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2024年10月26日
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カテゴリ:クラシック


NHKホール 19:00〜
 3階右手

 シューベルト:交響曲第7(8)番ロ短調 D.759 「未完成」
        交響曲第8(9)番ハ長調 D.944 「ザ・グレート」

 NHK交響楽団
 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

 10月のN響はブロムシュテット月間......なのですが、今年は定期演奏会A, B, Cの計6公演以外は振らないそうで。97歳だそうですよ。いやはや。ここ数年突然チケットの売れ行きが良くなって、数週間前には売り切れというのは、やはり年寄り=巨匠、聞かなきゃ、という意識のお客が多いのでしょうね。まぁ、人のことは言えないけれど、サヴァリッシュやホルスト・シュタインやネッロ・サンティに比べると....と思うのは..........サヴァリッシュが振ってた頃にギリギリ間に合った身としては、その頃はブロムシュテットには皆.......とか思ったりしなくはなくもなく。ま、重ね重ね人のことは言えない。

 サントリーのBプロはともかく、いろいろあって先週のAプロは行けずじまい、今回はこれが唯一来られた公演。先週のブラームスの4番も気になったけれど、シューベルト・プロが聞けるのでまぁよしとします。

 完売だそうで、確かに人が多い。満席です。やはり中年ダンシ率高し。くどいようだが人のこた言えない。

 前半は未完成。どうでもいいんですけどね、あの、シューベルトの交響曲の番号振り直すの、しゃらくさいからやめやがれ、と思うのは、まぁ、私だけなんでしょうね。
 だってさぁ、あの番号、シューベルトが付けた訳じゃないんだからさ。勝手に後付けしてるだけですよ。そりゃまぁ「これが正しいんです」って言うんだろうけど、なんだそれっていうね。だって、そのくせ、なんの根拠もない「未完成」だの「ザ・グレート」だのは残すんですからね。馬鹿にしてるだろ、くらいには思いますよね。そもそもドイッチュ番号があるんだから、ドイッチュ番号で統一すりゃいいじゃん。あの番号もいろいろあるけど、あれが一番スッキリしますよ。この番号くらい覚えとけ、みたいなね。
 さて、毒吐きはこのくらいにして......

 オケが入ってくるけれど、1stVnは誰も入って来ず。そして、ブロムシュテットがコンサートマスターの肩に掴まりながら、ゆっくりヨボヨボと登場。場内は万雷の拍手。そして、指揮台の横まで来て、客席に改めて向き直ると、更にその拍手が、もう物理的に膨張する。そういう大きくなり方。まぁ、気持ちはわかる。

 未完成。D.759。まずもっていい具合に力の抜けた弦五部がとてもいい。力みがない。編成は14-12-10-8-6なので、まぁ、この曲をNHKホールでやるにしては程良いところかと思いますが、力不足ということもなく、無理に力を入れたりすることもなく。ちなみに対抗配置でしたが、まぁそれは多分どうでもいい。
 全体的に、ちょっとアレな言い方ですが、とても普通の演奏です。ごく普通のアプローチ。奇を衒う事なく、妙に表現をいじったりもせず。言い換えれば王道。極めて王道的と言っていいのかも。
 そうなんですよね。交響曲とかではあまり感じないし、最近は減ったけれど、シューベルトをやたらと「表情」を付けて、「表現」をしようとする演奏ってあるのですが、そもそもシューベルトは演奏家がガチャガチャ弄らずとも、きちんと演奏すればそれだけでちゃんと歌になり表現になっている。そういうところはあると思います。交響曲でもそうだったか、と改めて思う事しきり。
 まぁ、私はいい加減に聞いてる人ですから、そう思うんでしょうけれど、本当に特筆すべきことはないんですよ、演奏としては。普通に、きちんとやってるだけ。ただ、その演奏が、まるで録音かのように整っていて、しかもここというところをきちんと押さえて、素晴らしい。普通にとても素晴らしい。わかる人に言わせればいろいろあるんでしょうけれど。

 後半はD.944。
 これも奇を衒う事なくいい演奏なのだけれど、まず感じたのは「若々しい」ということ。爽やかで、若々しい。音も、響きも、フレーズも、まず若々しいと感じる。
 確かにこれはそういう曲なんです。若々しい音楽。だけれど、改めてこんな風に演奏するのを聞いたのは、初めてかも知れません。大抵はもっと重々しく、仰々しい感じが漂うのです。シューベルト晩年の曲、最後の交響曲、大交響曲、そんなイメージでアプローチしてしまうのかも知れない。けれども、ブロムシュテットの演奏は、あくまで若々しさに満ちたもの。でも、よく考えれば、これを書いていた頃のシューベルトはまだ20代の筈。そもそも亡くなったのは31歳ですからね。確かに死の影に怯えていたのかも知れないけれど、加えて後期の作品群、とりわけD.956から960に至る一連の作品はもうとんでもないもので、そんなものを書いた作曲家を深刻な深淵を感じさせる大巨匠扱いしたくなるのは分からなくもないけれど、でも、所詮若者なのですよね。D.944という番号に惑わされるけれど、実は若々しさに満ちた曲でもある。シューベルト自身はどう思っていたか分からないけれど、最終楽章などはベートーヴェンの7番を思い起こさせるようなリズム先行でドライブしていく楽曲。それを、椅子に座って、粛々と上半身だけで腕の振りも最小限ながら、見事にドライブしていく97歳の指揮者。それが斯くも溌剌とした演奏で結実するとは。
 ブロムシュテットは、確かにシューベルト好きなんだと思います。前にもシューベルト・プロ、やりましたしね。あの時は5番と2番だったか、あれもいい演奏だったけれど、やっぱりシューベルト好きなんだろうなと。ブロムシュテットを俄かに巨匠扱いして....みたいなことを書きましたが、確かに、言えば巨匠なんでしょうけれど、でも、やっぱりこの人まずシューベルト好きなんだろうな、そういうのが先に来るんだろうな、と思うのです。勿論「シューベルトが好きな巨匠」でいいじゃないか、何がいけない、とか思う向きもあるのかも知れませんが、それならそれで私は「じゃ、"巨匠"抜きで"シューベルト好き"でいいんじゃないの?」とも思うのです。まぁ、いいんだけどね。





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最終更新日  2024年10月26日 02時58分07秒
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