでいる。私も気になるものがある度に購入していたのだが、どうしても内容が重複するものを購入してしまうので、最近はNewtonの別冊を分野別に購入する事で済ます事にした。大判で、カラフルな写真や図を多用した解り易い内容は私のレベルにはピッタリだ。 今回取り上げた「エレガントな宇宙」もNewtonの特集から拾って来た本で、現役の物理学者ブライアン・グリーンが「ひも理論(M理論)」をポピュラーサイエンスファン向けに書き2001年に出版したものだ。 欧米では長期に渡ってベストセラーリストに名を連ねている本らしい。 著者は最先端を行く物理学者というが文才も備えた人物の様で、一般読者に何とか理解して欲しいという思いが伝わってくる。「ひも理論(M理論)」そのものと、それに関係する研究者達に対する愛?が溢れているのを感じる内容になっている。 「結果を単純で非専門的な言葉で説明できないのなら本当は理解していない」という或る物理学者の言葉を引合いに出して「ひも理論の歴史」を辿りながらこの本は本題に入って行く。何故、万物の最少構成要素が「点粒子」でなく「ひも(膜)」であるべきなのか?、一般相対性理論が語るマクロな宇宙観と量子力学が語るミクロな宇宙観の不整合は何処にあるのか?、何故「ひも理論(M理論)」が「現代科学の聖杯となりうる論理」でありうるのかといったものを研究者の時々の成果をトピックとして織り交ぜながら詳細に解説していく。 現在最も有力な「万物の理論」と目されながら、現代科学では実証不可能なこの理論が破綻する可能性も謙虚に認めた上で可能性を語る筆者の人間性には好感がもてる。 私は何とか文字面を追う事が出来ただけで、到底この本の内容を理解出来たとは言い難いが、ワクワク感だけは小学校の時に読んだSF小説の感覚を呼び起こすものであった。 私の様にポピュラーサイエンスに留まらない「科学を志す若者」を啓蒙する為にも、現在著者のブライアン・グリーンが行っている各種メディアでの広報的活動にはこれからも注目して行きたいと思う。 この本が書かれた時点から10年以上経過しているが、「M理論」は大きな進展を見せてはいないという専門家の声がある。昨年ヒッグス素粒子の発見が話題になった時、僅かながら其れが「超対称性物質」の可能性もあったらしく、実はそちらであった方が「M理論的」には大発見であったのかもしれない。 あらゆる事象を一つの式で記述しようとする試みは成し得るのだろうか? 出来たとして、それは我々の住む宇宙に並行して存在するするかもしれない多くの宇宙にも適用されるものなのだろうか? 一つの式で記述する事で齎される我々の宇宙観や人間観の変容はどの様なものであるのだろうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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