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May 9, 2021
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2021年本屋大賞発表式の中継を、僕はYouTubeで見た。
いよいよ大賞作品が発表されたあと、町田そのこさんがステージ袖から登場して受賞挨拶が始まった。そのスピーチの途中で町田さんは少し感極まって、涙ぐんで、言葉に詰まって、気持ちを何とか落ち着けて、その後で出てくる言葉はきっと何かとてもパーソナルな言葉に違いないと思っていたら、出版社と全国の書店員と読者の皆さんへの感謝の言葉だったから、僕は少しズルっとなって、あははと笑った。だけど同時に、書けば売れるような大御所先生でもない限り、きっと不安と感謝が交錯する中でプロの作家の皆さんはいつも文章を綴られているのだろうな、それを正直に話せる町田さんて凄いな、とも思い、その時、トロフィーを手に話す町田さんの姿が受賞作の主人公、キナコと重なった。

「52ヘルツのクジラたち」は、僕にとっては掛け値なしに、100パーセント以上、読んで良かったと思える小説だった。小説の神様が町田さんに降りてきたに違いないと、今も半分以上本気で思っているくらい、音や風景の描写、言葉と漢字の選択、そして推理小説を超えるほどに精緻なストーリー構成などなど、この本の中でそのひとつひとつに出会うたびに僕はほーとかうーむとか唸っていた。この小説がとても丁寧に、そしてたっぷりと思いを込めて作り上げられたであろうことを至る所に感じた。

町田さんの言葉は静かで、優しくて、いわゆる悪者役の登場人物たちですら、僕の周りにいる困った奴らと重ね合わせながらも、その心の内にも思いを馳せていたし、時おり共感すらできてしまった。

「本屋大賞」は、出版側の思いはひとまず置いといて、読者の目線で受賞作品を選んでくれる。毎回のことながら、本屋大賞の存在は僕にとってもすごくありがたい。「52ヘルツのクジラたち」を読み終えた時、改めてそう思った。





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Last updated  June 25, 2021 09:27:02 PM
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