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April 23, 2021
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小説の中に、アイドルグループの総選挙のようなものが出てくる。
「総選挙」はテレビでもたまに流れているから、そのことは僕も知っている。
CD1枚買うと、投票権利を1票もらえる、みたいなシステムで、「推し」をセンターに押し上げるために、同じCDを何枚も買ってたくさん投票しようとする子供たちが続出するという、あれ。
結果的に、大量のCDがただゴミになっている、というあり得なさだけじゃなくて、子どもたちを熱狂させて小遣いを巻き上げるやり口が腹立たしくて、この手の総選挙とやらは僕は大嫌いだ。
なのに、「推し、燃ゆ」には、バイト代をつぎ込んで「推し」に投票する女子高生が主人公として登場したから、僕は少し戸惑い、時々立ち位置を見失いながら読み進んだ。
その結果、僕にとってはまったく受け入れられない「推しを推す」世界を、それにどっぷりはまっている女子高生の目を通して見る、という経験をすることになった。
そしてその結果、「推しを推す」世界の景色がちょっと変わった気がする。
たまたま出会った好きなものにどんどんのめり込んで、バイト代もつぎ込んで(と言うより、つぎ込むためにバイトして)、学校の勉強にも付いていけなくなる。傍目には一時の気の迷いでアイドルを追いかけているうちに道を踏み外した残念な人にしか見えないのだけど、ただ、彼女はそれでいいと思っている。
誰に何を言われようと、この世界が彼女にとっては最高の居場所で、彼女自身もきっとそのことを自覚している。
自分がいるべき場所を自覚できている人ってそうそういないのではないだろうか…。
そう考えると羨ましくもなってきた。
例えば、韓流ドラマに熱を上げているおばさま方は、彼女のマインドに近いだろうか。
韓流スターへ注ぐ愛は100パーセント一方的だけど、そんなことはお構い無しに、おばさま方はドーンと構えて派手に着飾って盛大にキュンキュンしている。
逆に、そのおばさま方を韓流スターに奪われて、家に取り残されてポツンとしているリタイヤ後の夫たちこそ、「推しを推す」彼女をむしろ見習って、自分を見失うほど没頭できる何かを探すべきなのではないか。そんなことを、ふと思った。

「推し、燃ゆ」は、芥川賞受賞作を読んでみたくて手に取った。芥川賞=純文学は難解、という先入観があったけど、読み進むこと自体は難しくなかった。
ただし、もちろんエンターテイメント的な作品ではないとも思った。





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Last updated  June 25, 2021 09:29:32 PM
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