「落」:今年の土木関係の漢字
日経コンストラクションの記事で最も読まれた30位の文字で目に付くのは「落」ということらしい。そう言えば、アメリカでもベトナムでも落橋・・・。2007年に読まれた記事は――「落」で振り返る土木の1年2007/12/27 (財)日本漢字能力検定協会が全国公募で決めた2007年の世相を表す漢字は「偽」。土木の分野でも11月,栗本鉄工所による強度試験データの改ざんが明らかになったが,ケンプラッツで2007年に読まれた土木分野の上位30本の記事を振り返ると,「落」の文字が目につく。 例えば「落橋」や「崩落」。2位の「ベトナムで建設中の橋が長さ80mに渡って崩落」(9月27日配信)には多くの反響が寄せられ,さらに6位の「ベトナム事故,大成建設が国際事業担当副社長を専務に降格」(10月29日配信)では,工事を担当している建設会社にも厳しい指摘が相次いだ。 米国・ミネアポリス市の落橋事故も衝撃的だった。「米国で高速道路の橋が崩落,鋼材の疲労や床版の補修工事が原因か」(8月2日配信)は3位に,「わずか5秒間の崩落過程が明らかに」(8月29日配信)が14位にそれぞれ入った。 米国の事故が日本のインフラに与えた影響は大きい。米国では約60万橋を少なくとも2年に1回ずつ点検していたが,国土交通省が2007年にまとめた調査結果によると,日本の市区町村の約9割が橋の定期点検を実施していなかった。 6月と8月には,三重県と秋田県で鋼トラス橋の斜材が破断しているのが相次いで見つかり,既設構造物の劣化の問題がいよいよ顕在化してきた。 ランキング7位の「秋田・本荘大橋で腐食したトラスの斜材が点検中に破断」(9月6日配信)や18位の「木曽川大橋のトラスの斜材が破断」(6月28日配信)のような例は,珍しくなくなるかもしれない。 そして,21位の「トラス橋が車の通過中に崩落,香川と徳島の県境で」(12月19日配信)は,日本でも使用中の橋が崩落することを示した。しかも「管理主体は不明」と,維持管理をめぐる問題を改めて指摘した事故とも言える。 「落札」も2007年の土木を表すキーワードの一つだ。例えば19位の「総合評価は甘くない」(5月10日配信)や22位の「『総合評価』時代に求められる資格をランキング」(11月6日配信)など,総合評価落札方式に関連した記事がよく読まれた。 総合評価と並んで低価格による落札,いわゆる低入札は2007年も関心が高いテーマだった。16位に「落札率63.5%の低入札工事の所長を任されたら」(4月17日配信)が,25位に「公共工事の低価格入札で生じた多額の差金はどうなる?」(2月19日配信)がそれぞれ入った。 暗い話題ばかりではない。10位に「『技術者の質』で8番札の会社が逆転落札」(1月11日配信)が食い込むなど,総合評価落札方式が広がるにつれ,価格差を逆転するケースが増えつつある。 以下は,2007年に配信した土木分野の記事のうち,アクセス数が多かった記事を日経BP社の記事管理システムで集計。1位から30位までをまとめたものだ。 ■土木分野で読まれた記事 ▼1位:グランドキャニオンの絶壁に片持ち梁の展望橋http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20070306/505121/ 米国アリゾナ州のグランドキャニオンに2007年3月28日,スカイウオークと呼ぶ展望橋が完成する。スカイウオークは張り出し長さ約21mの片持ち梁で,谷底を流れるコロラド川から高さ約1200mの絶壁に突き出す。 ▼2位:ベトナムで建設中の橋が長さ80mに渡って崩落,60人を超える死者http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20070927/511793/ ベトナム南部のメコン川支流のハウ川で9月26日の朝,長さ約80mに渡って建設中の橋桁が崩落した。崩落した橋はクーロン(カントー)橋。 ▼3位:米国で高速道路の橋が崩落,鋼材の疲労や床版の補修工事が原因かhttp://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20070802/510370/ 米国ミネソタ州ミネアポリス市で8月1日午後6時5分(日本時間2日午前8時5分)ごろ,ミシシッピ川に架かる州間高速道路35W号線の橋が崩落した。 ▼4位:東急文化会館は生きていた!?http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/column/20070403/505766/ はじめまして。「社会科見学に行こう!」という団体を主宰している,ぴろり、と申します。3年前の活動開始から共同溝,地下水路,道路,ダムなどの土木工事現場を一般市民として,二十数個所見学してきました。 ▼5位:防衛施設庁官製談合で56社に排除命令,都は大成建設JVとの411億円の仮契約解除http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20070622/509004/ 防衛施設庁発注工事をめぐる官製談合事件で公正取引委員会は6月20日,鹿島や大成建設,大林組,清水建設の大手4社を含む建設会社60社の独占禁止法違反を認定し,うち56社に排除措置命令を,51社に合計30億5074万円の課徴金納付命令を出した。 ▼6位:【ベトナム事故】大成建設が国際事業担当副社長を専務に降格、事故で引責http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20071029/512785/ 大成建設は10月26日、南部邦彦・代表取締役副社長を取締役専務執行役員に降格し、兼務していた国際事業本部長から解任する11月1日付の人事を発表した。 ▼7位:秋田・本荘大橋で腐食したトラスの斜材が点検中に破断http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20070906/511174/ 8月31日午後7時50分ごろ,秋田県由利本荘市にある国道7号の本荘大橋で,トラスの斜材1本が「ガーン」という音を立てて破断した。 ▼8位:台風9号の増水で橋脚が沈下,約1kmにわたる擁壁の倒壊もhttp://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20070910/511273/ 神奈川県の酒匂(さかわ)川に架かる十文字橋で9月7日午前1時15分ごろ,橋脚1基が2mほど沈下。PC(プレストレスト・コンクリート)製や鋼製などの単純桁を渡した橋の路面がV字形に折れ曲がった。 ▼9位:旧防衛施設庁談合で58社を営業停止にhttp://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20070926/511702/ 国土交通省と沖縄総合事務局は9月25日,建設会社58社を営業停止処分にしたと発表した。 ▼10位:「技術者の質」で8番札の会社が逆転落札http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20070111/504037/ 国土交通省関東地方整備局が2006年12月5日に実施した簡易型総合評価落札方式の一般競争入札で,8番目に低い価格で入札した太平工業が,技術評価で優位に立って落札した。