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語りと筆しごと~書家香玉のうずまき帖

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2017年02月12日
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カテゴリ:父を想う
気がついたら今年もそんな季節か。2006年2月16日の記録から、今年で11年目の立春の頃。
春告鳥の声はまだ聞いていない。

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午後、天神の雑踏を歩いていたら携帯がなった。珍しく田舎の父からだった。
携帯電話を嫌っていた父が、去年、母から切望されて、ついに持つことになったのだが普段はほとんどが受信専用。それも運がよければつながるといった感じで、大抵はどこかに置き忘れている。
機械オンチの父はメールはもちろんのこと、受話器のない電話にもいまだ不慣れな様子だ。

そんな父が自ら、自分の携帯から私の携帯に電話をかけてきた。定年退職しても、なんやかんやと忙しく動き回っている父が、昼下がりにかけてきた電話。
「どうしたん?なにかあった?」と思わず早口になる。

「いやあ、なんでもないよ。久しぶりにのんびり
 家におるから元気かなぁと思って。なんか周りがうるさいね」

「うん、今、天神を歩きよんよ。車とかビル風とかの音が響きよんじゃない?」

「そうねー
あ!そうそうさっきね、山に犬を散歩させにいっ たらねぇ。ホーホケキョっち、ウグイスがなきよったよ~。今年初めて聞いたばい。初啼きやね~!まだ鳴き方が下手くそやったけどねぇ。春が来よるよ~ってこりゃあ早くあんたに教えてやらなぁと思って電話したんよ。じゃあ、またね」
 
こちらの反応も待たず電話は一方的に切れた。

◆◆◆
そのときは、ふぅーん
くらいだったけれど、それから5年もたたずに、父は急な病で65歳で世を去った。
春が好きな、春告父さんの、電話口の大きな声はいまだにはっきりと耳にこだまする。





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最終更新日  2017年02月12日 23時52分08秒
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