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カテゴリ:日常をめぐる冒険
『ブロンドオンブロンド』 初期の記念碑的名盤 1966年発表 ―――祝祭男さんこんにちは。 祝祭男】 あなたもこんにちは。 ―――さて、さて、今日はなんか風や陽射しがフワフワした良い陽気ですね。 祝祭男】 ええ、でもいきなりなんですけれど、 私はこのフワフワした感覚がずっと大嫌いだったんです。 なんだかもう、やりきれないぜ、っていう感じで。 ―――へえ、なんでまた。こんなに良いお天気なのに。 祝祭男】 うん。端的に言って、この季節にあまり良い思い出が残っていなかったからなんでしょうね。かといって、そんなに嫌な思い出ばかり、 ってこともないんですけれども、何とも言えない歯がゆさを感じますね。 花粉のせいでしょうか? ―――さあ 祝祭男】 昔、十代の頃、自転車にのって信号待ちをしていたとき、 何でだか覚えていないけれど、 もの凄い大きな哀しみみたいなものがドカッと心の中に居座っていたんです。 で、ちょうとその時、こんな季節のこんな陽気だったんです。 いまだにその時の風の匂いとか、それが頬とか首筋を撫でていく感じとか、 濃厚鮮烈に覚えているんですけれども。 実は全部そこに繋がっている。 それより前にはそんなに春が嫌だったこともないと思うんです。 原因は忘れたけど、そんなふうに繋がっている。 ―――そんなもんですかね。 祝祭男】 で、まあそんなふうに考えてみたら、 この季節を忌み嫌う原因なんてたいしたもんじゃねえな、 というか、まったく習い性みたいなもので、春が来るたびに条件反射をして、 結局そのくり返しがやりきれない気分を補強しているんですね。 どうも、人間は型というか、パターンを作り出さずにはいられないみたいですよね。「こういうときにはこうする」、みたいな定型をね。 ―――そういうことは、確かにあるかも知れません 祝祭男】 たとえば私は春が来ると、 ボブ・ディランの「ブロンドオンブロンド」を何故か聴いてしまう。 いや、聴くことにしている、と言った方がいいかも知れない。 たとえば『sooner or later』とか『just like a woman』とか 『ローランドの悲しい目の乙女』なんか、春のもどかしさにぴったりです。 ―――ようするに自分で悩ましい気分をほじくり返してるように聞こえますけども。 祝祭男】 そう、その通りなんですね。 そういうことなんです。 で、今日何を思うかというと、結局のところ今も『ブロンドオンブロンド』を聴いていますけれど、そして窓の外は春ですけれども、 悲しい気分は特にない。 魔法が解けた!って思ったんです。 ―――やれやれ、ははは。よかったですね、っていうか、よくわからないけれど。 じゃ、まあ今日はこのへんで。 それではまた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 21, 2005 11:30:15 PM
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