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カテゴリ:小説をめぐる冒険
11月21日の読売新聞で紹介されていた記事が目に留まったのだ。 「一人ひとりの中に世界があり、それを耕している。 何で生きているんだろうと考えたり、アルバイトしながら 気持ちがへこんだりするのって、本人には大問題ですよね。 この小説は、答えが出ないことを答が出ないままに生きる根性 についての話だと思う」 という言葉を頼りに書店へ走る。 後半、イランから移住して レストランで働く男の語るエピソードがある。 隣国との戦争に駆り出された兄が、両足と下顎を吹き飛ばされて 帰ってくる。そういう故郷を離れ、男は日本にやって来る。 浮かんでは消え、浮かんでは消えるエピソードを通して ぼんやりと、いろんなものがちょっとずつ見えて、また、隠れる。 自分の故郷が、「5階建ての団地で、ベランダから、自衛隊の 基地と、でっかい自動車工場が見えるだけの場所なんだよ」と 「わたし」は言う。 「そんなもんやで、誰かて」と元友禅職人が言う。 「人間、たまたま居着いただけの土地に、だんだん馴染んでいく」 ということもあるのだと言う。 小説の最初の一行が書き出せない若者が出てくる。 彼はどうなるのか… さらりとした風の中に、ふっと何か気になる香りが混ざっている。 そんな感じの残る小説だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 28, 2005 02:45:29 AM
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