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2024年11月04日
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カテゴリ:クラシック


サントリーホール 19:00〜
 2階正面

 ショパン:ポロネーズ第7番 変イ長調 op.61 「幻想ポロネーズ」
      即興曲第1番 変イ長調op.29 / 第3番 変ト長調 op.51 / 第2番 嬰ヘ長調op.36
      幻想即興曲 嬰ハ短調op.66
      ピアノソナタ第1番 ハ短調op.4
 モンポウ:ショパンの主題による変奏曲
 アルベニス:ラ・ベガ(草原)
       イベリア第3集 〜 エル・ポーロ / ラヴァピエス
 <アンコール>
 リスト:ハンガリー狂詩曲 S.244 No.10 ホ長調
 シューベルト:楽興の時第2番 op.94-2

 ピアノ:マルティン・ガルシア・ガルシア

 珍しく連日のサントリーホール。実はダブルヘッダーの2つ目です。
 で、アレなんですけどね、これも連日で、あんまりいいこと書きません。昨日とは方向性違うんだけど、特に今回はお客に絡む話。なので、読みたくない人はここでそっと立ち去って下さい。






.........





.........................





................................もういいかな。



 まぁ、言うたらそんなに気ぃ使う話でもないんですけどね。


 今回これ買ったのは、そもそも昼間N響のオーチャード定期の予定があって、そういや夜何かあるかな?と軽い気持ちで安売りサイトを見てみたら、安いチケットが出ていたので。この人時々名前は見るし、ショパンコンクール絡みなのはなんとなく知っていたけれど、安売りチケットが出るということは売れてないのかな、じゃぁ聞いてみようか、と思って買ったのです。演目も「ああ、ショパンがあるのね」くらいのもんで。
 で、行ってみたら、満席とは言いませんが、8割くらい入ってるんじゃないかくらいの勢い。なんで安いチケットが出るの?と思ったのですが、アサインされているのは2階の右側。多分、ピアニストの手元が見えないって敬遠されて、空いてたんじゃないですかね。で、埋めに行ったと。そんなとこじゃないでしょうか。まぁ、それはともかく、結構な入りです。なんなら前日のゲルネ&ピリスより埋まってる。しかもあちらは声ものとあってピット席にお客を入れてませんでしたが、こちらはピットも入れて、流石にそちらはそこまで入ってませんでしたが、でもそれも含めての盛況ですから、昨日の悪天候と違っていいお天気だったのはあれども、まぁ、よく入ってます。

 で、どうだったか?
 一言で言うと、私は気に入らなかった。いい演奏ではあると思います。いや、言い訳でなく。ただ、平たく言うと、飽きちゃった。食傷した、ということですかね。演奏自体は、私の好みのアプローチとは言えないけれど、決して悪くないと言っていいんだと思うんですけどね。

 この人、2021年のショパンコンクールの第3位だそうで、​夏に聞いたアレクサンダー・ガジェヴ​と反田なにがしが2位を取った時の3位。この時1位はいなくて、日本じゃ「2位が事実上の最高位」とか言ってるみたいだけれど、コンクールで優勝者を出さない、というのは、むしろ「皆それに値せず」ってダメ出ししてるということなのでしてね..........ま、いいんだけど。なので、それなりに売れてて、ショパン弾きってイメージなんでしょうね。この日のお客は、正直言うと7割方はピアノを弾くのが趣味のお嬢さんとピアノを聞くのが趣味のお嬢さんと言ったところ。私なんざまぁ闖入者みたいなもんで。
 で、前半はショパンプログラムってところなのですが.......これ、要約すると、即興曲を主体にしたプログラムですが、ほぼ似たような感じなんですよね。幻想ポロネーズって、ポロネーズの中でも一番ポロネーズっぽくない、正直即興曲たちとテイストの似たような曲。ピアノソナタの第1番というのは、少なくとも私は生では初めて聞くのですが、これは若い頃の作品なので、やや生硬な感じもあるけれど、全体的には構成とかよりも雰囲気で聞かせる感じの曲。つまり、全部同じような感じなのですよ。言ってみればフワフワしたような。私は、ソナタのあたりでちょっと飽きてしまいました。似たような曲ばかりだなぁ、と、ね。
 演奏は悪くはないんです。この人、ちょっとクセのある感じで、加えてピアノ弾きながら唸る癖があって、それは後半の方が酷かったけれど、まぁそれはいい。響きは悪くないし、腕もある。こういうの大好きだったら飽きないと思います。でも、私は、正直ショパンはそれほど好きというわけではないし、似たような曲で1時間聞かされると - そう、この前半で1時間くらい掛かりました - 、ちょっと辛い。でも、まぁ、ショパンコンクール入賞者って触れ込みなんだし、ある程度はしょうがないけど....という感じだったのです。

 で、後半。この辺はほぼ初めて聞く感じ、なのですが....
 モンポウのはこれまたショパンの主題による変奏曲。ショパンの主題というのは、24の前奏曲の第7番。太田胃散のアレです。これが結構長かった。20世紀後半まで活躍した人なので、そこそこにモダンな響きもあり、ではあるのですが.........結局、前半とあまりテイストが変わらないんですね。
 いや、かなり響きも何も違うんですよ。でも、なんというか........本質的なところで、音楽として、響きと雰囲気で聴かせに行ってしまう、という音楽になってしまってるんですね。ふわっと、ほら、いい音でしょう、気分いいでしょ、という音楽が続く。モンポウはそういう意味で勿論ショパンなんかよりよっぽど尖ったところのある音楽なんだと思うのですが、でも、やっぱりそういうふわっとしたところに落ち着いてしまう。食傷してしまった、というのは、そういうことなんです。
 きっと上手なんだと思いますよ。ピアニストとしては。そういうのも悪くない。でも........

