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2008.01.16
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カテゴリ:亜爾然丁にて
先日、朝方に当方の下へ緊急電話が掛かってきた。

「Mさん!大変だ!!Eが事故った!!」

E君とは当方がアルゼンチンに来てからというもの、頻繁に酒を共にする仲。どうやら一刻を争うような状況らしく、そのEの友人が当方に電話をかけてきたようだった。そして続けざまにE君の友達が言う。

「Mさんって何型でしたっけ???!!」

「お、Oだけど!」

「よかった!ばっちりだ!血ください!」

「わかった!何処に行きゃいいのよ!」

ということで、当方はF病院に急いで向かう。仕事なんか関係ない。後で電話して午前中だけ休みを貰えばいい。タクシーでそのF病院に向かう間もずっと、どの程度の事故なのか、輸血すれば助かるのか、後遺症は残るのか、など気が気じゃなかった。

時間帯も時間帯だったから道が非常に込んでてタクシーの運転手と半ばケンカになりながらも、40分後には病院に着いた。病室に向かう。

どうやら全く命に別状は無いようだった。意識もあるし、外傷以外内臓関係も無事。後に少量の輸血が必要になるかもしれないから、それで病院側のストック分としての血液が必要との事だった。

見ず知らずの人間の血をE君に入れるんなら俺の使ってくれ、とも思ったけど、そこは素人があーだこーだいってもしょうがない。んじゃ、ストックでも良いから早く取ってくれと、採血室に向かった。

「まずは簡単な検査からしますね~」

というお腹のポッチャリした看護婦が言った。いくつかの質問に答え、指先を針でブチッと刺して血液型の検査もした。血液型の検査なんか幼少の頃に既に済ませてある。当方はO型だ。

「A型ですね、A+です」

「は?いやいやいやいやいや、俺Oだし」

「Aですよ、完全なA」

「ちょっともう一回やって、それ。もう一回針で、あ、そうそう、耳から血取ってそれで調べて」

「はいはい」

その後、同じ検査を4回、両手の中指と両耳から血をとって調べてみてもやはり結果は同じ。A型が嫌だ、と言うわけじゃなくて、この33年間、自分が信じきっていたものを覆されるのが頭では直ぐに処理できなかった。その衝撃度といったら、男はウンコした後に後ろから拭くということを最近になって知ったくらいの衝撃だった。

A型でもいいので頂きますね。と看護婦に言われ、俺O型なのに・・・と、まだ諦めきれない様子のまま採血室へ向かう。血を採ってくれるのは凄く綺麗な金髪のオネーちゃんだった。超VIPな椅子に案内される。ストック用の血を採る人は有難いのだろう。超VIP椅子に超絶美人、あとはパンツ脱いでくれたらもう言うことは無い。

「どれくらい採るって言われてますか?」

「いや、何にも。友人が事故ッたって言うから急いで来ては見たものの、O型だと思ってた血液型がA型に変わってて、もうね、俺はいつの間にA型になったんだって考えてたら、ほんとやってらんないよね。」

みたいな会話をしてたらもう血採ってた。

「何mlくらい採るの?O型やけど」

「そうですね、普通の人は480mlくらいで止めてますけど、おにーさんは丈あるから800mlくらい採っちゃいます?テヘ☆」

笑顔が可愛い。世の中のオスに人気の女性職業上位がナースだっていうのも頷ける。血を採られているはずなのに、明らかに減っているはずなのに当方のジャン・ピエール・ステテコビッチJrは大量の血液を欲しがってしまう。そこを必死に隠しながら、

「っていうか、人間ってどれくらい採ったらヤバイの?O型は」

「800mlから1000mlくらいでダルさ、メマイでしょうかね~」

「ふぅん、いいよ、んじゃ1リッターくらい採っちゃって。O型だけどな」

「有難うございます!助かりますよぉ、A型ストック少ないんです☆」

「あ~えーよえーよ。くるしゅーない、くるしゅーない。俺O型ね。」

30分くらいして当方の緑色の血でパンパンになった3個の特殊袋を持ったまま、オネーちゃんは(さっきからO型O型ウルサイわねぇ、このファッキン・ジャップ!!)みたいな死んだ魚のような目でチラッとこっちを見て奥に消えていった。

