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テーマ:たわごと(26778)
カテゴリ:ただの物語
本当はこれは入れるべきじゃないし、書くべきじゃないって思ってました。
きっと私が創造した物語だから。 でもなぜか今日もボーっと考えて(ダウンロードされて)いたので、まあ、書けってことよねと思い書くことにしました。 責任は取れません。 これはただの物語です。 さらっと流してくださいね♪ ****** 「あの子はもう降りていったのですね?」 そう声をかけられてミカエルは振り返った。 そしてそこに居る者を確認すると渋面を作った。 「ああ、せっかく用意したものも受け取らずにな」 そう言って彼は渡せなかった短剣を彼─ザドキエル─に見せた。 短剣はザドキエルを象徴するもの。 そう決めたのは人間だが、実はそれもあながちウソではなかった。 「あの子は聡いからきっとそれが私が用意したものだと気づいたのでしょうね」 諦めの微笑みを浮かべるザドキエルにますますミカエルの顔は渋くなった。 確かにそうなのかもしれない。 餞別を与えるといったとたんに要らないと言いきった。 他の子にも与えているからと言っても頑なに受け取らないどころか、ミカエルに預けておくと言い切ったあの子。 あの子。 彼らがそう言っているのはザドキエルのかけらを擁した天使の子の一人。 ここしばらく何人もの天使が人間を経験すべく、下の次元に降りていった。 そしてあの子もその中に入っていた。 「でも逆にそれでよかったのかもしれません。 あの子の中のかけらは大き過ぎて、只でさえ人の中でも浮いてしまうほどの影響を与えてしまうだろうから。 人の世は時には闇に染まり、時には光に染まりながら経験を積んでいく場ですから、光が大き過ぎればまた害にしかならないでしょう。 でもあの子はそれも覚悟の上で降りたのでしょうから、それを邪魔するものは不要なのかもしれません」 そうザドキエルが言うのを聞きながら、それでもミカエルは納得できなかった。 一時期、天界では大天使のかけらを使用して、新しいタイプの天使ができるかの実験がなされていた。 ある子にはまんべんなく大天使のかけらを入れ、ある子には大きさの違うものを入れて誕生させた。 そうすることによってどんな特性を持って育つのか見極めようとしたのだ。 そんな中であの子には純粋にザドキエルのかけらしか入れていなかった。 しかもそれはもしかしたら天使の子ではなくただ純粋に分身にしかならないかもしれない大きさだった。 実際に他の子は分身にしかならず、すぐにその大天使に吸収されてしまった。 けれどあの子はちゃんと別の天使として生まれてきた。 掛け合わせた生まれたての魂のかけらの分量が多かったのか、ほかに何か要因があったのかはよくわかっていない。 しかしそのことを大天使たちは喜び、愛おしく思っていたのだった。 そんなあの子に一つの傷をつけた。 それさえも計画だったのかはミカエルは知らない。 それによりザドキエルはあの子の傍には寄れなくなった。 下手に行けばさらにあの子を傷つけることになったので、それを自分に禁じたのだった。 ただそれによりあの子が苦しんでいたことだけは知っていた。 下に降りると聞いた時もそれで苦しみを乗り越えれるならと認可した。 それでも下に居ることだけでも純粋な天使にとってはやはり苦痛のはずであり、ミカエルはそれを和らげるためのツールを餞別として渡そうとしたのだった。 それを断った、という時点でかなりの苦痛が襲うはずである。 それを考えるとやはり無理やりにでも持たせた方がよかったのだろうかと考えざる得ない。 「ミカエル、ダメですよ」 そう思ったのがばれたのかミカエルはそうザドキエルにたしなめられた。 「私たちは相手の意思を無視しての行いは許されておりません。たとえそれが下の天使たちであっても、です」 「わかっていても辛いものだな」 思わず、といった感じでミカエルからこぼれた言葉は天使たちの常の共通認識だった。 「さて、これは返した方がいいのか?」 ミカエルは気持ちを切り替えるように渡しそこなった短剣を示した。 それを見てザドキエルは頭を横に振った。 「いえ、ミカエルに預けたのでしたら、そのままお持ちください」 「そうだな。その方が折を見て渡す機会もあるかもしれない。では預かっておくぞ」 それだけ言うとミカエルはその場を離れた。 それからどれくらいの時が流れたのだろうか。 ある時ミカエルがどさくさにまぎれて短剣を渡すことに成功したと笑った時はほっとしたものだった。 あの子は本当にほとんど天使たちに助けを求めることをしなかった。 社会背景により天使を信じていると思っているようなときでさえ、心の底では常に不信を抱いていたのだ。 特に天使が純粋であると言われれば言われるほど、さらに不信感を増していった。 それが天使とアクセスして話をするようになることだけでも、すごい進歩だったのだ。 しかしそれからすぐにミカエルは再び怒ってやってきた。 渡した短剣を他の人にすぐにやってしまったと言って。 「いったい何考えているんだ!」 怒り冷め止まぬ様子のミカエルにザドキエルは笑いを禁じえなかった。 「それだけ他の人を大切に思うようになれたことを私は喜んでますよ」 そうザドキエルが言うと、ミカエルは「まあな」とだけ呟いた。 誰かを愛しても常に線を引いていた子が、その線を乗り越えたのだ。 すぐに新しい短剣を用意してミカエルに渡すようにお願いした。 ちょうど側にいたガブリエルも手伝いを申し出てくれた。 それでもザドキエルはそばに行こうとしなかった。 あの子がまだ乗り越えていないものがあったから、まだ自分が前面に出るのは今ではないと思っていた。 だから陰に隠れていた。 必要があった時は代理を立てた。 そしてその子が思いだし、それを受け入れると決め、呼んでくれた時は嬉しかった。 抱きしめた時はとても幸せだった。 もちろん呼ばれなければ傍には行けない。 それでも。 幸せなことだとザドキエルは思っている。 ****** たぶん、つい最近、聞いた話だと思います。 ま、とらえ方はご自由に。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.06.04 20:17:05
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