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テーマ:暮らしを楽しむ(388613)
カテゴリ:父を想う
気がついたら今年もそんな季節か。2006年2月16日の記録から、今年で11年目の立春の頃。
春告鳥の声はまだ聞いていない。 午後、天神の雑踏を歩いていたら携帯がなった。珍しく田舎の父からだった。 携帯電話を嫌っていた父が、去年、母から切望されて、ついに持つことになったのだが普段はほとんどが受信専用。それも運がよければつながるといった感じで、大抵はどこかに置き忘れている。 機械オンチの父はメールはもちろんのこと、受話器のない電話にもいまだ不慣れな様子だ。 そんな父が自ら、自分の携帯から私の携帯に電話をかけてきた。定年退職しても、なんやかんやと忙しく動き回っている父が、昼下がりにかけてきた電話。 「どうしたん?なにかあった?」と思わず早口になる。 「いやあ、なんでもないよ。久しぶりにのんびり 家におるから元気かなぁと思って。なんか周りがうるさいね」 「うん、今、天神を歩きよんよ。車とかビル風とかの音が響きよんじゃない?」 「そうねー あ!そうそうさっきね、山に犬を散歩させにいっ たらねぇ。ホーホケキョっち、ウグイスがなきよったよ~。今年初めて聞いたばい。初啼きやね~!まだ鳴き方が下手くそやったけどねぇ。春が来よるよ~ってこりゃあ早くあんたに教えてやらなぁと思って電話したんよ。じゃあ、またね」 こちらの反応も待たず電話は一方的に切れた。 ◆◆◆ そのときは、ふぅーん くらいだったけれど、それから5年もたたずに、父は急な病で65歳で世を去った。 春が好きな、春告父さんの、電話口の大きな声はいまだにはっきりと耳にこだまする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年02月12日 23時52分08秒
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