 正直に言って、私はこれ聞きながら、ブーニンを思い出してたんですね。私はブーニンは直接聞いたことはなくて、彼がショパンコンクールで優勝して後の日本でのフィーバーぶりは自分とは関係ないものという目線で見ていたのだけれど、いろいろ理由はあるにせよ、ショパンコンクール優勝後の彼が順風満帆の音楽活動を送れたとは言い難いし、あれだけ日本でもフィーバーしたのに、数年で退潮していったのもなんだかなぁと思っていた記憶があります。
 今のこの人は、言ってみればショパンコンクールの波のおこぼれで売れているところはあるのだと思います。おこぼれって言うのは失礼かも知れないですけれども、だって、3位ですからね。優勝したって成功が約束されているわけじゃないんですから。まして1位なしの2位二人の次とあっては.......
 優勝したって成功が約束されてるわけじゃない。言い換えれば、3位だから成功しないと決まってるものでもない。所詮コンクールなんてそんなもの、きっかけに過ぎない、と、外野の野次馬だから言えるわけですが、まぁ、実際、演奏そのものは、唸るのはちょっと気になるけど、悪くない。ただ、このプログラムはねぇ...........これ、本当に彼が弾きたい音楽なんだろうか。
 後半のモンポウやアルベニスは、彼自身がスペイン出身ということもあって、同郷の作曲家を弾きたい、ということで取り上げているのかとも思うので、その意味では弾きたいもの弾いているのかも知れないけれども、でも、こんなに、聞かせ方として同じような傾向のものを弾くのが本意なのかなぁと。正直、私は飽きました。最後のアルベニスは、多少は毛色は変わっていなくもないけれど、聞かせ方はやはり似た方に寄って行くので、正直に白状すると、私はもういい加減終わってくれ、くらいの気分でいました。そんなに悪い演奏でもないのにこういう気分になるのは初めてじゃないだろうか。
 アンコールも、結局、同じような感じに。最後のシューベルトは、流石にシューベルトだけあって、響きと雰囲気だけでは終われない感じでしたが、まぁ、そのくらい。ただ、シューベルトを聞きながら、やはり、この人もっと違うプローチ出来る筈だよね、と思ったのは事実。

 実は今回思ったことがもう一つ。これ、宝塚みたいだな、と思ったのですよ。
 私は宝塚、何度か行ってみようかと思いつつ、結局一度も見たことはありません。理由はいろいろあるけれど、率直にいうと、あれは私がいつも見たいと思っているオペラ、歌劇とは全く別物だよな、というのが先に来るから。そして、それと同時に、あれは本来的に一定の枠内で飼い慣らされた、人畜無害なものだよな、という認識があるので。
 そういうと「見てもいないのに!」と怒られるんでしょうね。だからこれはあくまで偏見なのですが。でも、あれは「嫁入り前の娘を安心して見に行かせられる」ものが原点であって、その本質は今も変わってないと思います。一言で言うと、そこにはある種の「毒」がない。
 いや、今の宝塚は毒だらけだろ、というのはあるでしょうし、ありゃ下手なオペラ歌手なんかよりよっぽど訓練されているのは確か。でも、あの世界には、本質的にある種の「毒」がないんだと思います。まぁ、今はまるで無いってこともないんでしょうけれども。
 ピアノを弾くのが趣味のお嬢さんとピアノを聞くのが趣味のお嬢さんが聞きにくるこのコンサートのプログラムにも、そう言う毒が慎重に避けられている気がするのです。毒と言って悪ければ、ある種の翳。或いは強烈な光。同じショパンでも、そういう構成は出来る筈。でもしない。

 私は多分この人もう聞かないと思うのだけれども、もし聞くとするなら、たとえばベートーヴェンとかシューベルトのソナタや、シューマンとかでプログラム組んだらどうなるのかな、と思わなくはないのです。或いはラヴェルもいいかも知れない。それっぽい雰囲気だけではちょっと手に負えない曲、何某かの毒を含んだもので聞いてみたいと思うのです。
 聞かない、でいうと、2021年のショパンコンクールの登場者は、日本ではちょっと騒がれ過ぎな気はします。個人的にはガジェヴは後々もう一度くらい聞いてみてもいいかなと思うけれど、あとは別に聞かなくてもいいや、という気はします。





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最終更新日  2024年11月04日 02時58分05秒
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