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カテゴリ:世界の記憶
―――今日はひとつ考えてみたいなってことがありまして。それはまあ、あけすけに言ってしまうと「小説って何なんだ?」ってことなんですけれど。
祝祭男】 そういうのって、結局のところ、「全然わからんよ」っていうのがひとまずの答ですよね。まあ、それじゃ身も蓋もないんですけど。 あとまあ、そもそも質問の仕方が良くないってのもあるかも知れないですよね(笑)ガンジーが昔、どこかの記者に質問を投げかけられて、糸巻き車を回しながら、『愚問だ』って即答したところを見たことがあるんですけど、 あれなんかすごいな、と思いましたよね。ああ!そういう答え方もあったのかって。でも、ともかく、当然色々考えられるってことになりますよね。 大体なんで人間が出てきて、しかも我々がしているようなことを小説の中でしているのか?ってことも思うんですけれど、まあ、「猿語を話すミミズが空飛ぶ象の背中に乗って宇宙熊と闘う」って話じゃ、誰も読まないぜ、ってこともありますからね。 ―――ちょっと、面白そうですけどね 祝祭男】 でもまあ、ともかく、書くことと読むことの違いも当然あるわけだし、あとまあ、どんな作品を読者が選ぶか、ということについては、個々人の持つリアリティというものと関係してきますよね。 一人で南の島のハンモックに寝てるときには、私としては「ミミズの宇宙戦争」は読みたくない(笑) それにリアリティの問題を持ち出すと、多分職業作家とアマチュアの線引きということにもなると思うんですけれど、それを除外すれば、「書きたいことを書け」って話になってくると思うんですよ。 ただそれでも読者が存在しなければ小説ではないですから、あとはその小説自身が創り出す制約とかルールっていうものを突き詰めていけば必ず「ミミズの宇宙戦争」でも素晴らしい作品になるとは思いますよね。 ―――なるほどね 祝祭男】 で、私としては「小説とはなんぞや」という話よりも、今日はひとつガンジーのところに立ち返って、「有効な問ってものはあるのか」ってことをちょっと考えてみたいとおもうんですけどね。 ―――なあんか、堅そうな話だぞ……(笑) 祝祭男】 というのは、私としてはずうっと不思議だな、って感じていることのひとつにこういうことがあるんですよ。 つまり、この世の中に存在するものはまず、全て移り変わっていくという法則のもとにありますよね。いわゆる諸行無常ってやつだと思うんですけれど、 人が生まれて死ぬとか、芽が出て花が咲いて枯れる、とかね。 でね、そういう「ゆく川の流れは絶えずして…」のような物事の盛衰の始まりを遡っていくと、私はそういうことあまり詳しくないんですけれど、 多分宇宙の誕生と時間の始まり、みたいなことに行き着くんじゃないのかなって思ってるわけなんです。 ビックバンがあったのかどうか、ってことさえよく知りませんけれど、 まあ、そんな風に始まってですね、それでも世界が陰に陽にと生死の移り変わりを始めたのは、素人考えですけれど、おそらく無機物が有機物になった瞬間だったりするんじゃないのかな、って思うんです。 で、そういうことを理工系の友達とかに訊いたらタンパク質がどうの、雷みたいな電撃がどうの、と教えてくれたような気がするんですけどね、 ただ一向に、この生滅流転の原動力が何であるのか、ってことがわからないんですね。 ―――だからどうした?って気もしますけどね 祝祭男 で、あるいは仏教徒とかですね、何だか知らないけれど悟りを開こう、とか、宇宙と一体化したい、っていうような神秘的な至高体験を求めている人達も、結局は私の言う「生滅流転の原動力」が何なのかってところに行き着くんじゃないかって気もするわけですよ。 根拠はないんですけれど。 で、まあそういう質問を仮にガンジーにぶつけてみたらね、 それでも多分『愚問だ』って即答されるんじゃないのかなって気もしてるんですね。『糸巻き車を回すのには関係ないし』みたいな(笑)そしたらもう困っちゃうっているか、もうわからんぜ、ってことになるんですけれど、 まあそういうことを考えたりするわけなんです。 ―――はあ、なるほどね。でも、そんなことどっちでもいいかも知れませんよね。実際の話。 祝祭男】 うん、まあ、そういうことになるのかなってことでもあるんですけれど、ちゃんと考えるなら考えた方がいいですね。 ゴロゴロ寝っ転がってても、まあわからんぜ、って感じですね。 ―――私としては、さっきの小説の話に戻りますけれどね、 読者のリアリティの問題を研究して、読まれる小説が判ったら、 裏方で儲けるってことの方がずっと興味深いですよね。 祝祭男】 ははは。まあ、今夜はそういうことにしときましょうか。 聞き手 祝祭男の恋人 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 9, 2005 01:16:21 AM
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