(いいさ、いいさ。針抜きに来たときにでも電話番号ゲッチュできれば)

と色々作戦を立てながら待っていると、しばらくしてこの世のモノとは思えないくらいのヌラリヒョンみたいな看護婦がノシノシ当方に近づいてきて地獄の響きのようなジャミ声で、

「もういいわよ、終わったけど甘いものとか沢山食べるようにしてね」

と一言残し去っていった。どこのコントだよ。なんだこの状況は。あの金髪のオネーちゃんはダミーだったのか、あれは高等なトラップだったのか、沢山血を採らせるための・・・と考えながら、エロには適わんなあ、俺ももう少し利口にならねば、とか何とか考えながら再度E君のいる病室へ足を向けると、どうしてか異様に身体が重い。朝起きたばっかりのような状態。

やばい吐きそう。脳側に血が行ってないのが良くわかる。物理的に血が足りてない。血を上げに行ったのに、逆に血が足りてない。なにこのミイラ取りがミイラになったような状況。

ヘロヘロになりながらやっとの思いで病室に着き、思いのほか元気そうなE君に

「おめー、大げさなんだよ。どこ怪我したんだ?ココか?ココか?」

とお腹にパンチを数発入れて遊んでたら本気で痛がったので、止めてあげた。

そして、

「しかしよぉ、やっべーよ、俺A型になっちゃったよ、あとお前の為に血1000ml抜いたから、良くなったらビールの一杯でも奢れよ。んじゃ、俺帰るよ、仕事だし。」

と言い残して病院を後にした。

帰りのタクシーの中で

(そういえば、弟も「兄貴、俺A型だったのにO型に変わっちった!」と満面の笑みで数年前に言ってたな。その時は、極々稀にそういうこともあるらしい、ってことで結論が出たんだけど、兄弟で血液型チェンジってありえないだろう、いくらなんでも。)

++++++++++ 28年前 +++++++++++

「ホラッ!血液型見てもらいに行くから早く着替えない!」

と母親の怒号が部屋に響いた。まだチンコの皮も剥けてない幼少のM君と弟は、ファミコンのコントローラーをしぶしぶ片付けて「はあい」と言うことを聞く。車で向かった先の病院は、市内でも有数のヤブ医者で有名な「ナガノ医院」だか言うところ。この辺記憶曖昧。

暗くて汚くて、でも敷地は結構大きい。そこで当方と弟は泣きながら耳から採血されて血液型を調べてもらった。出た血液型はO型とA型。

将棋の谷川浩司に良く似た医者がメガネをクイッと人差し指で上げながら当方に向かって言った。病室内に母親も居たけど、そこの病院の医院長の奥さんと友達だか何だかで世間話をしている。

「君はA型だね、書いておくから。で、弟さんのほうがO型ね。はいコレ紙。おかぁさんに渡しといて」

でもそこに書いてあるのは当方の名前でO型、そして弟の名前でA型。幼少ながら自分の名前の欄に書かれた型が医者に言われたことと違うことは解っていたけど、このときの医者も母親も当方みたいな小さすぎる子供の訴えには耳を貸さなかった。

そしてそんな事はスッカリ記憶の片隅に置かれて最早片隅からも削除されようとしていた時に弟が言った「兄貴、俺O型になっちゃった」発言。

それを言われたときにも(ううん・・・もしかしたら・・でもなぁ)と思ってはいた。そして、この時は既に当方は20歳超えてたんだけど、実はあの時こうこうこう言う事があったんだよねぇ、と上記に書いたような病院での状況説明を母親と弟にした。

やっぱり「そんなこと有り得ないでしょ~」と信じてもらえなかった。当方も、そこでもう一度血液型を調べに行こうとは考えずに、まぁいっかー面倒だし、みたいな感じで今日、アルゼンチンのような異国でコレ。

ほんと3日4日前の出来事なんだけど、何と言うかこういうのはほんと困る。医者、真面目に働け。プロならやって良いことと悪いことがある、とその時の谷川浩司に似た医者のメガネをカチ割りたい心境になった。

さてと、E君の腹パンチ兼お見舞いに行って来ようっと。





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Last updated  2008.01.17 02:06:18
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